「第一部と第二部の間の待機中の暁の人々」
『あっ、あん!あんっ・・ああーーーっ!!』
「んんっ!」
画面のAV女優が甲高い嬌声を上げると同時にきつく自分の息子を扱きあげる。
デイダラはブルリと身体を震わせるとティッシュの中に精を吐き出した。
ソファの上で思い切りしなやかな身体を弛緩させる。
「はー・・・。『淫乱スチュワーデス』も飽きたな・・・・・」
ここは秘密組織「暁」のアジト。
暁のメンバー達は何だかよくわからないが第二部が始まるまでの三年間、アジトに待機させられ若い身体を持て余していたのだった。
唯一の娯楽室でデイダラは激しい自慰行為にふけっていた。
娯楽室にはモニターのテレビとそれに接続されたビデオデッキが置いてある。
テレビ自体は写らないのでもっぱら空いた時間はビデオ鑑賞するしか暁メンバーの楽しみは無かった。
まあ、デイダラにはビデオ鑑賞以外にも芸術活動などの個人の楽しみがあるのだが、不気味なオブジェを粘土でせっせと作り『お前にそっくりだろ?』などと言われると暁メンバーはその不気味な粘土の像にまるで自分の魂を吸い取られでもしたかのような気味悪さを覚え非常に迷惑していた。
娯楽室にこもる=自慰にふける、
というようにメンバー内には暗黙の了解が成り立っていたので、特にデイダラにはその特権が最優先で与えられた。
「ふう・・・・」
ため息とともにデイダラは娯楽室のドアを開けた。
それを目ざとくサソリが見止める。
「早いじゃねえか。若いくせに枯れちまったのか?」
「うっさいよ、旦那。三時間もカイてりゃもうなんもでないぞ、ウン。『淫乱スチュワーデス』ももう20回は見たな」
「今は『添乗員』というがな」
「『淫乱添乗員』じゃ、ちょっと萌えないな、ウン・・・・」
「よし、俺のとっておきのやつを貸してやろうじゃねえか」
いそいそとサソリが自室に引き返し戻ってきた時には手には数本のビデオがあった。
そのラインナップを見てデイダラはげんなりした。
『潮吹き海女』
『色情海女』
『くいこみ海女』
何故そこまで頑なに海女に拘るのか、デイダラには旦那を理解してやることが出来なかった。
だいたい、デイダラにとっては日活ロマンポルノは正直言って温い。
モザイクすら必要とされない濡れ場。
あれは絶対合体をしていないに違いない。
これで抜くことはデイダラには至難の技だ。
『押し寄せる海女デウス軍団!』と、煽られたところで無理なことは無理なのだ。
「旦那・・・。海女以外で何かないのか・・・?」
サソリの目がすっと細まる。
「デイダラ、想像力を鍛えることは戦いにも役立つことだ」
そんなに気を張り詰めて自慰行為をするなんてごめんだ。
「想像力を働かせるよりも、俺はもっとわかりやすい方がいいな、ウン・・・・」
「我侭なやつだな、じゃあこれなら抜けるだろ」
もう一つのパッケージを見せられて、吐き出しそうになったエクトプラズムを何とかデイダラは呑み込んだ。
『Tバックサイクリング部』
パッケージの写真ではTバックを身に着けた女がサドルに跨っていて尻を突き出している。
「これ、濡れ場はあるのか・・・?」
「いや、延々と自転車を漕ぐ女の美尻がビデオに写っている」
ぬ、抜けねえ!
サソリとデイダラの萌えポイントは一万光年も隔たりがあり、容易に近付けそうも無かった。
「サンキュー、旦那・・・・」
サソリは一仕事成し遂げたとばかりに満足気に頷くと自室に帰っていった。
取り合えずビデオ四本を押し付けられてデイダラも自室に戻った。
手元には萌えることは難しいであろう色物ビデオが四本。
デイダラはかえって欲求不満になってしまった。
まともな刺激を求めてデイダラはイタチの元へ向かった。
「おーい、イタチ〜」
ドアをノックすると白地のTシャツにジーンズというラフな格好のイタチが現れた。
イタチは暁のマントを脱ぐとその辺に居る普通の兄ちゃんと全く変わりなかった(ゴルゴ線を除いては)。
「イタチ・・・。おいらが言うのもなんだけどな。いくら出番が数年後とはいえ普段からちゃんとしておいたほうがいいぞ、ウン」
「なんだ。ドアを開けてやればすぐさまダメ出しされるのも面白くないな」
「まあ、どうでもいいっちゃいいんだけどな、ウン。イタチ、お前のAVとおいらの『淫乱スチュワーデス』をしばらく交換してくんないか?」
「・・・いいぞ」
イタチはちらりとデイダラの手の内にある『淫乱スチュワーデス』を一瞥すると自室に戻った。
性にはかなり開放的な暁のメンバー達なのであった。
「これが俺のベストだ」
しばらくして部屋の入り口から顔を出したイタチがデイダラに一本のビデオを差し出した。
『ふんどし花嫁』
・・・・。
・・・・イタチ。
ふんどし萌えなのか・・・・。
イタチもデイダラとは分かり合えない位置に居る。
どちらかというとイタチとサソリは近いところに居るんじゃないだろうか。
ためしにイタチに『Tバックサイクリング部』のパッケージをちら見せしてみた。
途端にイタチの写輪眼は興奮したようにぐるぐると回り始める。
AVビデオ一本(しかもパッケージのみ)に容易に写輪眼を出してくるイタチ。
それほどに待機中の今は刺激が無く、退屈なのだった。
「こっち、貸してやろうか?」
「悪いな」
『Tバックサイクリング部』はイタチの元へ。『ふんどし花嫁』はデイダラの元に移動した。
せっかくイロモノビデオを手放したというのに、結局手元に入ってきたのはまたイロモノビデオだった。
がっくりとデイダラは脱力した。
「なんですか!お二人とも、い、いかがわしい!!ワールドワイドな(?)大きな野望を抱く暁のメンバーとして恥ずかしくないんですか!!」
ビデオを交換し合っていた二人に向けて大音声が鳴り響いた。
大声の発せられたほうに目をやると鬼鮫がイタチとデイダラを指差しわなわなと震えている。
鬼鮫はメンバー達が猥談で盛り上がっていても決してその輪に加わることが無い。
娯楽室にこもるメンバーに『体力が余っているのなら修行しましょう!』などと口酸っぱく言うものだからその点では皆に煙たがられていた。
デイダラは(こいつ童貞なんかな?)などと訝しんでいたのだが、真偽のほどは分からない。
そんな生真面目な鬼鮫にたいしてむくむくとデイダラの悪戯心が頭をもたげた。
「鬼鮫、お前何をおかずにしてんだ、ウン?」
「オカズ・・・・?別に皆さんと同じものを食べていますが」
こんな天然な返しをしてくる鬼鮫は、デイダラにとっては想定内だった。
「あのなー。オナニーのとき何見て勃たせてんのかって聞いてんだよ、ウン」
青白い鬼鮫の顔色が一転して劇的なまでに燃えるように赤くなった。
「わ、私はっ・・・、オナニーなんか・・・!」
「この年でしたことが無いなんて気味の悪いことを言うな」
イタチが冷静に鬼鮫の逃げ道を塞ぐ。
どうしようもなく下らない話題なのだが、イタチの目は真剣だ。
「エロ本はベッドの下だな、ウン!!」
デイダラは弾丸のように鬼鮫の自室に向かって駆け出した。
その後をイタチと半泣きの鬼鮫が続く。
「デイダラさん!何もっ、何もありません!!!」
鬼鮫の必死さが余計に怪しい。
勢いよく鬼鮫の部屋のドアを開けるとデイダラは鬼鮫のベッドにダイブした。
マットレスの下に固い感触がある。
デイダラは躊躇う事無くマットレスの下に手を突っ込むと、手先に触れた硬い物を一気に引き抜いた。
「うわああー!!止めてくださいい!」
「「!!!!!」」
イタチとデイダラはその場に固まった。
『鮫の生態 その繁殖期の行動』
辺りは水を打ったような静けさだった。
その場に膝をつきさめざめと(しゃれではない)泣く鬼鮫を除いては。
「ひっ、酷いです、デイダラさん!私だって健康な男子ですっ。こんな本の一冊や二冊持ってます!!それがいけないことですか!!!」
「鬼鮫・・・わ、悪かったな、ウン」
「そうだな・・・。エロ本・・・の一冊や二冊、俺も持っている」
恥部を暴かれたショックがまだ収まらないのか、デイダラとイタチの謝罪と慰めの言葉も鬼鮫の耳には届かない。
手の施しようも無く立ち尽くすデイダラとイタチ。
その二人に見下ろされながらでかい身体を震わせて泣き続ける鬼鮫。
その三人をしり目にサソリは『Tバックレスリング部』をしっかりと手に持ち娯楽室に入っていった。
それを遠くから見ている暁のリーダー。
あんまり待機時間が長いとろくな事をしないメンバーに危機感を覚えつつ『早く第二部始まればいいな』と、神(岸本神)頼みしていたのだった。
お粗末さまでした(平伏)
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