豪華な着物を宛がわれ、食べきれないほどの膳を用意され、犬猫のように溺愛される。
己の身を汚らわしく思えど、あの空間から逃げる気概もない、自分は意思の無い人形だった。
しかし、永遠に続くと思った少しずつ体が腐食していくような日々は、ある日突然に終わった。
邸の中の騒然とした空気に肌が粟立つ。こんな夜に限って口煩い使用人どもは自分の前に現れない。父から与えられた飾り刀を鞘から抜き払ったのと、毒々しい襖絵が切り裂かれたのは同じ時だった。
その二つに割られた襖絵とのこれまでの狭い世界が重なる。その襖の向こうにはの知らない新たな世界が広がっているのだと、不穏な気配を感じながらも胸がどくりと脈打った。
息を呑むの眼前には鋭利な銀が瞬いていた。一瞬目が眩む。が生まれて初めて見る銀髪が月の光を反射して鈍い光を放っていた。
は自分が置かれた状況を忘れ、しばし自ら発光しているかのような男の見事な銀髪に見惚れた。

その男は有無も言わせずにあの煌びやかな檻からを此処に連れてきた。



「良く、食べるものだ」
片方立てた膝に肩肘をつき、男はが朝食の膳を勢いよく片付けていくのを見ている。は男が住む邸へと連れられてきた。だが客間を宛がわれ、捕虜というには良すぎる待遇を受けている。男がと一緒に食事をすることはないが、こうしての元を訪れては一時を過ごしていく。
「人が食べるのを見るのがそんなに面白いか」
「ああ、面白いな」
男が端正な口元を吊り上げて声無く笑う。
あらかたが朝食を片付けると同時に男がぐいとの腕を強く引いた。
「お前・・・、昨夜だってあんなに・・・・」
「あの程度では足りん・・・」
男の低い声がの耳殻をくすぐる。そうされるとの膝は簡単に崩れる。
この客間からが出ることはほとんど無い。だらしなく夜着のままでいたのだが、その夜着はほとんど身につける暇も無く男の手で剥ぎ取られてしまう。
檻が新しくなっただけのこと。は今この男に飼われている。
「食べて、寝て、まぐわうだけか。獣と一緒だな」
「何とでもっ・・、いえ・・」
後ろから羽交い絞めにされ、衣の合わせ目から男が形の良い手をしのばせてくる。胸の飾りを擦る様に捏ねられてが息を詰めた。指の腹で弾力のある突起を転がされるとじんと痺れが背筋から腰の中央へと抜ける。知らずにの裸足の足裏が板の間を掻くように行き来する。
「父の仇を討たなくていいのか。紅蓮の姫」
男はを揶揄するように時折そう呼ぶ。出会った晩に赤い内掛けを纏っていたからそう呼ぶのだろう。
は口の端を歪め、きつく男を睨む。
自分を押し倒す男をは侮蔑をもって見上げる。対して男はの深淵を覗き込もうとするかのように瞬きもせず紫の双眸での瞳を覗き込んでくる。
がそれを遮る様に目を閉じれば、男はその均整の取れた身体をの上に重ねてきた。



あの晩。
意識が戻ると、猿轡を噛まされは見知らぬ部屋に横たわっていた。板の間に寝ていた所為で体の節々が痛む。身体を起こそうとすると両手を背中で縛られていることに気付いた。
咥えさせられた布が唾液をあらかた吸い取ってしまい口の中が乾いている。布を押し出すように舌を動かしてみると付け根が痛んだ。血の味が口の中に広がる。
手の戒めを解こうとひとしきりもがいた後に、は全身の力を抜いて再び板の間に身体を投げ出した。乾いた笑いがこみ上げてきたが、布を噛まされた口からはくぐもった声が漏れるだけだった。
此処を逃げ出して、何処に行くというのだ。
「もう、終わりか・・・?」
冷水を浴びせられたように一気にの全身の筋肉が緊張した。
耳当たりの良い低い声だが、今のには何の慰めにもならない。
いつの間に来たのか。いや、最初からこの部屋に居たのだろう。
身体を強張らせるに構わず男は背後から手を伸ばし、の肩を掴むと気遣いの欠片も無くごろりとを仰向けに転がした。背中に纏めて縛られた両腕が板の間で擦れて痛む。
明かりが無かったが月光が白々と室内を照らしていた。
男は月明かりを背にを見下ろす。暗い影の中央では鋭い紫の瞳が冷ややかな光を放っている。
生きるも死ぬも同じ事と達観したつもりだったが、いざ自分の命を握る男が目の前に現れると押さえようも無くの鼓動は早くなる。
「怯えているな」
男がの形の良い顎を指先でなぞる。男の指先はの汗で濡れていた。
「女子供は殺さぬようにという達しだが、さて。どうしたものか、な・・・」
男はの顎から掬い取った汗の玉を甘露でも含むように口元へ運んだ。
男の赤く濡れた舌が指の先を掠め蠢く様がに見えた。
赤く濡れた男の舌に目を奪われたのはほんの一瞬。部屋に満ちる静けさに再びの全身が強張る。
「紅蓮の姫。俺の舌を噛み切って見せる」
荒々しくの猿轡が顎の下に下げられると同時に男がの唇を塞いできた。
「んっ、んぅ・・!」
の唾液も舌の根に滲む血も、吐き出す息さえも、すべてを飲み込むようにして男はの口内を暴いていく。舌の根の痛みにが身体を揺らすと、男はいっそう熱心にの舌を絡め取り吸い上げる。
痛みと混乱で堅く閉じられたの眦からはとうとう涙が溢れ出した。
「そう、か弱い振りをするな。本当のお前を見せてみろ」
やっと唇を解放されて、新鮮な空気を求めて喘ぐに構わず男は着物の合わせ目を左右に勢い良く開いた。
「・・・っ!」
格子窓から差し込む月光がを残酷に照らす。
その華奢な身体に似つかわしくない、男の手に余るほどの形の良い乳房が陶器のように青白く浮かび上がっていた。その双球の頂にある尖りはの緊張を映してか既に堅く立ち上がっていた。
男は真っ直ぐにそのむねの飾りに口を近づけるといきなりきつく歯を立てた。
「ああっ・・!」
堪らずには背を反らせる。男は押し付けられる弾力ある乳房を握り潰すかのように強く掴んだ。
「いっ・・」
生理的な痛みでまたの目尻から涙が零れ落ちる。
「その激しい気性と同じく、手荒い方がお好きではないのか?紅蓮の姫」
男の勝手な物言いには必死に頭を振る。それを笑いながら男は目端で捕らえると、今度は口に含んだ胸の突起を舌先で柔らかく転がすようにする。
「あ・・ぅ・・」
の背中が再びしなる。しかし苦痛のために寄せられていた眉根は、今は解かれている。
「ずいぶんと・・可愛い声で啼く」
の胸の突起を舌で嬲る合間に笑いを含んだ声で男は言う。
「あ・・あ・・」
肉の粒を押し潰すように舌先で捏ねられるとの身体はそれに応じるように跳ねた。
男に抵抗し続けるにはは心も身体も疲れ果てていた。は容易く快楽に攫われる。
帯が解かれる。の全身が明るい月光に照らされた。全てを暴かれては男の前で羞恥に身体を震わせる。
「身体までも、美しいのだな・・・」
男の呟きには顔を背ける。早く欲望のままに自分を犯せばいい。余計な言葉などいらぬ。自分の今の姿をそう言われては居た堪れない。
「姫君は睦言はお嫌いか。気難しいお方だ・・・」
男が端正な顔に笑いを閃かせるとその顔立ちに反してなぜか凄みが増す。は肉食の獣に貪り食われているような錯覚に陥る。
男は無遠慮にの足首を掴むと大きく左右に開いた。両手を拘束されているは一切の抵抗が出来ない。
秘所が外気に晒されての下腹部に力が入る。
「物欲しそうに蠢いているぞ」
男はの足の間に身体を割り込ませ閉じられないようにする。格子窓に背を向けるようにして男は更に大きくの足を割り開く。男の眼前での秘所は余す所なく晒されているだろう。
「く・・、う・・」
男に見られていると思うと身じろぐ事を止められない。揺れるの腰を男は掴むと胡坐を組む自分の膝の上に引き寄せた。
「いや・・だ」
初めての口から拒絶の言葉が零れる。
しかし男はに構うことなく収縮を繰り返すの秘唇をそっと指の腹で撫で上げた。
「は・・、あ」
ぎゅうとの肉筒への入り口が閉まる。
男は自分の膝と腕での腰を押さえ込むようにすると、自由になった両手での秘所を責め始めた。
濡れて赤くしこる肉芽の皮を上に押し上げると、敏感な先端を男は指の腹で撫でる。
「あっ・・!あうぅっ・・!」
強すぎる刺激には叫ぶ。しかし身体は固く男に拘束されて、快楽を紛らせる事も出来ずに男の愛撫をまともに受けるしかない。
「まるで珊瑚か紅玉のようだ」
「ひっ・・、く、ああ!」
男は興奮を示すこともなく淡々と評すると、の堅く屹立した小さな肉芽を片手で扱いてはもう片方の手で先端をなで続ける。撫でられる先端から雷に貫かれたように悦楽が体の中を走り、の身体はいつしか男の力を撥ね退けるほどにがくがくと揺れ始めていた。
が堕ちていく様を男は食い入るように見つめている。
秘唇から溢れ出る蜜はの尻の狭間を伝い落ち男の衣までを濡らしている。
陰核への愛撫を続けたまま男はゆっくりとの秘唇を指で犯し始めた。ぬくぬくと出し入れしながら指の数を増やし、男はの肉襞をくまなく押すようにする。
「うう・・っ・・」
搾るような声がの口から上がった。
「ここか・・・」
の反応を探るように男が柔らかい肉の一点ばかりを指で突くようにする。男に突かれる度に足の間が焼けるように熱くなる。
「やっ・・、あ、ああぁ!」
男の指がの肉襞を上に押し上げるようにして突き上げる度には豊かな胸を揺らして背をそらせ悶えた。
宙に浮くの足はもがくように動き、足指は忙しなく曲げては伸ばされる。
「い、や・・!もう、もう・・・っ!」
男の膝の上では艶やかな黒髪を振り乱し白い裸体を激しくくねらせる。
「も、う・・!許し・・・」
涙に曇る目でが男を見上げると、残忍な笑みを浮かべていると思っていた男は明らかに自分に欲情していた。紫の双眸には情欲が揺らめいている。
玩具のように女を弄ぶ、嗜虐を好む男なのだと思っていた。
男はの秘所から指を引き抜くと衣の下だけを寛げ、怒張した剛直を引きずり出した。その肉の棒は限界までに張り詰め、先端のくぼみからは先走りの蜜を零している。黙っていれば麗人然とした男にはそぐわない、それは凶器のような長大さで天を向きそそり立っていた。
先程までの人を食った饒舌ぶりはすっかりと消え失せ、再び仰向けに転がされたを男は熱の篭った目で見下ろしている。
「あ・・・」
の膝裏を掬うようにして、男はの両膝をの胸につくまでに折り曲げる。男はの両足を肩に担ぐようにして身体をの上に重ねた。真上を向くようにされたの陰唇に男の熱く濡れた雄が押し当てられる。
「あああぁー!!」
の口から絶叫が迸る。
男の猛る雄はの肉襞を割り裂き最奥まで一息に潜り込んできた。
「あ、あ、あ・・」
息も絶え絶えには細い声を漏らす。
男はが落ち着く間も与えずに肉棒をゆっくりと出し入れし始める。その出し入れの幅はどんどんと長く深くなっていく。
「ひぃ・・・!あっ、うあぁ・・!」
剛直を押し込まれ、引き抜かれる度にの口からは嬌声が上がる。
男から与えられるのは苦痛ではない。紛れも無く快楽だった。
の肉襞は男の陰茎が突き込まれればそれを柔軟に包み込み、引き抜かれると溢れる蜜と共にきつく扱き上げる。
「くっ・・」
男の眉根が切なげに寄る。
男は腰をますます激しくの緋唇へ叩きつける。結合部からの高い水音との嬌声が室内に反響する。
の秘所は男の剛直が押し入るたびに止まる事を知らず蜜を溢れさせる。
「ああー!あうぅっ・・・!」
体が過ぎる快楽に溶けてなくなってしまいそうだ。
「名を、呼べ・・」
朦朧とする意識の中、男の声が耳の中に吹き込まれた。
「知盛と・・・」
「とも・・も、りっ・・」
の腹の中で男の雄がドクリと大きく脈打った。陰核の裏側の肉壁を強く押し上げられ、の頭の中が白く弾ける。
「あああぁーーー!」
「・・・っ・・!」
の肉襞が強く男の雄を噛み締めると同時に男はの肉襞を一際深く抉り、最奥に白濁の蜜を吐き出した。
「あ・・あ・・・」
ひくりひくりと、収縮を繰り返すの濡れた肉に搾り出されるようにして男の射精は長く続いた。の腹に男の迸りがいつまでも注がれる。
男が未だに硬く屹立している陰茎を赤く濡れたの陰唇から引き抜くと、そこから収まりきらぬ男の種が後から後から溢れ出ての内腿を濡らした。
は意識も朦朧と床に転がされたままひっそりと呼吸を繰り返していた。
両腕の戒めを解くことも着衣の乱れを直してやることもせず、男はをそのままに何も言わず去った。


それから何故か飽きもせずに知盛はを朝となく、夜となく、知盛の気が向いたときに抱く。