犬も食わない




「イルカ先生、本当に俺の事が好きなの」
声音に諦めとも、非難とも付かない色が混じるのをカカシは自覚した。
カカシの言葉を受けて眼前の恋人は無言で俯くばかり。
「何だか、俺ばっかりが好きなのかな・・・」
カカシは立ち上がり、黙々と帰る準備を始める。
相変わらずイルカは黙りこくったままで、引き止めてはくれなかった。
沈黙がずしりとカカシの胸を重くする。
「おやすみ、イルカ先生」
明日は珍しく二人そろっての休日で、二人でのんびりと過ごす時間を楽しみにしていた。
それなのに、どうして今、冷え切った自分の部屋へ向かって歩いているのだろう。
イルカのアパートを後にしたカカシの足取りはどんどんと重くなっていく。




カカシの告白から始まった二人の付き合いはやっと一ヶ月を超えたばかりで、階級の違いを気にしてかイルカはひどくカカシに気を使い、遠慮深かった。
最初はそんな謙虚で我を通そうとしないイルカを可愛いとも思ったが、それが度を越せば他人行儀に一線を引いてカカシを近づかせようとしないイルカにどんどんと不満と不安が募っていった。

もっとわがままを言ってもいいんですよ。
もっと俺に甘えていいんですよ。

二度三度とイルカに言ってみるも、イルカは頭を振るばかりで。
体の関係はあるものの、カカシとイルカの関係に比べれば時々垣間見るイルカとアカデミーの同僚との屈託の無いやり取りの方がよっぽど近しいのではないか。
そういえば、好きだと告げるのはいつも自分ばかりでイルカから返してもらった覚えが無い。
告白した時でさえもだ。
こくりと頷いてはくれたが、そのときは喜びに舞い上がってしまいきちんと言葉をもらっていないことに気付かなかった。
これでは付き合っていると言っても片思いと変わらないではないか。
知らず知らずにカカシの眉間には皺が寄る。
イルカは歩み寄ってくれようとはしないが、それでもカカシはまだ二人の関係を諦めるつもりは無い。
しかし、どうしたものか。
無機質な自分の部屋に戻り、電気もつけずにカカシはしばらく考え込んでいた。


どれくらい時間がたったのか、玄関の前に見知った気配が立った。
カカシははっとして、思わず腰を浮かせる。
追いかけて来てくれた。
思い返す限り、イルカからカカシに何か行動を起こしてくれたのはこれが初めてかもしれない。
玄関の前に立ち尽くしているであろうイルカはなかなかノックすらしようとしない。
カカシは焦れて、自分から玄関のドアを開けた。
ドアの向こうには思い詰めた表情のイルカが立っていた。
とにかく、さっきの自分の態度を謝って、もう一度イルカのアパートに一緒に帰って・・・。
その後の段取りをめまぐるしく考え始めたカカシにイルカは消え入りそうな小さな声で告げた。

「俺だって、好きです・・・・」

欲しい欲しいと思っていた言葉は、いざ受け取ると物凄い威力でカカシの心臓を締め上げた。
言葉一つで、たった今死んでしまってもいいとさえ思えるなんて。
カカシの口元には蕩けそうな笑みが浮かびかけるが、イルカが辛そうに眉根を寄せてぽろぽろと涙をこぼすのを見てそれは瞬時に消えた。
「イルカ先生?」
カカシは慌ててイルカの顔を覗き込む。
カカシをじっと見たまま、さらにポロリとイルカは涙をこぼす。
「俺は、重いですか」
「え?」
「どうしていれば、カカシ先生の負担にならないんですか」
「何言ってるの、イルカ先生」
身体を震わせて涙をこぼすイルカが痛々しくて、思わずイルカの頬に手を添わせるとイルカはびくりと身を竦ませた。
「すいません・・・泣いたりして」
カカシが前に出た分、イルカは後ろに下がってぐいと袖口で涙をぬぐう。
やはり距離は縮まらない。
明らかに、今イルカを泣かせているのは自分だ。
けれどもイルカは何故泣いているのかを明かそうとしない。
それもカカシへの過ぎる遠慮が原因なのか。
埒が明かない。
「ああもう!」
カカシはぐいとイルカを力任せに引き寄せて腕の中に囲ってしまった。
「あのね。俺は本気であなたの事が好きですよ。だからあなたが辛そうに泣くのは、堪らない。それが自分が原因ならなおの事痛いよ。どうして俺の事を好きだと言って、泣くんですか」
イルカが何を言おうが放すものかと、カカシは両腕に力を込める。
ぐすんとイルカが鼻をすすり上げる。
「カカシ先生が言ったんですよ」
「何を?」
「べたべたとくっ付かれるのは、鬱陶しいって・・・」
どういう事だろう。
カカシはハタと考え込む。
間違っても、口が裂けてもイルカにそんな事など言ったりしない。
イルカにべたべたされるなんて望むところだ。
「好きだの、愛しているだの、言葉は重いって・・・」
「言ってないよ」
「言いました」
「言ってないって」
「言いました!二ヶ月前の午後二時過ぎに上忍待機室でカカシ先生は確かに言いました!」
えらく滑舌良く、イルカは言い放った。
ぐいーと両腕を突っ張ってイルカはカカシから身体を離そうとする。
それをさせじとカカシは更に両腕に力を込める。
イルカを抱きしめながらもカカシは二ヶ月前の記憶をたどった。
その頃は7班の監督をするしか仕事は無く、手が空いたときはずっと待機所に詰めていたはずだ。
イルカの言葉を頼りに糸口を探す。
「あ」
言った。確かに。
確か、アスマと暇つぶしに話をしていた時だ。
そろそろ身を固めたらどうだと、自分の身を棚に上げて無責任にカカシに言うアスマにカカシは答えたのだ。


『やだよ、女なんてめんどくさい。束縛してくるし、べたべた纏わり付いてくるし。好きだの、愛しているだのすぐ口にするし。思い。鬱陶しい。気持ち悪い。身を固めるくらいなら、花街で女を買う方がまし』




興味の無い話題を切り上げるための逃げ口上。
しかし、我ながらひどい暴言だ。
しかもそれをイルカに聞かれていたなんて。
「あの・・・ひどい男でごめんね」
イルカの真正面に立ちなおして、カカシは神妙な面持ちで言葉を続ける。
「確かに、昔は女の扱いは酷かったかもしれないけど、それは認めるけど」
「本当に、酷いです」
イルカに責めるように言われて、ぐうと、カカシは言葉に詰まった。
けれども眼前のイルカは目線は逸らしているがカカシから距離を取ろうとはせずその場に立ったままでいる。
カカシはここぞと必死に畳み掛ける。
「でも、イルカ先生は、ちがうんです。イルカ先生には俺にべたべたして欲しいし、俺を束縛して欲しいし、俺にたくさん好きだって言って欲しいんですけど。・・・駄目ですかね」
ひょいと首をかしげてカカシはイルカと目線を合わせた。
イルカはカカシと目が合った途端にボンと顔を高潮させる。
うわー、と、カカシも釣られて頬を上気させる。
急に足元がふわふわとして覚束なくなる。
「一緒に帰って、べたべたしても、いいですか・・・・?」
ごくりとカカシの喉が鳴った。
「・・・はい」
真下を向いて俯くイルカの露になった項は真っ赤だ。
イルカの手を引いて、カカシはイルカのアパートへ続く道を歩き出す。
お互いの掌は汗でしっとりと湿っていた。
とりあえず危機的状況は回避できたらしい。



まったく、よくもここまで惚れ込んでしまったものだと。
他人事の様にカカシは思った。










「あ・・!あっ・・あっ」
イルカの乳首へ右腕を伸ばしながら、左手はイルカの性器をリズミカルに上下に扱きたてている。
さらにその上、カカシはすっかり濡れそぼった先端を口に含みイルカの鈴口を執拗に舌先で刺激する。
二点を同時に攻め立てられてイルカは断続的に身体を震わせる。
「や、やっ・・・!怖いッ・・」
「大丈夫だから・・・」
カカシは先端の柔らかい肉をきつく吸い上げた。同時にイルカの乳首を指の腹を擦り合わせるように揉み潰す。
「・・・ッッ!!!」
声も発することも出来ずに、イルカはつま先までぴんと張り詰めてカカシの口内に白濁の液を放った。
最後の一滴まで吸い尽くそうと、カカシはイルカの亀頭にぴたりと唇を合わせ力を無くし始めた陰茎を下から上に擦り上げた。
「も・・・やめて。恥ずかしい・・・」
「んー、ごめん。止められない」
イルカの蜜を全て口の中に収めてカカシはひくひくと震えるイルカの内股をぐいと押し広げると、膝裏を押しイルカの身体を二つに折り曲げる。
イルカの萎えて下生えの中に倒れこんだペニスと、物欲しげに伸縮を繰り返す後口がカカシに丸見えになった。
カカシはさらに膝裏を押して後口が真上に向くまでにイルカの腰を浮かせる。
「カカシせんせ・・・くるし」
息も絶え絶えにイルカが訴える。
カカシは聞こえない振りをしてイルカの後口にそろりと舌を這わせる。イルカは抵抗するようにぎゅっとその蕾を窄ませた。
襞を一つずつ丁寧になぞっていき、そしてその襞の中心にカカシは少しずつ舌を潜り込ませていく。
「いや・・いやです」
カカシの膝の上で腰を抱え込まれるようにして、自分の排泄器官を愛撫されているかと思うとイルカは羞恥に身体がますます熱くなった。
イルカが身を捩ろうとすると、カカシは余計に尻タブを左右に押し広げて舌をイルカの中に押し込んできた。
カカシは自分の唾液と一緒に口の中に含んでいたイルカの精液をイルカの直腸内に流し込む。
「んっ・・んぁ・・」
生温かい液体に体内を侵食されてイルカの口からは絶えず甘い吐息が漏れる。
ぬっ、ぬっ、とカカシの舌は器用にイルカの後腔を出入りする。
そのむず痒いような刺激にイルカの萎えた性器は徐々に力を取り戻し始めた。
それをちらりとカカシは目端で捕らえると、舌をイルカの後口から引き抜き代わりにずぶりと指二本を揃えてイルカの中に突き立てた。
「ああっ・・・!」
柔らかい舌にゆるゆると嬲られていたのに突然に長い指に力強く奥深くまで抉られて、イルカのペニスはさらにぐっと頭をもたげる。
奥深くに差し入れたと思うと、カカシはその指を鉤状に折り曲げて内部を押し広げるように引き抜く。
イルカは未だに片膝を胸に付くまで押し上げられ、あられもなくカカシの前に全てを晒したままだ。
過ぎる快楽にイルカの羞恥はとうに何処かに行ってしまった。
羞恥も理性も何もかも剥ぎ取られ、イルカはありのままの姿をカカシの前に現す。
「好き・・・、好きです・・・」
うわ言の様に繰り返すイルカに応えて、カカシはすでに限界寸前まで張り詰めた己の昂ぶりを一息にイルカの内部に押し込んだ。
「ごめん、も・・・我慢できない」
カカシはがつがつと腰をイルカの後口にめがけて振り下ろし始める。
「ああっ!くっ・・・うあっ・・!」
深く抜き挿しされる度に反射的に声が漏れてしまう。
自分の手の中で、自分の動きに従順に反応を返すイルカが愛しくて堪らない。
一際深く結合を深くすると、カカシはイルカの中に熱い飛沫を迸らせた。
それでもカカシの熱は収まらない。
「イルカ先生、もう一回だけ・・・」
何度かイルカの中で行き来しただけで、カカシの性器は弾ける寸前までに硬く張り詰めた。
カカシが一度達したために、結合部から立つ水音はますます高くなる。
身体を繋げたままでカカシはイルカをうつ伏せにさせた。
イルカの腰を高く持ち上げて、その背中にカカシは覆いかぶさる。
カカシは小刻みに腰を揺らしながらイルカのペニスに手を伸ばし、竿を擦り上げてきた。
「うっ・・うん・・・あっ」
後口に出し入れされる疼く様な快感と、自分の性器に直接与えられる強い快感にイルカは自分の身体を支えることが困難になってきた。
高く腰をカカシに向けて突き出したまま、イルカは上半身をくたりと布団の上に沈ませる。
カカシは抽挿のスピードと、イルカの性器を擦りあげる手のスピードをどんどんと早めていく。
手の中でイルカの性器がどくりと脈打った。
「あっ・・!あああぁっ!!!」
イルカの秘肉が思い切りカカシを締め付けてくる。
蠢く襞に扱かれて、カカシも後を追うように遂情した。


「こんなに良すぎて、どうしよう。あなた以外とするなんて、もう考えられない」
気を失ったイルカにはカカシの声は届かなかったけれど。
「俺をこんな身体にしたんだから、責任取ってね」
汗に濡れたイルカの肌に口付けて、カカシは飽きる事なく赤い所有印を散らしつづけた。
重い真摯な言葉で愛を囁いて、一日中雁字搦めに俺を束縛してね。
イルカに身も心も縛り上げられて、身動きの取れない自分を想像して。

息が詰まるような恍惚感にカカシは酔いしれた。




novel



マゾッ子カカシ・・・・。