5
カラリと部屋の窓が開いた。ちなみに窓は二階にあるのだが、たいした問題ではない。
「・・・全く、ちょっと目を離せば・・・」
カカシは剣呑な光を目に宿しながら部屋に足を踏み入れる。
「くっさー。鼻曲がりそう」
室内に充満するむっとする青臭い匂い。自分や、好きな者の匂いならともかく他人の精の匂いなんか嗅ぎたくない。
八畳ほどの部屋に七人の生徒が折り重なって眠りこけている。全裸で。
仰向けで意識を失っているイルカに近づき体に纏わり付いている体液を調べる。わずかに滲むチャクラに神経を集中させ、体液の主を探る。
「ゲンマ、ライドウ、アオバ、コテツ、イズモ・・・。全員でまわしやがって」
ハヤテに目を向けると、下肢が白く染まっている。
「・・・ハヤテは受けっ子か」
カカシはおもむろに拳を振り上げる。
どかばきごす、と鈍い音をさせて五人の顔面に一発ずつ拳を打ち込む。もともと意識は無い五人だったが、再び意識を手放しそれぞれ畳の上に沈んだ。
「ハヤテ、ハヤテ」
カカシはハヤテを軽く揺さぶる。瞼を微かに震わせてハヤテはゆっくりと目を開いた。
「お前、平気か?」
「・・・カカシ先生」
ハヤテは頷きながら上体を起こした。
「あのさ・・・なんで、イルカがこんな目に遭ってんの」
「・・・すみません。私が巻き込んでしまいました・・・」
カカシの普段見られない眼光の鋭さに、ハヤテの全身にはじっとりと汗が滲んだ。
「あのねえ・・・。この子、俺の最近のヒットでお気に入りなの。だから次から遊ぶ時は面子から外してね」
ハヤテは無言でコクコク頷く。
カカシはスパン!と押入れの襖を開け、中から清潔なシーツを引っ張り出すとイルカの全身を包み込んだ。
「イルカは今日で退寮させるから」
ハヤテに振り向きざま告げると、イルカをお姫様抱っこしたままで軽やかにカカシは窓枠を蹴り姿を消した。
(こ、怖かった・・・)
ハヤテは大きく息を吐いて全身の力を抜いた。
でも・・・
「何だか、羨ましい・・・」
ぐるりと部屋を見回すと、自分のセフレの達が股間を晒したまま気絶している間抜けな風景が目に飛び込んでくる。
ハヤテは小さく溜め息をついた。
眠りから覚めると、思ったよりも身体は楽だった。
全裸で部屋に転がっていたはずなのに、浴衣を着せられ身体には清潔なシーツをかけられている。
(ここ、何処・・・)
ぼんやりと視線を漂わせ、天井に目が止まる。見覚えのある天井。
―――カカシの部屋だ。
「やだっ!嫌だあっ!!」
「あー、こらこら。待ちなさいって」
ぎしりと全身が悲鳴を上げるのも構わずにイルカはベッドから飛び降りようとする。カカシは背後からイルカを抱きすくめ、もんどり打ってベッドに沈み込んだ。
「無茶しないの。身体辛いでしょ?」
「ヤダ!何で!?離せっ!!」
軽く錯乱状態になるイルカをカカシは無言で抱きしめ続ける。
「あ、あんたのせいだっ!みんな、俺に好き勝手して!」
イルカの食いしばった歯の間から嗚咽が漏れ出す。カカシは腕の力を緩めず、イルカをしばらく横抱きにしたままでいた。
「もっと早くに気付けばよかった。ごめんね」
「俺はっ!あんたとした時も嫌だった!」
「俺は自分がした事は謝んないよ。だって、イルカとずっとしたかったんだもーん」
「!!!!」
怒りのあまりイルカは絶句する。
イルカは思い切り全身に力を入れてカカシの拘束から逃れようとするが、カカシの腕はびくともしない。もがくイルカを涼しい顔をして抱きしめながら、カカシはのんびり言った。
「イルカ、今日から一緒に暮らそうね」
「はあ!!?」
イルカは思い切り首を捻ってカカシの顔を見上げる。数日振りに見るカカシの素顔は、むかつくがやっぱり男前だった。
「はい、二択です。今まで通り寮で暮らして今日の五人に好き勝手挿され続けるのと、今日から俺と暮らして俺一人に挿されるのとどっちがいい?」
「結局どっちでも挿されるじゃねえかっ!」
元気を取り戻して噛み付き始めたイルカにカカシは目を細める。
「あはは、ほんとだ。実はもう、退寮の手続きしてきちゃったんだけどね♪」
「はあああ!!?」
「イルカの荷物も運んどいたから」
「・・・・・」
口が半開きになったままイルカは固まった。カカシの思いもよらない実力行使に、なんと言ってやれば良いか咄嗟に言葉が出てこない。
そんなイルカを他所に、少しカカシの声音が真剣味を帯びる。
「ね、俺が傍にいる時は守ってあげる。危ない目に遭ったら俺の事を呼ぶんだよ?」
「・・・何で、あんたが」
真剣な表情はほんの一瞬で、
「一回助けてあげたら一発やらせてね」
へらりと、またカカシはいつものふざけた調子に戻る。
「ぜっっ・・・たい嫌だッ!!!ふざけんな!死ね!ホモ!変態!」
淀みなく溢れ出る罵詈雑言にカカシは大仰に溜め息をつく。
「イルカは口が悪いねえ」
フン!とカカシの腕の中に拘束されたままイルカは鼻息を荒くする。
「あと一つ、聞いておくけど。好き勝手されたのは俺以外に今日の五人だけ?」
嘘のつけないイルカはぎくりと身体を強張らせる。
「だれ?」
込められる腕の力に息が詰まりそうになる。イルカは観念した。
「あんたが、俺に無茶な事するから。・・・俺、保健室に運び込まれて・・・」
「・・・保健室?」
(カブトか!!あんの変態エロ保険医!!!)
自分の事を思い切り棚に上げてカカシは毒づいた。
カカシは突然腕の戒めを解き、イルカを自分の下に組み敷いた。
「!!」
瞬時にイルカの全身に緊張が走る。
「ね、そろそろ自覚した?」
「・・・?」
不安に瞳を揺らしながらもイルカはあどけなく小首を傾げる。
そんなイルカを前にカカシは溜め息をつく。
カカシはイルカの両腕を頭の上で易々と一つにまとめると、自分の下肢で体重をかけイルカの下半身の動きを封じる。
ますます身体を硬くするイルカに構わず、カカシはイルカの耳朶に口を寄せべろりと舐め上げた。
イルカは鋭く息を吸い込み身体をびくつかせる。
ちゅうと耳朶に吸い付きながら、片手を浴衣の合わせ目に忍ばせる。まだ柔らかい乳首を探り当てると指の爪でカリとその先端を引っかく。
「ああっ!」
イルカは堪らず高く鳴いた。
イルカの反応にカカシは再び溜め息をつく。その吐息すらイルカの四肢を震わせる。
「ね、分かった?あんた、嫌でも触られると感じちゃうでしょ?感じやすいんだよ。自覚して」
カカシが何を言いたいのか分からない。上気した顔のままイルカはじっとカカシを見つめる。
「分かってる?そんな顔とか、男を煽るんだよ」
わかんねーよ!馬鹿!
と、毒つきながらもさわさわと脇腹をずっと摩られて、イルカは声を漏らさないようにするだけで精一杯だ。
「あのね、身体に触られちゃうと抵抗できなくなるでしょ?気持ち良過ぎて」
確かに。特に今日は。
物凄く驚いて不本意だったのに、ハヤテを押し退ける事が出来なかった。
「俺が触る分には思い切り感じてくれて良いんだけどねえ。・・・・組み敷かれたら最後だと思って。この学校、もう分かったと思うけど周りはみんなホモばっかだから。気をつけないとあっという間に全校生徒でまわされちゃうよ〜?そんなの嫌でしょ?」
そんなの絶対嫌だ。
一生懸命イルカは頷いた。
「今日と明日は身体を休めるとして、明後日から体術の特訓をするよー」
「は・・・?」
「傍にいる時は助けてあげてもいいけどねえ。ある程度自分の身は自分で守れた方がいいでしょ?」
「・・・・」
「そうと決まれば今日と明日はゆっくり休まなきゃね!」
決まればも何もイルカはうんともすんとも言っていないのだが、カカシは呆けたままのイルカをごろりと転がし、また後ろから抱きすくめる。
イルカの尻にごりと嫌な感触がした。
「!!!た!勃ってる・・・!!」
カカシの雄に怖れをなし、イルカはあわあわと逃げを打とうとするが、また同じ体勢でがっちり腕を回され少しもカカシとの身体の間に隙間は開かない。
「あははー、さっきので勃っちゃった。俺も健康な男の子だもん。でも今日と明日は絶対手ぇ出さないから。そこまでは無茶させないよ」
カカシはますます身体を密着させ、イルカの項に鼻を埋めてくる。
身体にカカシの両手両足が絡みついて、イルカが自由に動かせるのは足の指くらいだ。
(は、早くこいつから体術習って、強くなって、こいつぶっ飛ばしてやる!!)
カカシを師とする限り、どうしたって師であるカカシをぶっ飛ばす事は無理だろう。
頭の足りないイルカの受難は続く。
ACT・4へ続く!