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清潔なシーツの上を肌が滑る感触が心地いい。
「んー・・・」
寝返りを打とうとして、自分の身体ががっちりと背後から二本の腕で拘束されているのにイルカは気付いた。
自分が置かれている状況がすぐには飲み込めず、イルカはしばらくぼんやりと宙を見つめていた。
見慣れてしまった室内。
カカシの寝室だ。
ということはこの二本の生っ白い腕はカカシの腕だ。
このシチュエーションであればお決まりのように自分は全裸だ。当然カカシも全裸だろう。
いつの間にこの場に移動したのか、イルカは記憶を手繰り寄せていくとともにドンドコ気分はへこんでいった。
早朝のガイの攻撃をかわしたと思ったらカカシに絡まれ、理不尽に緊縛の上空き教室に放置。
デイダラに散々ヤラれた後アスマに救出され、何故か再びカカシが登場。
あろうことかアスマの前でカカシにより射精させられて、その後は意識が途切れがちで覚えてはいないが・・・・。
きっとこの下肢の重さはカカシの馬鹿がまた好き勝手に突っ込んだ所為だろう。
もう日はとっぷりと暮れていた。
「くっそー・・・」
何度こんな目にあっても慣れる事なんかない。
いや、身体はどんどん馴れされてきている。
ただ無理矢理に快楽を与えられる度に、頭の中で信号が赤く点滅するのだ。
最初は抵抗していても最後には行為に溺れてしまう自分が怖い。
涙がせり上がって来て、鼻水もずるリと出てくる。
「俺・・・どうなっちゃうんだろ」
こんな生活がこれからも続いたら。
思いっきり鼻水を啜り上げるとイルカはカカシの腕の拘束から抜け出そうと試みた。
ずり、と上に伸び上がるとあっけなく拘束は緩み、カカシの腕はイルカの体の上を滑り落ちた。
それでもカカシの両腕はイルカの腰を抱え込むようにして止まる。
上体だけを起こしてイルカは背後を振り返った。
見下ろせば自分の尻にしがみ付いてカカシが眠っている。
「・・・・」
眠っていてさえ自分の尻から離れようとしないホモ野郎に呆れながらもイルカは珍しいカカシの寝顔をまじまじと見た。
いつも目元が眠たげに見えるのは、くっきりしすぎた二重の所為だったのか。
目の縁は銀色の睫に縁取られている。
(睫、長・・・)
鼻筋はスッと通り、薄い唇はその細い顎とバランスが取れている。
浅黒い肌の自分とは正反対にカカシの肌は真っ白だ。
まるで出来すぎたマネキンだ。
普段の奇行の方に気を取られてあまり意識していなかったが、カカシは黙っていればかなり良い男なのだ。
ホモだが。
自分の腰の辺りに触れる銀髪が、認めたくは無いが、認めたくは無いがするするとして気持ちが良い。
思わずイルカはその髪を手で梳いた。
「んふ」
その気色の悪い声にビクリと大袈裟な程にイルカの手は揺れた。
「んーふふふ。イルカが自分から俺に触ってくれるなんて初めてじゃない〜?」
「・・・っ!!寝たふりかっ!!」
イルカがベッドから飛び降りるよりも先にカカシはイルカの腰に回した腕に力を込めてその動きを封じる。
「うううぅーーっ!!」
イルカが唸ろうが喚こうがカカシの腕に思い切り爪を立てようが、カカシは構わずシーツの中にイルカを引きずり込んだ。
向かい合わせに抱きすくめられて、イルカは赤と蒼の双眸にじっと覗き込まれる。
「好きなだけ触っていーよ」
「絶対触んねえ!!」
顔のまん前で唾を飛ばしギャンギャンと吠え立てるイルカに対して、カカシは何が嬉しいのか気味が悪いほどの笑顔だ。
こんな妙な顔をしたカカシを、イルカは初めて見る。
「変な顔しやがって!」
「ひっどーい。結構俺って、もてるのよ?」
「知るか!」
カカシの切れ長の目が弓なりに撓むのを見てぐっとイルカの息が詰まる。
「可愛い顔しちゃって」
「どんな顔だよ!」
口を薄く開けてカカシが顔を近づけてきたので、イルカはギョッとして目を剥いた。
「なっ、何する・・!」
「んー、消毒消毒」
背中に回されたカカシの腕に力が篭り、イルカとカカシの身体は隙間が無いほどに密着する。
「なんだ、それ!」
「うん、髭がちょっとね」
意味不明なことを言いながらカカシは更にイルカに顔を近づけてくる。
「舌噛み切るぞ、こら!」
「イルカとキスしながら死ねるなんて、本望だなー」
顔を背けようとしてイルカが天井を向くと、カカシは真上から覆い被さるようにして唇を塞いできた。
「んむーー!」
髪の毛を思い切り引っ張ってもカカシはびくともしない。
スルリと脇腹を撫で上げられて、イルカが思わず息を呑めばその隙間からカカシの熱い舌が口内に押し入ってきた。
「んっ・・・!ん・・」
逃げるイルカの舌をカカシの舌は難なく絡め取り吸い上げてくる。
カカシは執拗に舌を絡めてきて、どちらの物とも知れない唾液を飲み込むだけでイルカは精一杯だった。
上顎をくすぐるように舌先でなぞっては再びイルカの舌をすくい上げ、カカシは自分の口内に引き込むように吸い上げる。
長いキスから解放されて、イルカの息は上がっていた。
「もう、煙草の味がしない」
「・・?」
「・・・覚えてない?なら、いいのいいの」
ちゅく、とカカシがイルカの首筋に吸い付く。
「くっ・・」
カカシの頭を引き離そうとしても、既にイルカの腕には力が入らない。
舌先でイルカの首筋をくすぐりながらカカシはどんどんと下に身体をずらしていく。
鎖骨を甘噛みして、さらに下位に移動する。
「あ、く・・・」
「可愛い。もう硬くなってる」
唇で挟み込むようにして、カカシは器用に乳首の先端だけを舌先で嬲る。
もう片方の乳首は指の腹を擦り合わせるようにしてコリコリと揉んでやると、すぐさま同じように硬く尖った。
「んっ・・あ」
イルカの腰がもどかしげに揺れ始める。
自分の腹に時折触れるイルカのペニスは既に硬く芯を持ち始めている。
カカシはぐっと腹をイルカの腰に押し当てて揺れるのを押さえる。
「胸だけで何処まで大きくなるかな」
キュウと強めに指でイルカの乳首を摘み上げればビクリと腹の下でイルカの性器が震えた。
カカシのペニスもイルカに負けないほどに硬く形を変え始めている。
イルカには勝手に動くことを許さずに、カカシは自分のペニスをイルカの太腿に擦りつけて更に硬く尖らせた。
体を軽く上下に揺すりながらカカシはイルカの胸の尖りをきつく嬲る。
軽く何度も歯を立てては、クリクリと擦るようにして指の腹で愛撫を加え続ける。
先に根を上げたのはイルカだった。
「もっ・・・なんで!胸ばっか・・」
「・・・胸ばっかり?」
乳首への愛撫を続けながら赤い舌先をちらつかせて、カカシがイルカを見上げる。
イルカは自分の頬が一気に熱を持つのを感じた。
「じゃあ・・・。こっちもしてあげるね」
「やっ・・・」
まるで強請るような物言いをしてしまい、羞恥のあまりイルカの頭は沸騰してしまいそうだ。
それでもカカシの手がイルカの性器を掴んだ時、期待するように腰をカカシに向けてイルカは突き上げてしまうのを押さえられなかった。
「あれ・・。いつもより、おっきいね」
「ばっ・・!黙れっ・・!」
堪らずに両腕を交差させてイルカはカカシから顔を隠す。
カカシは焦らす事はせずに蜜をたらたらと滲ませている先端を口に含んだ。
ドクンとカカシの手の中でイルカのペニスはまた大きくなる。
「うっ、うっ・・、うあ・・!」
先端の括れを舌先で擽りながらカカシは先走りの所為でヌルヌルと滑る陰茎を扱きたてる。
背をしならせてイルカの身体が跳ねる。
「も・・出るっ・・・!!」
イルカのペニスをカカシがきつく握りこむようにするとそれは一際強く脈動した。
「あーっ!!」
高く鳴き声を上げてイルカが達した。
カカシの口内に断続的にイルカの精液が叩きつけられる。
残滓を吸い取るようにカカシはきつくイルカの鈴口に吸い付く。
「あ・・あ・・」
柔らかくなったイルカの性器全体を清めるようにカカシは舌を這わせていく。
「気持ち良かった?」
顔を隠していて腕を下げ、イルカはカカシを見上げた。
覆い被さるようにして自分を見下ろしてくるカカシは、やはり、妙な顔をしていた。
「変な、顔・・・」
「まだ言うかな」
カカシが苦笑しながら顔を近づけてくる。
啄ばむように顔を全体にキスをしてくるカカシを、ついイルカは受け入れてしまった。
ハッとイルカが我に返った時にはカカシの愛撫はまたイルカの下肢に移っている。
大きく足を開かせられて腰の下にクッションを入れられると、イルカの局部はカカシの前に全てを曝け出す格好になる。
ぬるりと入り口をカカシが指の腹で撫で始める。
何かオイルを塗っているのか酷くすべりが良い。
ぐうと、カカシの長い指がイルカの窄まりを押し開いて潜り込んで来た。
「ん、ん・・・」
「痛くない?」
聞きながらもカカシはもう一本指を沿わせて挿入してくる。
ゆっくりと出し入れを繰り返しながら少しずつ奥へ奥へ、カカシの指はイルカの肉襞を辿っていく。
指は三本に増えてバラバラに動きながらイルカの身体を更に開く。
「あっ・・・!」
ヒクリとイルカの内腿が震えた。
カカシは場所もすっかり覚えてしまったイルカの前立腺をくるくると撫でるようにして指の腹で刺激してやる。
いつもよりも穏やかな刺激に、快楽に溺れきれずイルカは余計に辛い。
普段のカカシはこちらにお構いなしに、いつも嵐のようなセックスをしかけてくる。
意地悪くきつい愛撫を与えられ続けてイルカはいつも最後には意識も途切れがちになり訳が分からなくなるのだ。
快楽に溺れる自分が怖い、と思っていたが。
理性も無く行為に溺れている方が楽なのだと初めて分かった。
こうして、意識がありながらも受け入れさせられるセックスは・・・。
普段考えないことを考えすぎて、イルカは頭がぐるぐるしてきた。
イルカのつるりとした脳味噌はきっと物凄い勢いで皺が増えていることだろう。
「考え事しないでよ」
後口から指を一気に引き抜かれてブルリとイルカの腹部が震えた。
すぐさま指よりも質量のある熱がイルカの解れた蕾にあてがわれる。
「う、あ・・・」
粘膜を擦りながら押し入ってくるカカシの性器を感じてイルカの口から喘ぎとも呻きともつかない声が漏れる。
カカシはイルカの両足を肩に担ぎ上げて膝をいざりながら結合を深くしていく。
「あー・・。柔らかい、気持ちいー・・・」
薄目を開けてカカシを盗み見れば、カカシはうっとりと両目を瞑り、味わうようにゆっくりと腰を揺らしている。
最中はこんな顔をしているのか、と。
何故か再びイルカの頬に熱が集まってくる。
「あぅっ・・!」
前立腺を抉るようにカカシの先端で擦られてイルカが鋭く鳴く。
「ここ、たくさん擦ってあげるね」
大きく引き抜いたと思えばぐっと腰を落として最奥までカカシがペニスを押し込んでくる。
いつもよりも結合部から高い水音が立ち、耳を塞ぎたくなる。
ぐちゃぐちゃと穴をかき回すようにしてカカシは抽挿を繰り返す。
「あっ、あっ・・あっ」
腰に熱が集まってきてイルカは愕然とした。
もうさすがに勃たないと思っていたのに。
カカシに性器の裏を抉られるたびにイルカのペニスは緩やかに立ち上がっていく。
突き上げられる度にイルカの腹の上で揺れて、とうとう先端が濡れ始めた。
「い、ああっ!」
「ここ、もっと突いてあげる」
とうとうカカシに両足首をつかまれV字に開脚させられると、イルカは天井を向いた後口に何度も何度もカカシの猛ったペニスを突きたてられた。
「うぅ!あ、あああぁ!」
ズンと最奥を突かれてその拍子にイルカのペニスが小さく精液の塊を吐き出した。
その途端に肉襞が蠢きカカシのペニスを握りこんでくる。
「くっ・・・!」
カカシは襞を振り払うようにして大きく雁首を残して引き抜くと、再び一気にイルカの中に自身を押し込める。
「んんーーっ!!」
ビュクビュクと立て続けにイルカのペニスは精液を吐き出した。
その際の締め付けは先程の比ではなく、すぐにカカシも絶頂に追い立てられた。
「・・・・っ!!」
根元までイルカの後口に飲み込ませて、カカシは思う様イルカの中に白濁の液を注ぎこんだ。
一度達しただけだというのに、珍しくカカシの息もイルカに劣らずに上がっている。
「ああ、最高・・・・」
満足気にため息を零してカカシはぐったりと力を無くしたイルカを引き寄せる。
その手を振り払う気力もなく、イルカはなすがままにカカシの腕の中に囲われた。
「やっぱり・・・。なんていうのかな。お互い慣れてくるとどんどん良くなるんだねえ」
ああ、そうかい。
と相槌を打つ元気はイルカには無い。
しかし、息が上がるカカシも珍しいが、事後も意識があるイルカも珍しい。
こんなイタシた後の時間をどう過ごせばいいのか。
もし体力が残っていればカカシをベッドから蹴落として、二、三発ぶん殴り、すぐさま自分の部屋に帰るものを。
このように抱き抱えられたまま寝物語を語り合う仲でもあるまいに。
イルカはなんとも居心地の悪い思いをしていたが、カカシはいつもと変わらぬ様子で鼻歌交じりにイルカをベタベタと触りまくっている。
「そういえば、来週は温泉だね。一緒に露天風呂行こうね〜」
その発言に思いっきり怪訝そうな顔をしてイルカはカカシを見た。
この馬鹿は何を言っているんだか。
確かに来週イルカは温泉に行くが、それは湯治部の行事であってカカシには関係が無い。
その疑問をイルカの表情だけで読み取ったカカシはニッコリと笑った。
「湯治部の温泉旅行と学園の職員旅行を一緒にすることになったんだよ〜」
イルカの全身の血の気が瞬時に下がった。
そんなわけで、来週はイルカの貞操を巡ってのサバイバル温泉旅行(違)が開催されるのであった。