「愛の嵐」







今夜の海は穏やかに凪いでいる。
ゴーイングメリー号はのんびりと次の目的地を目指し航海を続けていた。
「はあー・・・」
サンジは浴槽の縁に頭を預けて体の力を抜いた。
夕飯の後片付けと明日の朝食の仕込を終えて、サンジが細々とした雑務から解放される頃にはいつも日付が変わってしまっている。
それでもサンジ自身が楽しんでやっている事なので苦にはならない。
サンジは毎晩クルー達が寝静まってからやっと一日の疲れを癒すためゆったりと浴槽で身体を伸ばす。
卵は・・・、明日の朝は生クリームと粉チーズを入れてオムレツにするか。いや、ミモザサラダの方にするか。
ナミさんとロビンちゃんはその方がいいだろうな。
野郎どもにはとにかく肉を焼いて出せばいいだろ。
あ〜、食パン10斤で足りるか?足りねえな。ルフィ一人で5斤はいくからな。
じゃあ、レディ達には俺の特製のベーグルサンドを作ってあげよう。
浴槽に浸かりながら明日一日の献立を考えるのがサンジの日課だった。
それがサンジの至福の時でもあったのだが、その穏やかな時間は無粋な侵入者によって邪魔された。
入り口のドアが勢いよく開かれると、全裸のゾロが浴室に押し入ってきたからだ。
「てめえ・・・、このクソマリモ。俺が入ってんだよ、出てけこら」
船内の浴室だ。大の男二人が一度に入るには少し狭い。
それよりも何が楽しくて男と風呂になんか入るか。可愛いレディならともかく。
「汗かいたんだよ。戻るのもめんどくせえ。すぐ済むからぐだぐだ言うな、クソコック」
この筋肉馬鹿はまた無駄に腕立てを何万回とやったり、腹筋を何万回とやっていたんだろう。
サンジの抗議をものともせずにゾロはサンジの目の前でわしわしと身体を洗い始めた。
筋肉隆々の男が目の前で身体を洗うさまを見てもサンジは全く癒されはしない。
かといって、狭い浴室で体の向きを変えたところで目に映るのは今度は浴室の壁だ。
サンジは苦虫を噛み潰したような顔でゾロが身体を洗うのを眺めていた。
「おっ・・、おい!」
「ああ?」
サンジは思わず声を上げてしまった。
訝しんでサンジを見るゾロ。
「お前・・・・石鹸で頭洗うのか?」
「別にいいだろが」
身体をガシガシ洗っていたと思ったら、ゾロはその身体を洗った泡で今度は頭をガシガシと洗い始めたのだ。
サンジの驚きの声を気にもとめず、マイペースに全身を泡だらけにしていくゾロ。
軽いカルチャーショックを受けるサンジ。
どうりでゾロの髪の毛は剛毛のはずだ。指にでも刺さりそうなほどにゾロの髪の毛は固そうなのだ。
サンジはシャンプー、リンスをきっちり使い、週に一回はトリートメントもするというのに。
ゾロは髪の毛を洗い終わるとその泡で今度は顔まで洗い始めた。
サンジは愕然とした。
顔の肌は身体の肌より数倍もデリケートだ。サンジは洗顔フォームにも気を配る。
「信じられねえ・・・・・」
「ああ?なんだよ、うるせえな」
「そんなだからお前はレディ達に嫌われるんだぜ」
なんだかんだいって、外見は重要だ。サンジは見た目にもいつも気を配っている。
「嫌われる・・・・?」
全身の泡をシャワーで流し始めたゾロは俯いて肩を震わせていたが、それはどうやら笑いを噛み殺しているらしかった。
「サンジ、俺はあいにく女には不自由してない」
シャワーを止めてゾロはサンジに向き合った。口元にはニヤリと余裕の笑みが浮かんでいる。
サンジにとってゾロの言葉はひどく意外だった。
ゾロは寡黙で、船にいてもあまりクルー達と群れる事も無く、一人でトレーニングしているか、たまに島に寄れば一人でふらりと居なくなる。
性欲とは縁が無いストイックなイメージがサンジだけではなく仲間内でも定着しているはずだ。
「酒を飲みに行けば女が勝手に寄ってくる。別にお前みたいに女の尻を追い掛け回さなくてもな」
最後の余計な一言が呆然としていたサンジを正気に戻した。
ゾロは足元にあるサンジのシャンプーやリンスのボトルに気がついた。
「お前、女みたいだな」
ふ、とゾロに鼻で笑われてサンジの腹の中で沸々と黒い憤りが湧き上がってくる。
このやろう。
サンジは勢い良く浴槽からあがった。
そのまま浴室を出て行くのかと思ったゾロはがしっと肩を掴んできたサンジに驚く。
「好き勝手言いやがって。女みたいで悪かったな!」
言いざまサンジはゾロの足の間に項垂れていた性器を根元からきつく握り締めた。
「い、いてえ!何しやがる、このクソコック!」
「女みたいによがらせてやる」
サンジの目は完全に据わっている。
ゾロはゾロで、急所を握りこまれて迂闊に抵抗できない。
「馬鹿っ・・・!よせ!!」
サンジは怒りに任せてぐいぐいと力任せにゾロのペニスを扱き上げる。
「はなせ!ちぎれるっ・・・」
相当に痛いのか、ゾロの目元は赤くなり涙まで滲んでいる。
さすがのゾロも此処までは鍛える事は出来ないのだろう。
その涙を見て少しサンジの溜飲が下がった。
同じ男だから急所をこんな風に扱われてどれだけ痛むのかもわかる。
そろそろ許してやるか。
手を緩めようとしたその時、サンジの耳に聞いた事も無いような声が届いた。
「あ・・・、くっ・・・」
うそだろ。
サンジは我が耳を疑った。
この甘い声は、あのゾロの口から?
顔をあげたサンジとゾロの目線がかち合う。
その途端ゾロの顔が熟れたように真っ赤になった。
サンジの手の中のゾロのペニスは誤魔化し様も無いほどに、完全に芯を持ち硬くなっていた。
バクバクとうるさいのは自分の心臓か?
熱に浮かされたようにサンジの頭がぼうっとしてきた。

こりゃ、あれだな。のぼせたんだな。
俺は今のぼせて頭がおかしくなってる。
でなきゃ、あのゾロにこんな事・・・する訳無い。

「う、あっ・・!サン、ジッ・・」
サンジの手の動きが明らかに変わった。
痛みを与える動きから、ゾロの快楽を引き出そうとする動きへ。
天井に向かって完全に立ち上がったゾロの性器を下から上にサンジは無言で扱きつづける。
クチュクチュと粘着質な水音がたってきた。
ぴんと硬く張り詰めたゾロの先端の窪みからは絶えずトロトロと蜜が溢れてサンジの手を濡らした。
浴室には二つの荒い息と時折堪えきれずにゾロが零す密やかな声が篭る。
思い切り左右に開かれたゾロの足の間にサンジは座り込み、憑かれたようにゾロに手淫を施している。
サンジの手の中でぶわりとゾロの雄が一回り膨れ上がった。
「くっ・・・!うあっ!」
下から上にサンジが扱き上げるのと同時に、ゾロのペニスの先端からは白濁の液が吹き上がった。
それは容赦なくサンジの身体を、顔を汚す。
サンジは全身を白く汚されその場に固まる。
「・・・こ・・・、このエロマリモ!何しやがる!!」
因果応報。結果の前には原因があるわけで。
ゾロの制止を無視して最後までいたしたのはサンジなのだが、サンジは突如逆ギレした。
混乱に身を置くよりも、怒りに気を取られる方が楽だったからだ。
「てめえばっかりいい思いしやがって!!」
「な・・!やめろ!」
力が抜けたゾロの身体をサンジはくるりとひっくり返す。
自分の身体に散ったゾロの精液を集めてはサンジは己の性器に塗りつける。
認めがたい事に、ゾロに手淫を施しながらサンジは完全に勃起していた。

まったく、どうかしてる。
ゾロが悪い。
こいつが、あんな声を出したりするから。

ゾロの腰を高く上げ四つん這いにさせると、サンジは硬く閉じているゾロの窄まりに自分の性器を押し当てた。
男となんかしたことは無い。
それはゾロだって同じだろう。
「あ・・・、ぐっ・・!」
無理矢理にこじ開けられる痛みに耐えかねてゾロがうめく。
ずりずりと押し進むたびにゾロの背中の筋肉がピクピクと痙攣した。
「あ、ああ・・」
串刺しにされる痛みから逃れるようにゾロは上体を起こして目の前の浴室の壁に縋った。
ゾロの腰を逃がさないようにサンジは自分の腰へと引き寄せる。
サンジが根元まで性器を押し込んだ頃にはゾロの背中は全面にしっとりと汗が浮かんでいた。
「きつ・・・」
肉の壁で握りこまれたような強烈な締め付けだった。
「全身の筋肉を、鍛えてるからか・・・・?」
「はっ・・、く」
最奥を突くように腰を一度突き上げると、それに押し出されたようにゾロの口から吐息が零れる。
「痛くねえのか?」
「ぬ、け・・・サンジ・・・・」
サンジが結合部をみてみると入り口の皮膚は限界まで伸びているが切れてはいない。
自分の足元に転がるボディソープをゾロの尻の間にたっぷり落とすとサンジは小刻みに腰を動かし始めた。
「は、あ・・・やめ」
サンジは後からゾロの腰を抱きこみ、力を失ったゾロのペニスに手を伸ばす。
陰茎を揉み込むようにして刺激を与えると再び力を取り戻し始めた。
さっきは手を触れなかった陰嚢にもサンジは愛撫を加える。
ゾロは浴室の壁に手をついて、サンジが好き勝手自分の性器を嬲るのをなぜかじっと耐えている。
そんなゾロを見ているうちにサンジの中で嗜虐心が頭をもたげる。
普段は不遜で誰にも屈しない男が、今は自分の手の中で自分の仕打ちに必死に耐えている。
自分の中にそんな嗜好があったのかと、我ながら驚いた。
サンジはひどく興奮していた。
「気持ちいいか?」
サンジはゾロに愛撫を加えながらも自分の性器の抜き差しの幅を少しずつ大きくしていく。
「う、あ、・・・あ」
「女みたいに突っ込まれてよがりやがって」
サンジは限界まで引き抜いて、一気にまた根元まで性器をゾロの中に押し込んだ。
「うああっ!!」
ゾロが思い切り背中を反らせる。
サンジは背後からゾロを抱きかかえてピッタリと上体を密着させると腰の動きをどんどん激しくする。
石鹸の効果もあってか抽挿はだいぶ楽になっていた。
「あ!ああっ・・」
押さえが効かなくなったのか、ゾロのあられもない声は途切れなく浴室に響いた。
「ばか、声が、漏れるだろ・・」
「う、んん・・・!」
サンジの指がゾロの口内に侵入する。
ゾロが強めにサンジの指に歯を立てると、その刺激でサンジの性器がさらにゾロの中で膨らんだ。
「んんん・・・!」
「煽ってんじゃ、ねえよっ・・・」
ゾロに自分の指を食べさせたままサンジはラストスパートのように激しく腰を振った。
きつくゾロの性器を扱き上げたとき、肉襞がぎゅうとサンジの昂ぶりを締め上げた。
「くっ・・・」
目の前が白くなる。
「んんーーーー!!」
強くゾロの尻の間に自分の腰を押し付けるとサンジは遂情した。
遅れてゾロも浴室のタイルに思い切り精液をぶちまける。

浴室の床に崩れ落ちたゾロをサンジは呆然と眺めていた。








翌朝、目覚めると有り得ないくらい下半身がすっきりとしている。
長い船上生活で溜まっていた性欲がキレイさっぱりと解消されてしまったからだ。
「うー、あー・・・」
サンジの口からは呻き声しか出ない。
よりにもよって。
よりにもよってゾロを抱いてしまうなんて。
長い溜め息と共にサンジはベッドから抜け出した。
とりあえず、もう朝食の準備をしなければ。
サンジが着替えているとドアを誰かがノックする。
ドアを開けるとその向こうにはチョッパーが立っていた。
「なんだよ、早いなチョッパー」
「サンジ、これゾロに塗ってやれよ。痛むだろうから」
「・・・・・・」
チョッパーがサンジに手渡したのは鎮痛剤入りの傷薬だった。
サンジの全身から冷や汗が噴き出してくる。
キッチンに向かうとロビンがテーブルについて読書をしていた。
「おはよう、ロビンちゃん」
ニコリとロビンはサンジに笑いかける。
「剣士さんは体を鍛えているとは思うけど、優しくしてあげてね」
「は・・・」
サンジの口からくわえていた煙草がポロリと落ちた。
固まるサンジを前にロビンの笑みは更に深くなる。

「浴室、思った以上に声が響くのよ?」

絶句したままサンジは何もいえない。
ルフィまで『俺は別に反対しない』とか何とか言い出す始末。
これを知った後のゾロのリアクションを想像して、またサンジの全身から嫌な汗が出てきた。
はたして、サンジとゾロはクルー公認の仲になったのだった・・・・。






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