恋の病
恋はするものではなく落ちるものだと言ったのは一体誰だったか。
イルカはある日突然に恋に落ちた。
「そういう訳だから、カカシ!!俺はおまえと別れるぜっ!!!」
「・・・うん?」
いつもと変わらない朝の食卓で、カカシから受け取った茶碗の白飯をイルカは元気良く口に詰め込んでいる。
そのイルカの前でカカシはしゃもじを手にしたまま小首を傾げた状態で固まっている。
「えーと、イルカ。何て言ったの?」
「だーかーらー!」
小鉢の納豆を勢い良く掻き混ぜながら、イルカは次に手を伸ばそうとプルプル加減が絶妙な温泉卵を熱く見つめる。
その温泉卵が慎ましく浸かっているタレがこれまた絶品なのだ。カカシは本当に料理が上手い。
育ち盛りの食欲魔人なイルカはカカシの手料理が楽しみで部活が終われば遊びにも行かずに真っ直ぐ帰宅する。
世に言う、恋人の胃袋を握っているといった状態のカカシなのだった。
そして、カカシの手料理を元気満々でぱくつきながら、イルカの喋る口も止まらない。
「俺は運命の女に出会ったんだ。俺はあの人と結婚して幸せな家庭を作る。これでやっと不毛なホモライフともおさらばっ・・・・・」
言い終わる前にイルカの目の前の景色が瞬く間に変わる。
「うわっ」
ベッドのスプリングの上でイルカの身体が勢い良く弾んだ。
手にしていた小鉢と箸はいつの間にか無くなっている。
カカシは無駄な上忍パワーを朝っぱらから発動させて瞬時にイルカの小鉢と箸を取り上げテーブルの上にきちんとそろえ、瞬時にイルカをお姫様抱っこし、瞬時に二人の寝室まで運んだのだ。
真顔でイルカに圧し掛かるカカシの下で、イルカは目を丸くしながらもまだもぐもぐと口を動かしている。
「イルカ、ごめんね。毎晩3発じゃまだ足りなかったんだね。もー女体への興味が消え失せるくらいにイルカをこれから抱きまくってあげるから!!欲求不満にさせてごめん!」
「違うーーー!!!」
白飯をやっと飲み下したイルカは叫んだ。イルカがじたばたと空しくもがいている間にもカカシは易々とカッターシャツを剥ぎ取り制服のズボンの前を寛げる。
「うっ・・・!」
ずるりと引っ張り出したイルカの性器をカカシが結構な強さで握りこんだ。
「欲求不満じゃないってんなら、一体なんなのよ?」
(・・・お、おっかねえ・・・・・)
声音は柔らかいがカカシの目は笑っていない。
カカシは顔立ちが端正なだけに、口元だけに笑みを浮かべる様は変な凄みがある。
今更ながら、この性質の悪いしち面倒臭い男に朝っぱらから爆弾を投げつけてしまった事にイルカは気付いた。
浮かれまくっていた数分前の自分を罵倒してやりたいがもう遅い。
急所をカカシに握りこまれたままイルカはとつとつと話しはじめた。
*********
それは一週間前の事。
「なんということだ!!!俺の可愛いイルカがああ!!!」
「保健室は嫌ですーーーっ!!!」
放課後、さて帰るかと正門へ向かいのんびり歩いていたイルカは不意打ちでガイの青春を食らい、もんどり打って地面に転がった。
手をついた場所が悪かった。イルカは尖った石で掌をざっくりやってしまったのだ。
ガイはどうも生徒の出血に過敏に反応しすぎる嫌いがあり、この時も例に漏れなく暑苦しい滂沱の涙を流し、わあわあ叫びつつひょいとイルカを肩に担ぎ上げた。
「俺がついていながら何ということだ!!しっかりしろイルカーーっ!!!」
お前の所為だろうが!!
と心内で突っ込みつつもイルカはガイの肩の上でガイの背中を両の拳でぽかぽか殴る。当然ガイへのダメージは全く無い。
「だ、大丈夫です!!だから、もう帰らせて!!う、うわああ、嫌だあーーー!!!」
ガクガクとガイの肩の上で揺さぶられながらもイルカは必死で叫びつつける。
しかし、イルカの健闘空しく保健室はもうすぐそこまで近づいていた。
力ではガイに敵わない。妖しい薬を盛られてはカブトに抵抗する術は無い。
「誰か、助けてッ!!カ、カカシッ!肝心な時に何してんだあの馬鹿!!離せぇーーーっ!!!!」
イルカ、絶体絶命のピンチ。
もう恥も外聞もなく喚き散らすイルカだったのだが突然ゴイン、と。鈍く重い音がイルカの身体のすぐ横で響いた。
イルカの身体のすぐ横。そこにはガイの頭部がある。
「・・・ぐうっ!!」
半瞬遅れて呻いたのはあまりにも打撃が重かったからか。
あのガイが自分の頭部を押さえてしゃがみ込んだ。
ガイが自分の頭部を押さえ込んだので、ガイに担ぎ上げられていたイルカはころりと床に転がる。
「保健室の前で何を騒いでいる?!この馬鹿者!!!」
状況が掴めずに床に座り込んだままのイルカの上に張りのある良く通る声が降って来た。
声の方を振り仰いだイルカの視界を白衣に包まれきれていない柔らかそうな双球が占拠する。
(・・・で、でけーーーー!!!)
たわわに実った乳房の上からはその巨乳にはそぐわない小作りの可愛らしい顔がイルカを見下ろしていた。
唇は桜の花びらのように小さく可憐で、その上にはすっきりと鼻梁の通ったバランスの良い鼻。大きな目は少し勝気そうに釣り上がっている。
イルカが忍術学園で初めて見る顔だ。
「なんだ、お前。怪我をしているのか」
その巨乳の持ち主は呆けたままのイルカに構わず話し掛ける。
「・・・つ、綱手先生。我が可愛い生徒、イルカの傷を見てやってください!!!」
未だに頭部を押さえながらガイはその巨乳に頭を下げた。
その光景をイルカは驚きに満ちて見つめる。
あのガイを拳骨一つで大人しくさせるこの美女は一体何者なのか。
「全く。そんな事でいちいち大騒ぎするな。後は私に任せてお前はさっさと帰れ」
巨乳は未だ廊下でしゃがみ込むガイを放置したままイルカを保健室に引きずり込むとぴしゃりと入り口の戸を閉めた。
手当てを受けるためイルカは巨乳の前の小さな丸椅子に腰掛けた。
「お前も男だろう。切り傷くらいでギャアギャア騒ぐな」
「す、すみません・・・」
別に傷の痛みで大騒ぎしていたわけではないが、巨乳の迫力に飲まれイルカはとりあえず謝った。
しかし、カブトの姿が見えない。
「あの、カブト先生は・・・・?」
「あの小僧は大蛇丸にくっ付いて一緒にここを辞めちまったよ。学校医じゃ仕事の割が合わないんだと。あのオカマと暁倶楽部の運営をおおっぴらに始めるんじゃないのかねぇ。おかげで私は自来也の野郎に呼び戻されたって訳さ。はあ、早いところ気ままに飲んで打つ生活に帰りたいよ」
話す間にも巨乳の白魚のような手は器用に、そして思いの外優しく、イルカの傷口の手当てを施していく。
「あの・・・巨、綱手先生は校長先生とお知り合いなんですか?」
「ああ。自来也とはガキの頃からの付き合いだからねぇ。腐れ縁さ」
巨乳もとい、綱手は手を休める事なく若々しい顔に苦笑を閃かせた。
恩師と元教え子という関係なのか。
綱手の濃く長い睫が伏せられているのをイルカはぼんやりと見つめていたが、綱手の澄んだ緑の瞳が突然にイルカの瞳を捉えたのでイルカの心臓は跳ね上がった。
「どうだい。もう痛まないだろう?」
綱手は包帯を巻いたイルカの手にそっと労わるように自分の手を添える。
そのたおやかな仕草に何故かイルカの全身の体温が急上昇する。
「あ、ありがとうございます」
「これからは気をつけるんだよ」
きゅっと釣りあがった綱手の瞳がこの時イルカを優しげに見つめながら撓んだ。
形の良い艶やかな赤い唇も気持ち良く口角が上がる。
綱手の鮮やかな笑顔にイルカは見惚れてしまった。
それからはふわふわと雲の上を歩くようにしてイルカは保健室を後にした。
男への免疫ならこれでもかというほど免疫力が高まったイルカであったが、男子校、加えて周りが総ホモという悪環境の中で女に対しての免疫は限りなく0に近い。
イルカはこの一件だけであっけなく綱手に惚れてしまったのだった。
***************
「だって、綱手先生、可愛いし。おっぱいでかいし・・・」
今の状況をすっかり忘れ、イルカは再び夢見ごこちになっていた。
カカシは開いた口が塞がらず長い間イルカの緩みきった顔を眺めていた。
「・・・・・それだけで?惚れちゃったの?」
「え?うん」
今度はイルカが訝しむほどの長い間、カカシは口を開けっ放しでイルカの顔を凝視していた。
「乳かよ!!」
イルカに馬乗りになったままこの世の終わりだとでもいうように頭を抱えるカカシにイルカは酷く驚いた。
いつもは飄々を通り越してのんびりとしたおねえ口調で喋るカカシしかイルカは知らなかったので、こんなに大声を出せるのかと変な所でイルカは感心する。
「イルカ!!よく見てよ!!俺にだってこんな可愛らしい乳があるでしょ!!!」
イルカの上でカカシはワイシャツを勢いよく脱ぎ捨てた。
「イルカにだってこんなに可愛い乳があるのに!これ以上どうして乳が必要なの?!!」
「やーめーろー!!!」
叫びながらカカシは両手でイルカの乳首をクリクリと指の腹で擦り合わせるように刺激してくる。
「俺はイルカの可愛い乳首で大満足なのに」
カカシはイルカの尖り始めた肉の粒を乳輪ごと指で摘み上げると押し潰すように舌先を強く当ててきた。
「いっ、あっ・・!」
何度も肌を合わせてカカシに執拗に開発をされて、今や上半身の愛撫だけでイルカの性器は硬く形を変えるようになってしまった。剥き出しにされたイルカのペニスは既に力強く天井を向きカカシの腹筋に先走りの蜜を擦りつけている。
「ちっが・・、違う!!」
流されそうになっていたイルカは渾身の力を振り絞りカカシの頭を自分の胸から引き剥がした。
「俺が言ってるのは乳首じゃなくて乳房!!柔らかくてまるい女の胸だっつの!!!」
「・・・あ、そう」
カカシがいきなり無表情になったのにイルカは怯む。
「はいはい。女の乳ね。全くイルカは我侭なんだからー」
再びイルカに馬乗りになったままカカシは上体を起こすと素早く印を結ぶ。
突然吹き上がった白煙にイルカがゲホゲホと咳き込んでいると煙の向こうから聞きなれない鈴を転がすような声がした。
「ほら、これでどう?」
「おま・・・!えげつない真似すんじゃねえよ!!」
イルカは文字通り目を剥いた。
イルカの上では柔らかそうな長い銀髪を持った涼しげな顔立ちの美女が馬乗りになっていたのだ。トップレスで。
「ほら、このまま裸の上にエプロン着たりとか、裸の上にワイシャツだけ羽織るとか、やったげようか?」
女体化したカカシは女の手には少し余るくらいの形のよい乳房をイルカの前でゆさゆさと持ち上げて見せる。
「カカシ!ふざ・・・!ふ、ふざけるなよ・・・」
語尾の勢いが萎む。
ちょっとイルカは想像してしまった。
はっきり言えばカカシの顔は嫌いではないのだ。
端整すぎる顔立ちに見惚れる事もしばしば。そんな事は死んでもカカシには言ったりはしないが。
そのイルカ好みの顔立ちそのままの美女が現れたので内心イルカは穏やかでは無い。
カカシは稼ぎも良いし、家事は完璧、昼夜構わず獣になるが基本的にはよく気がついて優しい。それが女なら最高じゃないか。
「ほら、イルカの大好きなおっぱいだよー」
カカシはイルカの右手を取るとむに、と自分の左胸に押し当てた。見た目通りに柔らかい。
(うっ・・・)
やはりイルカだって健康な男子だ。しかも生まれて初めて女の(まあ、カカシのだが)柔らかい胸を触ってしまい、カカシの股間の下に押し潰されていたペニスが更に鎌首をもたげようと硬度を増してしまった。
それに気付いたカカシはイルカを見下ろしながら薄く笑みを浮かべる。
「ふふ、そういう分かりやすい所が可愛いよねえ」
銀髪美女カカシは薄目で笑いながらイルカにキスを仕掛けてきた。
「う、ん・・・」
(や・・・柔らかい・・・)
普段のカカシの唇だって驚くほどしっとりとしていて柔らかいが、このカカシの唇は全くの別物だ。我が物顔でイルカの口内を蹂躙する舌は普段のカカシと変わりが無いのだが、カカシの背中にイルカが手を回すとなんとすっぽりとカカシの身体がイルカの腕の中に収まる。
いつもは広いカカシの背中にイルカがしがみ付く格好なのに。
今自分の腕に女の体を抱いているのだと、イルカはじわりと実感した。
まあそうは言っても、主導権はいつも通りカカシでイルカは銀髪美女カカシに対して相変らず受け身だった。
カカシが舌先でイルカのペニスの先端をチロチロとくすぐっただけで何とイルカは達してしまった。
「ふふ、イルカいつもより早いね。興奮してる?」
思い切りカカシの顔に放ってしまった。
そのカカシは顔面で受け止めたイルカの精子を指先で拭っては味わうように口に含んでいるではないか。
(エ、エロイ・・・・!!!)
まるで生でAVを見ているようだ。その光景だけで達したばかりのイルカの性器が再び硬くなり始める。
もう制御できない自分の身体が恥ずかしくてしょうが無い。
「天国に連れて行ってあげるから」
カカシがふふふと笑う。
(と、とうとう俺も童貞を捨てる日が・・・・)
相手はカカシだがこの際目を瞑ろう。イルカは思わずゴクリと生唾を飲み込む。
カカシは腰骨にかろうじて引っ掛かっていたスラックスを下着ごとストンと下ろした。
そのカカシの下半身にイルカは目を奪われる。
「何だよそれ!!」
なんと、銀髪美女カカシの股間にはイルカが見慣れてしまったペニスがいつも通りの角度で天に向かってそびえ立っていたのだ。
「何って。イルカが大好きな俺のチンコです」
「ああああーーー!!!嫌だーーー!!うわああーー!!」
天国から地獄に突き落とされたイルカはもう恐慌状態に陥っている。
「何よ、もう。イルカの好きなおっぱいとチンコを同時に楽しめて二倍お得でしょ。これ以上我侭言わないでよねー」
カカシは女の細腕で楽々とイルカの膝裏を押し上げてイルカの身体を二つ折りにする。
女でも上忍。イルカの抵抗はあっさりと封じられた。
「や、や、やめ・・!う、あっ」
カカシは襞の一つ一つに唾液を絡めながらイルカの後口を解しにかかった。
自分の足の間から自分のアナルに舌を這わせる銀髪美女がもろに見えてイルカの頭は沸騰しそうだ。
いつの間にか入り口を浅く出入りしていた舌はカカシのほっそりとした指と入れ替わっている。
女の細い指はスルリとイルカの肉襞の中に潜り込み粘膜を柔らかく擦り上げる。
「んっ・・、ん!あ・・・」
最早抵抗する気力は完全に無くなっている。
潤滑剤が足されたのかクチュクチュと後口から水音が立ち始めた。カカシの指は三本に増やされて肉襞を押し広げるように何度も出し入れされる。
気持ちがいい。気持ちは良いのだが。
「女の指じゃイルカのいい所に届かないよねえ」
カカシはイルカのアナルを攻める手を休めずにニコリと微笑む。カアとイルカの顔は一気に火照ったがどうしても物欲しげに揺れる腰を止める事が出来ない。
「やっぱり女の身体じゃ物足りないでしょ?」
すこぶる機嫌良さそうにカカシはイルカの中から指を引き抜く。
入れ替わりに怒張したペニスをカカシはイルカの最奥まで一気に押し込んだ。
「あーーーー!!!」
カカシの肉の棒は思い切りイルカの前立腺を擦り上げた。
その後はカカシは焦らす事などせずにガツガツとイルカの後口に猛った性器を突き入れあっという間にイルカの前を弾けさせた。
「今日はほんと、イルカはイクの早いねえ」
言いながらよいしょと細い肩にカカシはイルカの両足を担ぎなおす。
イルカはあっけなく二度目の射精をしてしまったがイルカの中に収まっているカカシのペニスは未だ硬度を保ったままだ。
「や、まて・・・!カ・・っ!!」
「それじゃあ、今日は抜かずの四発で。ふふ、サービスするね」
ちなみにカカシは一度もイッていない。
「ああぁーーーーーっ!!」
イルカが意識を取り戻した時には既に夕方だった。
別れ話がこじれて(?)カカシもイルカもその日は無断で欠勤欠席したのであった。
銀髪美女カカシに思う様突き上げられてイルカは自分が何度達したのか覚えていない。
男どころか女にまで(カカシだが)釜を掘られてしまった衝撃はイルカを打ちのめした。
絆されて一緒に居ることを承諾してしまったイルカだったが、やはりカカシのような変態は自分の手に負えない。
「・・・やっぱり、俺には。綱手先生しか居ない!!」
脇道に反れまくったイルカの人生を誰にも恥じる事の無い真っ直ぐな道筋に軌道修正してくれるのは、若く美しく、優しい巨乳の綱手を置いて他には居ない!!
そう思ったらいても立っても居られなかった。
「絶対に今日告白する!!」
そして晴れて正しい交際をスタートさせるのだ。
(一緒に通学しちゃったりして、へへ。しかも、綱手先生に毎日弁当作ってもらっちゃったりして!!して!!!)
夢見がちのイルカの足元はまたもや雲の上を歩いているかのように覚束なくなる。
それが正しい交際というのなら、イルカは既にカカシとバッチリ正しい交際をしているのだがイルカはそれに気付いていない。
軋む身体に鞭打ちイルカは今朝カカシに剥ぎ取られた制服をもう一度着用する。
そのカカシは夕飯の買出しにでも行ったのか姿が見えなかった。
(チャンス・・!)
天までイルカに味方をしている。これはもう今日告白しろという神の啓示に違いない。
イルカの思い込みはどんどこ加速する。
カカシのアパートから歩いて数分の忍術学園に向かいイルカは猛ダッシュした。
「・・・どうした。血相を変えて」
保健室の入り口で息を乱して仁王立ちしているイルカにデスクで書き物をしていた綱手は目を見開いた。
「つ、綱手先生!俺・・・!」
「また怪我でもしたのか」
「違います!!」
イルカはぶんぶんと頭を振る。
「じゃあ、なんだ?」
うん?と綱手は小首を傾げて腕組をした。その組んだ腕の上には豊満な乳房が二つ重そうに乗っている。
(可愛い・・・。でかい・・・)
イルカの脳内はポワンと桃色になる。
「あの、俺・・・。綱手先生の事がス・・・ス・・・・」
「ス、素股!!」
その時一番聞きたくなかった声がイルカの鼓膜を叩いた。
イルカは口から心臓を吐き出しそうになる。
いつ現れたのか、カカシはあっという間に綱手の前でイルカを羽交い絞めにしてしまった。
カカシの手元でガサガサいうビニール袋からは長葱が頭を覗かせ、その中には豚のロースやら生姜の塊やら1/2にカットされたキャベツが入っている。今夜は豚の生姜焼きらしい。
「タ・・・、タヌキノキンタマ」
「しりとりじゃありません!!」
カカシの下品な横槍を動じる事なく返す綱手にイルカは思わず突っ込んでしまった。
いざ告白しようというときにカカシが現れ、しかも天然ボケ2(カカシ・綱手)、ツッコミ1(イルカ)という心身ともに疲れる状況にイルカは追い込まれた。
こういう場合は時間が経つほどに話がややこしくなるのだ。
「俺!綱手先生の事が好きです!!俺と付き合ってください!!」
イルカはカカシに羽交い絞めされたまま現状を打破すべく強行突破した。
「・・・ほお」
対して綱手の反応は薄かった。
「イルカの馬鹿!浮気者!!今日一日かけて俺のチンコを食べさせてあげたのにまだ綱手先生の乳がいいって言うの!!!」
「ば、馬鹿野郎!!綱手先生の前で変な事言うな!!!」
「・・・ほおお」
イルカは焦った。
これ以上カカシの馬鹿が変な事を口走って綱手にホモだと思われてしまっては大変困る。
「綱手先生!俺は本気で綱手先生の事が好きなんです!ゆっくり愛を育んで、いつかは温かい家庭を一緒に!」
「イルカ!!しっかりしてよ!!イルカは三度の飯より俺のチンコが好きな受けっ子でしょ!!目を覚まして!!」
「・・・ほおお〜」
すっかりカカシとイルカの掛け合いを観戦する態勢に入っている綱手を前にイルカの焦りはピークに達した。
「綱手先生!!俺の子を産んでください!!!」
「そんなの無理だよ!!」
カカシの叫びにイルカは思わずカカシの顔を振り返ってしまった。
「・・・へ?なんで?」
「この人は若作りしているけど本当は自来也校長と思いっきりタメの50代で生理なんかとっくに上がっちゃってるんだから!!このババアがイルカの子供を産むなんて絶対無理!!!」
カカシが言い放った瞬間、室温が一気に五度ほど低下した。
本能的に、イルカは全身に鳥肌を立てる。
「良く言った。カカシ」
再び前方にイルカが首をめぐらせると、指の関節をバキバキ鳴らしながら綱手がゆらりと立ち上がるのが見えた。
「よくもまあ、この私に言ってくれたもんだねえ。お前が鼻を垂らしていた頃から面倒を見てやっているのに。恩知らずの行儀の悪いガキは躾直さないとねえ・・・・」
綱手の荒れ狂う怒りのチャクラを前にイルカも、あのカカシすら逃げる事も出来ずに足が床に凍りつく。
あの状況で何とかイルカを自分の背後に庇ったカカシはさすがだったというべきか・・・。
イルカ好みの綺麗な男前の顔が赤く腫れ上がっている。
カカシの頬の温くなった冷却シートをイルカは甲斐甲斐しく取り替える。
あの後、綱手の重いボディーブローを食らったカカシは昏倒した。そのカカシの胸倉を容赦なく持ち上げると(物凄い怪力だった)綱手は数回カカシに往復ビンタを食らわせたのだった。
カカシの身体をぼろ切れのように廊下に放り投げると、
「色気づいてるんじゃないよ!ガキが!」
とイルカに言い捨て綱手はぴしゃりと保健室の戸を閉めた。
イルカの恋はあっけなく散った。
こんなに弱りきったカカシをイルカは初めて見る。
意識はあるが身体を起こす事も出来ずに力無くベッドの上に横たわったままだ。
「ご、ごめんな。カカシ・・・・」
イルカのせいというよりも自滅した感が否めないカカシであったが、あの地獄の魔王のような怪女(酷)を前にイルカを庇ってくれたのだ。恋に浮かれて一度は別れを切り出したイルカだったが、結局はカカシの隣に未だ居る。
よしよし、とイルカはカカシの頭を撫でてやる。
「イルカが優しくしてくれて、嬉しい」
力無く微笑みながらそんなことを言うカカシを前にイルカの胸が何故かぎゅうと苦しくなり息が詰まった。
「あ、れ・・・?」
「なあに」
「なんか、心臓が痛い・・・・」
ポフンとイルカはカカシのベッドに突っ伏して顔を伏せた。
ぎゅうぎゅうと心臓を雑巾搾りされているみたいだ。息苦しくなって上手く呼吸できない。
「ええー、大丈夫?イルカも疲れたんじゃない?このまま一緒に寝ようよ」
「そう、か・・・・?そうかな」
カカシが身体を捩って空けたスペースにイルカはもぞもぞと潜り込んだ。
まだ体が痛むだろうにカカシは何とか身体を横向きにするとイルカを腕の中に抱き込む。
冷却シートを両頬に貼り付けたまま嬉しそうに笑うカカシを見ると更にイルカの胸はぎゅぎゅぎゅと締め付けられる。
「・・・・俺、やっぱり。具合悪いみたい・・・」
「本当?たーいへん。もう寝ようね〜」
はあふうと苦しげに息をするイルカをカカシは更にきつく抱きこんだ。
なんだかんだ大騒ぎしながらもイルカの不毛なホモライフは当分続きそうなのだった。