「I wanna be your dog」


「ああっ・・!う・・、く・・!!」
両足を肩に担がれ下から抉るように抽挿を繰り返され、押し出されるようにアキラの口からはあられもない声が漏れる。
自分の後口にグンジの性器が突き込まれる度にあがる高い水音に耳を塞ぎたいが、縋る物が無ければ更に醜態を晒してしまいそうでせめてもの抵抗とばかりにアキラは自分を組み敷く男の背中に思い切り爪を立てる。
凶暴に猛るグンジのペニスは残酷なまでに的確に精巣へと直結する前立腺を突き、その強制的な刺激にアキラの性器も痛いほどに張り詰めている。先端の括れから絶えず溢れる先走りはアキラの臍の窪みに溜まり、更に脇へと流れシーツの染みをどんどんと広げていく。
自分を真上から見下ろすグンジは猛々しい腰の動きにも拘らず平素と変わらない薄い笑いを浮かべたままで、アキラは一人だけ追い詰められていく。
圧倒的な力を前に苦痛で呻くより、望まぬ快楽を与えられる方がより屈辱だ。
「も、う・・、やめっ・・」
「なんでー?泣いてんの、ネコちゃん」
無理矢理に二つに折り曲げられた苦しい体勢のままアキラは懇願するが、グンジはアキラの後口に手加減せず楔を穿ち続ける。
前を触られもしないのにまたも絶頂ギリギリまで追い詰められアキラは必死で歯を食いしばる。グンジはそれを見て鼻で笑った。
深く繋がったままずるりと、グンジはアキラの腰を引き寄せる。
逃げようと腰を浮かせるアキラを上体を倒してグンジは押さえ込む。肩口までがっちりとホールドされてアキラは息を呑んだ。
「我慢しないでさぁ・・・、いい声で啼けよ」
「・・・ぐっ、ああぁっ!」
耳元で囁かれると同時にこれまでにない激しい抽挿が始まった。グンジは勢い良く根元までペニスをねじ込み、雁首が抜けるほどにアキラの肉襞から大きくそれを引きずり出す。
「いっ、あ、ああっ・・・!!」
数度長いストロークで突かれアキラはあっけなく三度目の吐精をした。お互いの腹の間でもみくちゃにされていたアキラのペニスからは達した後もたらたらと精液が漏れ続けている。
「たの、む・・・もうっ」
「だって俺、まだ一回もイッてねーし」
グンジの言葉に血の気が下がる思いがした。
アキラの片足だけを担ぎ直し、グンジは結合を更に深めるように腰を押し付けてくる。グンジの顔には微塵の疲れも見えない。
「いや、だ・・」
「はー、あっちい。お前ん中、溶けてぐちゃぐちゃ」
力の抜けきったアキラの体をやすやすと抱き起こし自分の胡坐の上にアキラの腰を据えると、グンジは力強くアキラを突き上げ始める。
「・・っ!」
自分の体重でより奥深くグンジを咥え込むことになり、反射的にアキラの肛道が収縮し自分を貫く肉茎を締め付ける。グンジが微かに目を眇めた。
「ネコちゃん、こうすっとスッゲー締まる」
羞恥に火照りきったアキラの身体が更に熱を持つ。
ニヤリと口の端を持ち上げて間近からグンジがアキラを見上げた。
「ヨガリ狂って壊れちまえよ」
鋼のように硬度を保ったままのグンジの性器が再びアキラの肉襞を突き荒らし始める。
グンジのペニスはアキラにとっては凶器そのもので、腹の中を何度も刺し貫かれて気を失うたびに自分は死んだと思う。
だが腹が裂かれることも、血まみれになることもなく、二人の体液にまみれたままアキラは泥のように眠りグンジに再び貫かれて目覚める。
その繰り返しだ。





「ん・・」
寝苦しさに目覚めるとしなやかな筋肉を纏った両腕にアキラは抱きすくめられていた。
「・・おい」
「・・・んぁぁ・・?」
頭上から腑抜けた声が聞こえたと思えばアキラへの両腕の拘束は更に強まった。
硬いグンジの胸元へ顔を押し付けられてアキラは眉根を寄せる。グンジは驚くほどに体温が高い。その熱に抱き込まれる度に共に上がる自分の体温にアキラは落ち着かなくなる。
「なんで・・、離、せよ」
アキラはこの部屋に連れられて来た当初は床に転がされている事が多かったが、最近では気が付けば抱き枕よろしくアキラはグンジのベッドに引っ張り上げられてグンジの腕の中にいる。
何とかグンジの腕の輪から上半身を抜き、アキラはベッドに身を起こした。グンジは相変わらず上半身は逃したもののアキラの腰をガッチリと抱え込みアキラの腿を枕に寝入っている。警戒心の欠片もない。これほどに深く寝入っているのなら寝首を掻く事も容易いだろう。
辺りを見回せばベッドの下には血塗れたグンジの鉤爪がアキラの手の届く距離に無造作に置かれている。しばし視線を鉤爪に固定させてからアキラは小さく溜息をついた。
「何がしたいんだ、お前・・・」
アキラの問いかけに眼下の金髪の頭部は沈黙を続けている。
本格的に寝入ってしまったらしく、不明瞭な寝言すら聞こえなくなった。規則正しい寝息の合間に時折鼾が混じる。
グンジが無心に睡眠を貪る様を見て、今度は身動きするのが何故か憚られた。



トシマでは処刑人は死神と同義語だった。
逃げられず追い詰められて、死神から喉元に噛み付かれたアキラはあの晩死んだはずだった。
しかし現実はというと予想を裏切り長い間生かされている。
暴力、痛みのみを与えられるのなら至って構図はシンプルなものだった。
そのまま嬲られ続けて死ぬのを待つか、諦めずに反撃し相手を死に至らしめても逃げ出すか。
だが今の状況にアキラは困惑している。
毎晩のように無理矢理に身体を開かれる。だが認めがたいが、最近では苦痛よりもそれ以外の感覚の方が勝る。
グンジがいてもいなくても、殺風景なこの部屋から一歩も出る事無くアキラは一日を過ごす。衣類は全て取り上げられたが、アキラを拘束するものは右足首の長い鎖に繋がれた枷だけだ。部屋に置いてある水やら食料、備え付けのユニットバスを好きにしてもグンジは何も言わない。
飢える事も寒さに震えることもない。
まるで微温湯に浸かっているように、ここは自由で不自由だ。
そろりと手を伸ばし、アキラは持ち主の手から離れて冷たく光る鉤爪を掴んだ。誰の物とも知れない血に濡れたまま、それは差し込む月光を反射している。
波紋が美しく映るその血塗れた刃を、無防備に眼下に晒されたグンジの首筋に押し当てて引き上げる。
ただそれだけで、この部屋から開放される。

帰ることが出来るのだ。
だが自分の帰るべき場所は、一体何処なのだろう。
結局はそこから思考は出口を探せずに堂々巡りをする。
アキラの腿の位置に丁度グンジの心臓がある。死神の心臓はトクトクと穏やかに脈を打ち続けている。乾いたグンジの肌は酷く暖かかった。


鉤爪の留め金が小さく音を立てる。詰めていた息を吐き出しながらアキラはその爪を床にそっと下ろした。
「ヒャハ」
アキラの心臓が跳ねた。
「ネコちゃんのぉ、負っけー」
アキラの腰に回されたグンジの両腕に力が篭る。
「俺の喉そんままガバッて裂いちまえばここから逃げられたんだぜー?」
「いつから・・・、起きて」
アキラの口内が急速に乾いていく。
「んー、最初っからぁ」
「・・・っ」
本能的な恐怖だ。アキラはとっさに逃げを打ちグンジの腕の拘束をそのままにベッドサイドに手をかけるが、物凄い力でグンジに引き戻される。
「ざーんねん」
後ろ手に腕を捻られてうつ伏せに頭部を押さえられる。
浮き出た肩甲骨をゾロリと舐め上げられてアキラの体が震えた。
「諦めろっつーの、もうお前は俺のもん。最後の骨の一欠けまで全部喰ってやるからさぁ」
「いぁっ・・!」
肩口に思い切り噛み付かれてアキラの背中が強張る。
「ん・・・、んっ・・」
噛み付かれたアキラの肩から腕、背中へと味見をするようにグンジの長い舌がぬるぬると這い回る。
濡らされていく感触をアキラはシーツに顔を押し付けたまま耐える。
「あー、甘。なんでネコちゃんの血も汗もセーエキもこんなにあめーの?ネコちゃんの身体、内側ひっくり返してさあ、内臓全部舐めまわしてみてぇ」
「お前、狂ってる・・・!」
背中でグンジが笑う気配がする。
冗談とも取れないグンジの言葉にアキラの肌が粟立った。
「うー、ワンワンッ!」
「なっ・・、くっ・・!」
項に犬歯を思い切り立てられてアキラは呻いた。
「そーそー。俺って狂犬だからぁ。知らなかった?」
何故さっきグンジの喉を掻き切らなかったのかと後悔するよりも、これから自分がこの狂った男に何をされるのかその予測がつかない事にアキラの頭は真っ白になった。
四つ這いの体勢をとらされ、背中に覆いかぶさるグンジに両手首を一まとめに掴まれる。
そのまま空いた手でグンジは鳥肌と共に立ち上がったアキラの胸の突起を指の腹の間で挟み強く擦り上げてくる。
「うっ・・・、んっ」
「ここ好きだよな、ネコちゃん」
硬く尖る乳首を指の腹で押しつぶされる度に腰にまで甘い痺れが走った。いつしかアキラの身体の強張りは解け、シーツに半ば上体を倒しグンジにされるがままになっている。
ジンと痺れる様な感覚に脱力したアキラは軽々とグンジに仰向かされた。
「・・・っ」
アキラの霞がかった意識が突然引き戻される。口内にグンジの長い舌が潜り込んできたからだ。
性欲と嗜虐趣味を満たすだけなら必要の無い行為を今初めてアキラはグンジから仕掛けられている。
グンジの長い舌はアキラの歯列をなぞり、口内の粘膜の上全てを執拗に這い回る。
「はっ・・、あ・・」
長く深いキスにアキラの息が上がる。飲み切れない唾液がアキラの耳の脇を流れていく。
「なんで・・・」
アキラの問いにグンジは答えず頭部をアキラの下肢へと移動させていく。
グンジが胸の刺激で硬く反り返ったアキラのペニスを口に含んだ時、アキラは息を呑んだ。
「グンジッ・・やめっ・・・!」
グンジの髪を掴んで引き離そうとするが、鈴口を舌先で強く嬲られて逆にグンジの口内に押し込むようにアキラの腰が揺れる。
さっきのキスといい、今のこの行為といいこれまでにされたことの無い行為にアキラの頭には血が上りまくり、思考も焼き切れてしまいそうだ。
混乱して何も考えられなくなる。
「やっ・・!ひぁ・・!」
最初の荒々しい扱いと裏腹にアキラのペニスに絡みつくグンジの舌は柔らかく、喉の奥まで引き込まれると達してしまいそうで腰が痙攣するのを抑えられない。
「も、う・・、やめっ・・!」
自分が今感じているのは紛れも無く快楽のみで、それに呑まれまいとアキラは抗うがグンジは射精を促すように更にきつくアキラの性器を吸い上げてくる。
「あっ、ああ・・、あーーーーーっ!」
アキラの瞼の裏で光がスパークした。
どくどくと放出されるアキラの精液は全てグンジの口内に注ぎ込まれていく。射精を終えて敏感になっているアキラのペニスにグンジは更に吸い付き残滓を全て飲み干した。
「あー、甘ぁー」
完全に脱力して横たわるアキラを見下ろしながら、グンジは口の端に残るアキラの精液を見せ付けるように舌で舐め取った。
「ネコちゃんにもぉ、ご褒美あげないとなー。これ大好きだろ?」
ぐいと腕をつかまれ引き上げられたアキラは顔先にグンジの硬く張り詰めたペニスが突きつけられた。アキラよりも一回り大きいグンジの性器は脈打ってほぼ真上を向くように立ち上がっている。
「よーっく濡らせよ」
躊躇するアキラの口にグンジは思い切り猛る凶器を押し込んできた。
「う・・、ぐっ・・」
無理矢理に押し込まれる苦しさにペニスを押し出そうと闇雲に舌を動かせばグンジが微かに呻いた。
口内にジワリと広がる苦味にアキラはきつく眉根を寄せる。
「なーに、ネコちゃん上手じゃん。俺もお返し」
まるで赤子のように裏に表にと身体を返され、今度はアキラは仰向けのグンジの体を跨がされる。眼前には依然屹立したグンジのペニスがある。
自分が今どんな体勢を取らされているか思い当たり慌ててグンジの上から退こうとしたが、自分の尻の間を濡らす感触にアキラはグンジの股間に突っ伏すように崩れた。
「いや、だっ・・ふ、あっ・・・」
「こっちもイイ味じゃん」
尻の肉を掻き分けるように広げて、グンジがアキラの後口に舌を這わせている。その舌が少しずつ自分の中に潜り込んでいく。
その耐え難い行為に逃げ出したいが舌で襞の一つ一つをなぞられる度にアキラの身体から力が抜けてしまう。
ぴちゃぴちゃと犬が水を飲むような水音と自分の荒い息遣いだけが部屋の中に反響する。
グンジの舌は驚くほど深くアキラの中に入り込んでくる。
排泄口を舐められるという行為に頭が煮えて、潜り込んだ舌先が蠢くたびに再びアキラのペニスには熱が集まってくる。
硬く勃ち上がっていく自分の性器も、張り詰めた自分の双球も全てがグンジの眼前に晒されている。そう思えばますます熱に浮かされたようにアキラの身体は火照っていく。
「はっ・・、ああ・・・も、グンジ・・・・!」
グンジは完全に自分の身体の上で脱力しているアキラを上体を起こして腹の上で滑らせた。再び犬のように這わされたアキラの尻の狭間にグンジはアキラの唾液で濡れそぼったペニスをぬるぬると擦りつける。
「んじゃ、たっぷりやるから。ぜーんぶ飲めよ?」
「ああーーっ!!」
充分に解されてはいたが雁の張ったグンジの先端が潜り込む時はいつも声を抑えられない。
自分の腹の中がグンジの形に広げられていく圧迫感と、敏感な肉襞を強く擦られ続ける凄まじい快感に根元まで押し込まれると同時にアキラは再び達していた。
「い・・、あ・・あっ・・」
「あ・・、くっそ・・!」
腰だけを高く持ち上げぐったりと身体を倒すアキラの背中に荒い息をついてグンジも倒れこんできた。
ドクリと大きく脈打ったあと、アキラの最奥にグンジは熱い飛沫を浴びせる。
ビクビクと脈動するグンジのペニスを感じて思わずアキラの下肢に力が入ると、グンジはブルリと身体を震わせた。
「くっそ。ネコちゃんに引き摺られちまった」
後口からグンジの性器が引き抜かれると同時に大量の精液が逆流してアキラの足の間を流れ落ちていく。
軸を失ってシーツに崩れ落ちるアキラをグンジは容易く仰向けにする。アキラの膝裏を押し上げて身体を二つ折りにするとぐずぐずに蕩けたアキラの後口が真上を向くようにした。
「・・・っ!うあぁっ・・・!」
硬度を失わないグンジのペニスが一息に根元まで挿し込まれ、その衝撃にまどろみかけていたアキラは目を見開いた。
「まーだねんねは早いぜぇ。ネコちゃん?」
アキラを見下ろしたグンジはニヤリと思い切り口角を引き上げた。




早々に体力の限界を迎え、気絶してなおアキラはグンジに犯され続け、丸一日泥のように眠った後今に至る。
「・・おい」
「・・・んぁぁ・・?」
腑抜けた声が頭上から聞こえて、アキラを拘束する腕の力は更に強まる。
「おいっ、起きているんだろう!」
「んー」
金髪を透かして切れ長の目がこちらをじっと見ていた。
客観的に考えてみても、主観的に考えてみても、グンジのアキラへの執着ぶりは異常だ。
だがごくごく普通の感覚しか持たないアキラがグンジの考えている事など考えられるわけも無い。考えた所で何の意味があるのか。
意思の疎通も出来ないし、アキラの意向など全く無視。
グンジはアキラとは違う種類の人種で結局は相容れないのだ。
「お前・・・、よっぽど俺の事が好きなんだな」
アキラにしてみればささやかな意趣返しのつもりだった。だから返って来た返事に頭を殴られたようなショックを受けた。

「ヒャハー、あったりー」

アキラは絶句した。まさか肯定されるとは。
処刑人に人らしい感情があるなどと誰も思わないだろう。
いや好意の種類がどういった物かわかった物じゃないが。
拉致監禁の上陵辱の限りを尽くされるなど、そんな好意を嬉しく受け取る人間が居るはずがない。
これは、出会い頭に処刑人に嬲り殺されるよりも悲惨な状況なのではないか。
グンジは積極的にアキラに害を成す考えは無く、アキラが死なない限りこの状況は延々と続いていくだろう。
「・・・っ!」
しばし自分の考えに沈み込んでいたアキラは自分の後口に進入しようとするグンジの指を感じてビクリと背中をしならせた。
続けてまた挑もうというのか。
最後に食べ物を口に入れたのはいつだったのかもう思い出せない。このままでは近いうちにヤリ殺されてしまう。
こんな狂った男に執着されるなんて不幸以外のなんだというのだ。
命の危険すら感じてアキラは腕を突っ張るが自分の腰を抱きこむグンジの腕はピクリともしない。
「よせ!この・・・っ!!」
「ウー、ワンッ!」
首筋に軽く噛み付いてくるグンジを避けようとアキラは首を仰け反らせる。
軽々と自分を組み敷いて見下ろしてくるグンジはいつもの薄ら笑いを浮かべている。
そしてアキラは気付いてしまった。
気付きたくもなかったのに。
普段は長い前髪に隠されている、グンジの切れ長の双眸がアキラを見下ろしてさも嬉しそうに細められていた。
「この・・・、バカ犬」
「ワンッ」



あの晩に、本当に自分は負けてしまったのだとアキラは気付いた。









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