7
頭の中で釣鐘を鳴らされているようだ。うわんうわんとひっきりなしに耳鳴りがする。
「気持ち悪い・・・・」
暗闇の中、積まれた布団の隙間にすっぽりと身体がはまってしまったイルカは抜け出す事も出来ずに埃臭い部屋で既に始まった二日酔いの症状に悩まされていた。
どうにかこの部屋の外に抜け出さなければ。
しかし、四肢に力を込めるとこめかみの血管が切れそうになる。
「ううー・・・」
そしてその後には更に耳鳴りがひどくなるのだ。
頭が痛い。吐きたい。何か飲みたい。
しかしこの部屋にいる限りどうにもならない。狭い部屋ながらも布団の雪崩に遭い、部屋の隅にまで身体を押し流されたイルカにとって出口までの道のりはとてつもなく長かった。布団自体が障害物にもなっている。
布団を乗り越えようとするとかなり力が要る。であれば布団の下を潜りつつ進めばいいのではないか。
イルカは布団の隙間にずぼずぼと身体をめり込ませて芋虫のように這いながら少しずつ前進していった。
少し進むと手の先に何かが触れた。
それはさらさらとした手触りで、しかも暖かい。生き物のようだ。
生き物?!
イルカが驚き手を引くのよりも早く、物凄い力でイルカの腕を何かが掴んだ。
「ひっ・・・?!!」
ずるずるずるずるーっと、イルカは布団の中から物凄い力で一気に吸い出される。
布団から抜け出すと同時にイルカはむっとするような熱に全身を包まれた。
「やはりこの手触り、肌触り!!!俺の可愛いイルカじゃないかっっっ☆」
「ギャーーーーーーッ!!!!!」
イルカはガイの暑苦しい筋肉にガッチリと四肢を拘束されてしまった。
イルカが手に触れた物体はガイのおかっぱ頭だったのだ。
本日四度目にして最大の危機であった。
「ううっ・・・!」
思わず絶叫してしまったが、その直後にまるでバケツを被せられてガンガンと棒で突付き回されるような頭痛にイルカは悶絶する。
そういえば騒がしいガイが今日に限ってほとんど目につかなかった。どうしてこんな場所で鉢合わせしてしまったのか。
実は鼾と歯軋りに耐えかねたアスマが一時的にガイを空き部屋に放り込んでいたのだが、それをイルカが知る由もない。
知っていればどれだけ酔っ払っていようがイルカは死ぬ気でガイとの遭遇を回避しただろうが、イルカは偶然に降りかかった不幸を回避し切れなかった。
「イルカ!!こうして二人きりになるのも久しぶりだなっ☆せっかくだ!!俺と青春するかっ?!」
ガイが言う青春は油断がならない事はイルカは学習済みだ。
「結構ですっ!」
イルカは何とかガイの拘束から逃れようとするが、力を込めると本当にこめかみの血管がぶち切れてしまいそうだ。くらりとイルカは眩暈に襲われる。
自分も相当に酒臭いだろうが、ガイもかなりの酒臭さだ。巨大ななら漬に抱きしめられているようで吐き気が込み上げ、イルカの目尻に涙が浮かぶ。しらふのガイでさえあしらうのに苦労しているイルカが、万全ではない今の状況で泥酔状態のガイを退ける事はどう考えても絶望的だった。
「ははははっ!!!遠慮をすることはないぞ!!久しぶりにお互いの肉と肉をぶつけてみようじゃないかっ☆」
「い、嫌ですっ・・・!!!」
ガイの暑苦しい顔が近寄ってくる気配がしてイルカは思い切り顔を背けるも、ガイは構わずにイルカの首筋にぶちゅーとぶ厚い唇を押し当ててくる。
ザッとイルカの全身に鳥肌が立った。
ガイの言っている青春は、訓練の青春でないことは明らかだ。
ガイの脳内では性欲、食欲、睡眠欲がどれも突出する事なく横一列に並んでいる。なもんで食事に誘うような気安さでガイはセックスを相手に仕掛けてくる。ある意味、忍術学園においてガイは一番に獣に近い危険な人物なのだった。
「や、めっ・・・!!」
首筋に顔を埋めるガイの頭を押し退けようともがくと、ガイは体勢を変えずにイルカの浴衣の合わせ目を力任せに左右に開いた。
「遠慮する事はないぞ!!熱い青春☆の迸りを解放してやるのも教師の務めだっ!!!」
大きなお世話だった。だいたいにしてイルカは全く滾っても迸ってもいなかった。
せり上がる吐き気に耐え切れず顔を背けたままイルカは嘔吐した。胃液が喉を焼きゲホゲホとイルカは咳き込む。
今夜の酒はイルカの許容範囲を大幅に越えていた。
吐瀉物から饐えた匂いが立ち上る。さすがのガイもこれで萎えるかと思いきや、獣のガイはそんな事は全く意に介さなかった。
「イルカ!気にするなっ☆俺はお前の全てを受け止めるぞっ!!!」
ガイは暗闇の中で思い切り笑顔でイルカにウインクしているに違いない。ナイスガイポーズつきで。
しかし、サムアップでポーズを取っているのと反対側の手は隙無くイルカの両腕を一纏めにして軽々とイルカの頭上に押さ込んでいる。
「いやだぁっ・・・」
ガイが露わになったイルカの胸の突起に吸い付いてくる。
ぞわぞわとイルカの全身を這い回る悪寒はしつこく居座っている。
イルカの耳の中にスウと冷たい水が流れていく。
イルカは知らずに泣いていた。流れているの快楽の涙ではなく、嫌悪からくる涙だ。
身体を這い回るガイの指が気持ち悪くて仕方がない。日中にカブトに触られた時もそうだった。
触られた箇所全てに鳥肌が立つ。
どうしたことだろう。自分は快楽に弱い筈じゃなかったのか。
誰に触られたって、イルカは抵抗できないとずっと前にカカシが言っていた。
ここ数日だってカカシに触られればイルカは気持ちが良くて、訳が分からなくなって全く抵抗なんて出来なかった。
でも、今は全然気持ち良くない。
「ふっ・・ぅく・・」
口から漏れるのは身体の反射による呻き声だ。
全く反応を示さないイルカの性器を弄る事をさっさと放棄し、ガイは唾液で無理矢理イルカの後口を濡らし始めた。太い指が二本、グチュグチュと高い音を立てて機械的に尻の間を行き来する。
以前のガイとのセックスとは明らかに違う。これはイルカの意志を一切無視したレイプだ。
「カカ・・・」
名を呼びかけて、イルカの目尻から更に涙が溢れてきた。
きっとカカシは今頃、紅と一緒にいる。イルカがこんな埃臭い布団部屋でガイに犯されようとしているなど、気付きもしないだろう。
気付いたって、もともとイルカを助ける義理も理由も、カカシには無い。
イルカの胸がぎゅうと縮こまり苦しくなる。
苦しくて息が詰まる。
苦しい。辛い。
カカシが助けに来ない。
そう思っただけでイルカの頭の中に今まで感じた事が無いような悲しさ、寂しさが物凄い勢いで押し寄せてきた。
涙が後から後から沸いて出て止まらない。
ポツリと呟いたのは無意識だ。
「・・カカシ・・・」
何が起きたのかすぐには分からなかった。
イルカの全身に纏わりついていた饐えた匂い、埃の匂いが瞬時に吹き飛ばされてサアと身体の上を走る清涼な空気にイルカの呼吸は一気に楽になる。
同時に「へぶ!」といった奇妙な声と部屋の壁が震えるような大きな音が聞こえた。
暗闇に閉ざされていた布団部屋に廊下からの光が差し込む。その光に銀色が反射してイルカはまぶしくて顔を顰めた。
ガイは気を失ったのか、布団の山の下でうんともすんとも言わなくなった。
「何、で・・・?」
カカシが助けに来たのだと頭で分かっても、心が追いつかずイルカは呆けたようにカカシを見上げるばかりだった。
カカシは珍しく肩で息をしながらイルカの言葉に小さく笑った。
「約束したデショ?呼んだら、助けに来るって」
浴衣の前を軽く合わせると、吐瀉物に汚れたイルカを嫌がるでもなくカカシは正面から抱き上げた。
イルカの胸とカカシの胸が浴衣越しに合わさる。カカシの鼓動は常よりもずいぶんと早かった。
イルカの背中を優しく撫ぜながらカカシはイルカを部屋まで運ぶ。
「カカシ・・・」
「なあに」
「カカシ」
「うん、怖かったね。遅れてごめんね」
「カカシッ!!!!」
イルカは渾身の力でカカシの首にしがみ付き、うわあうわあと大声を張り上げて号泣した。
子供でもこれほどに泣くまいというくらい泣きに泣いた。
部屋に戻るまでに何人か学園の人間とすれ違ったようだがイルカは気をまわす余裕など無かった。
一度止まった涙は、それからは堰切ったように溢れ出してカカシの浴衣の襟をどんどん濡らしていく。
穏やかにイルカの背中を撫で続けるカカシの手が、イルカの中の混沌とした恐怖心や嫌悪感をゆっくりと溶かしていった。
それでもカカシの首にまわした腕の力をイルカはなかなか緩める事が出来ない。
「嫌だっ!!」
カカシが身体を離そうとするのをイルカは両腕両足をカカシの身体に巻きつけて拒否する。
「もう部屋に着いたよ」
宥めるようにポンポンと頭を叩かれて、ようやくイビキとイルカの二人部屋に戻った事にイルカは気付いた。
きちんと二組敷かれた布団の上にカカシはイルカを降ろそうとするが、イルカは子猿が親猿にしがみ付くように更に四肢に力を込める。
「やっ!!嫌だっ!!」
「イルカ・・・?」
「俺っ・・!!嫌だった!!」
布団部屋で感じた想いが強すぎて、吐き出さなければイルカの頭がパンクしてしまいそうだった。
感情の箍が外れた。
「俺、ガイ先生に触られたの嫌だった!!吐く位に気持ち悪くってっ・・!カブト先生に触られるのも寒気がした!!前と全然違う!なあ、何で?!カカシが触るみたいに全然気持ち良くなかったっ!!!」
イルカはひとしきり吠えた後、小さく嗚咽を漏らし再びぎゅうとカカシの首にしがみ付く。
うう、とカカシが呻いた。
カカシは力ずくでイルカを引き剥がすと布団の上にイルカを降ろそうとする。
「嫌だ、いや・・」
退いた体温に再び物悲しくなり、イルカは必死にカカシの腕を抱き込もうとする。
「イルカ、わかったから」
「いやだっ・・・」
必死に言い募るイルカの唇をカカシが塞いだ。
「・・・っ、ふ」
カカシはイルカをしがみ付かせたまま、ゆっくりと布団の上に横になった。
カカシの舌がイルカの口内の奥深くまで潜り込んできてイルカの舌を絡め捕る。身体の芯がビリビリと痺れるようで、キスだけでイルカの身体から強張りが解けた。
「ん・・ん・・」
口内の苦味で自分が吐いた事を思い出し、自分の身体が汚れている事がイルカは気になった。
「カカ・・・んっ・・」
しかし、カカシ口付けは深く、なかなかイルカの唇は解放されない。カカシはイルカの口内の粘膜を嬲りしきりに口蓋を舌先を尖らせてなぞってくる。
自分の性器が芯を持ち始めたことは身体を密着させているカカシにはばれている筈だ。
イルカが身動ぎすると逆にカカシは自分の腰をイルカの足の間に擦りつけてくる。それだけでビクリとイルカの背筋が跳ねた。
「はっ・・あ・・、カカシ」
濃厚なキスでイルカの口の端から溢れた唾液を舐め取りながら、カカシは首筋に舌を這わせ所々きつく吸い上げる。
「カカシ、俺、汚いから・・・・」
「汚くないよ」
鎖骨に歯を当てながらカカシはイルカの浴衣の前を開く。
「・・・今日くらいは、我慢しようと思ったんだけど」
ぼそりと呟くとカカシは舌の平を使ってイルカの胸の突起を舐めあげてきた。柔らかな肉の粒はすぐに固く尖り始める。
片側は人さし指を当て小刻みに揺らしながら、もう片方の乳首をカカシは吸い上げては舌先で転がす。
「んっ・・んっ!」
イルカは両足を突っ張らせながら断続的に寄せる快楽の波に耐える。浴衣の下には何も着けておらず、すっかりと起ち上がったイルカのペニスは先走りをカカシの浴衣に擦りつけて染みをどんどんと大きくしている。
尖りきった胸の飾りを愛撫し続けながら、カカシは舌先でイルカの腹筋の筋をなぞり臍の窪みを擽る。脇腹を撫でれば敏感に撫でられた箇所の筋肉が収縮する。
「可愛い・・・」
カカシはイルカの上半身にくまなく舌を這わせる。
直接触られる前に達してしまいそうだった。イルカは必死に気を反らそうとするが今日は何故だかいつも以上に感じてしまいカカシに触れられるままにイルカの身体はますます昂ぶっていく。
「あ、あぁ・・」
脇腹から腰骨にかけてチロチロと舌先を遊ばせながらカカシが口付けを落としていく。
イルカのペニスは触れられない事に抗議するかのようにたらたらと先端の括れから涙を流し続けている。
「先に、イカせてあげるね」
やっとカカシが性器に触れた時にはイルカは思わず腰を突き上げるようにして、カカシが作る指の輪にペニスを擦りつけた。
「あーっ!あっ・・、あうぅ!!」
カカシはイルカのペニスを片手で包み込むと先端は口内に引き入れて吐精を促すように先端の括れに舌を潜り込ませる。
カカシが頭を上下するのに合わせてイルカは堪えきれずに腰を振った。先走りの蜜の中には多分に精液が含まれており青臭い匂いが立つ。
グチャグチャと高い水音をたてながらカカシは自分の手と舌の動きを早めていく。
「っ・・あああぁっ!!!」
ぐっとカカシの口内で幹が膨らんだ後、イルカは思い切り爆ぜた。
陰茎が脈動するたびに吐き出される白濁の蜜をカカシは零さずに口内で受け止めた。
イルカは一度の吐精だけでくたりと体中の力が抜け、カカシが背中に腕を差し入れれば抵抗も無くころりとうつ伏せになった。
「な、に・・あ・・あぁ」
ぬるりと双丘の奥の窄まりを撫でられる。感触がヌルヌルとしているのは先走りが伝い流れ尻の狭間まで濡らしていたからだろう。
腰を引き上げられ、高く掲げた姿勢をとらされてイルカの陰部はカカシの前に全て晒されているだろう。それでもいつもより吐精の刺激が強くイルカの頭は働かない。
くちりと粘膜が開く音がする。
「あっ・・あっ・・」
カカシの細い指はすんなりとイルカの肛道に潜り込んで来た。
「ふ、うぅ・・・」
粘膜を何度も指の腹で撫でられ背骨に沿って甘い痺れが走る。入り口をゆっくりと押し広げながら指はもう一本増やされる。
「赤くなってるね。可哀相に・・・」
ガイに無理矢理に擦られて粘膜が腫れているのだろうか。それよりもカカシに奥まで覗き込まれているかと思うと羞恥に脳が焼かれる。
部屋の電気もつけっぱなしだったことに今更ながらイルカは気付いた。思わず下腹部に力が入りカカシの指を締め上げてしまう。しかしそうなるとますますカカシの指が強くイルカの肉襞を撫で擦る事になる。
「見るなっ・・カカ、シ・・」
腰を捩りどうにか体勢を変えようとするイルカをカカシががしりと押さえ込む。
「もっと見せて」
カカシの吐息がイルカの後口の粘膜を震わせる。
指の隙間からぬるりと入り込んだ肉の感触に思わずイルカはシーツをグシャグシャとたくし込んで握りしめる。
カカシの舌が確かな肉の弾力を持ってイルカの中にどんどん押し入ってくる。
「くっ・・は、あっ・・」
イルカの両腕は最初から上体を支えられず布団の上に投げ出されており、内股もカカシの愛撫を受けながらぶるぶると震えている。
自分の身体の下からそっとカカシを盗み見れば、胡座をかいたカカシの雄は浴衣の合わせ目を押し開き下着を汚して天井を向き伸び上がっている。抑え付けている布がひどく邪魔そうだった。
無意識にカカシの性器へ手が伸びたがこの体勢では届かない。
「あっ・・!」
カカシの性器に気を取られている内にカカシの指はイルカの前立腺にまで届いていた。
コリコリと精巣の裏を刺激されればイルカのペニスは途端に力を取り戻し始める。
「うぅーっ!!」
布団に顔を押し付けてイルカはくぐもった声をあげた。
「ちょっと、ぬめりが足りないから・・・」
蕾に指の抜き差しを繰り返しながらもカカシが後ろで衣擦れの音を立てる。
何を、とイルカが思った瞬間に指がずるりと引き抜かれ、指よりももっと質量のある熱い肉が後口に押し当てられた。
「まだ・・・入れないからね」
ぴたりとイルカの背中にカカシの裸の胸が押し付けられた。カカシが腰を上下に揺すると引き締まったイルカの双丘の間を先走りで濡れそぼったカカシのペニスがヌルヌルと行き来する。
「ん・・・」
刺激を強める為にカカシが更に強くイルカの臀部に腰を押し付けてくる。
「・・は・・・」
耳もとでカカシが今まで聞いた事の無いような艶めいた声を漏らす度に、まるで自慰の手助けでもしているかのようでイルカは顔が火照るのを感じた。
「カカシ・・」
カカシの動きを助けるようにイルカも必死に両足に力を入れて踏ん張る。それがわかったのか、艶めいた吐息の合い間にクスリとカカシが忍び笑いを漏らす。
「あ、ああ・・・」
カカシは後から手を回しイルカのペニスをゆるゆると扱く。そうしながらも自分の性器の先端を解れたイルカの肉襞の中に少しだけ潜らせた。身体を浮かせるとカカシは数度自分の怒張した性器を根元から先端に向けて力強く扱いた。
「・・・・っ・・」
イルカの背中の空気を密やかに震わせてカカシは達した。放出される迸りは溢れる事なくイルカの中に注ぎ込まれる。イルカの中に放たれたカカシの精液はとろとろと最奥に向かって流れていく。
「んんっ・・」
カカシは入り口に当てていた性器の先端をずらすと自分の精液を内部に塗りこめるように再び指を肉襞の中に潜り込ませる。
「イルカ」
指をイルカの中に埋めたまま、空いたもう片方の手でカカシはイルカの右足を掴みぐるりと旋回させた。埋められた指を軸にしてイルカはん簡単に仰向けにさせられてしまう。
「顔見てしたいから・・・」
にこ、とカカシはイルカを見下ろしながら両目を弓なりに撓ませた。頬がうっすらと上気して、額には汗が浮かんでいる。
カカシの桃色の頬と額の汗から目が離せなくなりじっと見ていると、カカシの顔が近付いてきた。
銀色の睫が伏せられていくのをぼんやり眺めつつ、イルカもそっと目を閉じる。
挿入もまだだというのに、今日はゆったりと事が進んでいく。
「ん・・・」
カカシが無心にイルカの舌と唾液を吸い上げてくる。ふわふわとした浮遊感がずっとイルカに付き纏っている。
カカシの唇も舌も柔らかくて、触れ合った場所から全身が少しずつ溶けていってしまいそうだ。
「ん、んっ・・んぅ・・」
キスを続けながら、カカシがペニスをイルカの後口に突き入れてきた。解されて、精液でぬめった後口は難無くカカシの性器を飲み込んでいく。
「んーっ・・ん、・・んぁ!」
苦しげなイルカをカカシはキスから開放してやる。
「あぁ!!あっ・・・ひぅ!」
熱い肉棒で肉襞をぞろりと擦られ、待ちかねたようにイルカは高い声で鳴き始めた。
「可愛い・・イルカ」
カカシはイルカの片足を肩に担ぎ上げると更にぐうと腰をイルカの足の間に割り込ませ結合を深くした。下生えがイルカの会陰に密着するほどに腰を押し付けると今度は雁首が抜けそうになるほどカカシは腰を引く。
イルカの肉襞はカカシのペニスを引き止めるように入り口のリングからめくりあがって顔を覗かせさえする。再び腰を押し付ければ熱い襞が奥に誘い込むように蠕動する。
「ああぁっ・・・!!」
じわじわと前立腺を擦りあげるカカシの抽挿にイルカは全身をブルブルと震わせる。
「気持ちいい・・・?」
目を潤ませながらイルカはコクコクと頷く。時折顔を歪ませながらもカカシはイルカから一時も視線を外さない。
「は、あ・・ずっとこうしてたいな」
うっとりと呟きながらカカシは緩やかに腰を揺らす。
「んーっ!!!」
ずるりと前立腺を擦りながらカカシの性器の先端が行き来する度にイルカの腹筋がひくひくと波打つ。
「やっ・・あ、あっ・・カカ、シッ」
片足を胸に付くまで折り曲げられた窮屈な姿勢のままイルカはカカシに手を伸ばす。
カカシは指を絡ませてイルカの手を握った。猛った性器を何度もイルカの尻の間に出し入れして腰を振る、そんな肉欲にまみれた行為をしている最中にカカシは恭しくイルカの指先一つ一つにそっと唇を押し当てていく。
「あーっ!!あっ・・んあぁ!」
イルカの人さし指を口に含んだままカカシは抽挿のスピードを速めていく。イルカの性器を根元から押し上げるように上向きに突き上げれば、その度にびゅくりと先端の小穴からは精液の塊が小さく噴き出す。
イルカのペニスは先走って零れた蜜で全体が濡れていた。カカシが根元までイルカの中に勢い良くペニスを突き入れるたび、イルカのペニスは弾かれるようにイルカの腹の上で揺れた。
「ヒ・・んっ・・・!!!」
ビクリと大きくイルカの身体が跳ねた。
「ああぁ―――っ!!!」
一際高い嬌声が上がるとともにイルカの張り詰めたペニスからはビュクビュクと精液が吹き上がりカカシの胸とイルカの腹を汚した。
イルカの熱い肉襞が一斉にカカシの性器全体を締め上げてくる。
カカシも堪らずに引き摺られる。
「くっ・・・・!!」
ヒクンヒクンと痙攣を繰り返すイルカを掻き抱いて、カカシはイルカの中に最後の一滴まで白濁の液を注ぎ込んだ。
「ん・・・」
カカシがイルカの後口から性器を引き抜くとグチ、と粘膜が鳴る音とともに放ったばかりの精液が逆流してきてイルカの内腿を濡らす。
生温かい感触を覚えながらもイルカは断続的に身体を震わせながら動けないでいる。
いつもであれば二度、三度、と一方的にイルカの身体を蹂躙するカカシも呆けたようにイルカの隣に身体を横たわらせた。
「こんなに、いいなんて。ビックリした・・・・」
またも一人でぼそりと呟くとカカシはイルカをぐいと抱き寄せる。
「全身グチャグチャだけど、お風呂は後でいっか・・・」
カカシはふふ、と楽しげに笑いを零すと両腕でぎゅうとイルカを抱き締めてくる。
珍しくカカシからは汗の匂いがした。でも不快じゃない。
「眠い・・・・」
今日は本当に色んな事がありすぎた。
大酒を飲んで体調不良の上に二発も抜いたのだから疲労困憊もいいところだった。
イルカはカカシの二の腕に頭を預けてとろりとまどろみ始める。
「おやすみ、イルカ」
額に張り付くイルカの髪の毛をカカシは静かに梳いてやる。
その心地良さもあいまって睡魔には抗えず、イルカは瞼を閉じた。
「イビキ先生はっ?!!」
翌朝、目覚めたイルカは一気に全身の血が引いた。
もうちょっと良いでしょ、とぎゅうぎゅう抱きしめて来るカカシからイルカは必死に逃れようとする。
「つれないなあ。恋人に対して」
「こっ、恋人っ!!!」
一気に青ざめたかと思えば今度は一気にイルカは全身を朱に染めた。
「昨夜はあんなに熱烈な告白をしてくれたのに〜。俺感激しちゃった。俺もイルカの事が大好きっ!!!」
言いながら再びぎゅうとカカシはイルカを抱きしめてくる。カカシのストレートな愛情表現にイルカは顔が火照るのを止められない。
「ば、ばかっ!イビキ先生は?!もともとこの部屋、先生の部屋なのに!!」
「イビキ先生ねえ・・・。さすがに察してくれたでしょ。髭んとこにでも行ったんじゃない」
「そ、そっか・・・・」
カアアと、ますますイルカの顔は赤らむ。
無理矢理にカカシが行為を強要したというのであればいつもの調子でイルカは喚き吠え立てただろうが、昨夜はどう考えても自分が強請ったような展開だった。イルカは全く抵抗をせずに、行為に協力さえしたのだ。
カカシを責めることなど出来ない。
顔を赤らめたままチラ、とカカシを見ればカカシは至近距離から満面の笑顔をイルカに向ける。
その喜びを抑えきれないような、それでいてだらしないヤニ下がった笑みを見ると、なんともいえない気恥ずかしさにどんどんイルカの頭が茹ってしまう。
今までが今までだっただけに、頭の中に軽い後悔と迷いが過りもする。
自分は、ノンケだったはずなのに。可愛い彼女を作る事が夢だったはずなのに。
ホモなんて、同性とセックスするなんて、自分とは関係の無い世界のはずだったのに。
ぐるぐると煩悶していると目が回りそうになる。
ふと気付けば何が面白いのか飽きる事なくカカシはイルカを見つめている。
「イルカ、だーい好き」
フワリと微笑むカカシが、これがまたイルカには眉目秀麗な良い男に見えてしまうのだからなんだか泣きたくなる。
数ヶ月に渡るカカシの強引な力技によるアプローチの結果、ノンケのイルカは変態ホモ野郎にすっかり絆されてしまったのだった・・・・・。
カカシとイルカが起きだしたのは午前九時を過ぎた頃。十時には旅館をチェックアウトする予定になっており二人は何とか風呂だけには入り、身支度を整えた。(一緒に入る入らないで当然一悶着あったのだが割愛)
正面玄関から二人が足を踏み出すとあらかた生徒も教師もそろい、続々とバスに乗り込んでいくところだった。
「おせーぞ」
アスマが煙草を咥えながらカカシとイルカに近づいてくる。
昨夜の泥酔時の記憶が全て無ければそれはそれで奈落の底まで落ち込んだだろうが、幸か不幸か鮮明に覚えておりアスマに絡んで迷惑をかけたこともイルカはばっちり覚えていた。イルカはアスマに深々と頭を下げた。
「あの、昨夜はすみませんでした」
「まったく・・・。しつこいセックスしてるんじゃねえよ、お前ら。うるせえったら」
「・・・・は?」
その返ってきた文句の内容にイルカの頭は真っ白になる。
「うふふ。イルカちゃん気持ち良さそうだったわね〜」
イルカが密かに憧れてもいた紅は意味深に微笑みながらイルカの肩を叩く。
「イルカ君。残念だわ。でもその恋を暁倶楽部は応援するわよ」
大蛇丸が脱力したイルカの手をぎゅうと握りこむ。
「イルカ!立派な受になれよ、ウン」
デイダラが元気良くイルカの背中を叩いてくる。
「俺はお前の意思を尊重する」
そういいながら通り過ぎるイビキの周りにはイビキを兄貴と慕う教職員の取り巻きが出来ていた。
「カカシ先生って、優しいんですね。ふふ」
「相変らず感度良いなあ、イルカ〜」
「二発か、羨ましいぜ〜」
ゲンマとハヤテ、その他湯治部の面々も呆然と立ち尽くすイルカになんやかんやと声をかけていく。
自分たちの部屋の隣に声が漏れてしまった、というならそれは仕方がないが旅行に参加した学園関係者全員に昨夜の事が知れ渡っているのはどういうことなのだ。
「怒んないでね、イルカ」
呆然自失のイルカをカカシは後からぎゅうと抱きしめる。ほぼ羽交い絞めで。
「えーと、昨日のセックスの一部始終をライブで学園関係者にお届けしました☆」
「はあ?!!」
「あっ!式を介して音声のみ伝達しただけだから安心してね〜」
「はああ?!!」
このまま失神してしまえたらいいのに。けれど意識が薄れる事は無くイルカは己の図太い神経を呪った。
大口を開け仰け反るイルカの前をカブトが通り過ぎる。
「イルカ君。今度またゆっくりね。具合が悪くなったらいつでもおいで」
ニッと黒い笑みを閃かせカブトは歩き去る。
「マイライヴァル☆カカシ!!今度はイルカをかけて俺と勝負だなっ!!!」
ケロリと布団部屋から生還を果たしたガイは白い歯を煌かせカカシに宣戦布告していった。
「勝負しないっての」
さすがにギクリと身体を強張らせるイルカをカカシはますますぎゅうと抱きしめる。
「ね。恋人同士だって公にすれば多少は牽制の効果あると思ったの。でも、変態保険医や筋肉馬鹿には全然効き目無いみたいだし。うちの学校、ほんとにホモだらけだからこれからもヤラレちゃわないように気をつけるんだよ。俺も全力でイルカを守るけどね!」
「う、うん・・・」
カアアと、再びイルカの頬が赤らむ。
カカシの最後の科白にカカシの勝手な行動に対しての憤りとか、羞恥心が一気に霧散する。
こうなると末期だ。
イルカは諦めの溜め息をついた。
一泊の温泉旅行を終えて、木の葉忍術学園一行はまたもとの日常へと戻っていった。
またもとの日常に戻り、イルカが学園のホモどもに尻を追い掛け回される生活も変わらずに戻ってくる。
イルカと晴れて恋人同士となったカカシが今後どういう珍妙な行動をとるか、その点もイルカが戦々恐々とする所だ。
まだ往生際悪く、イルカはカカシとの仲を後悔したりもする。
色んな出来事が巻き起こりながら、これからもイルカの青春は迷走し続けるのであった。
完