警告
※カカシがイルカ以外としています※
苦手な方は回れ右








心の中は静かだった。
音一つも立たない無の空間が広がるばかり。
「別れてくれませんか」
普段通りの口調で切り出すカカシをイルカは取り乱す事も無くただ黙って見つめていた。
何故なら最初からこの日を覚悟していたからだ。
イルカがカカシを愛していたのは紛れもない事実。
けれどもカカシがイルカに近づいたのは単なる気まぐれ。たまたま毛色の変わった人間が現れて珍しかったからなのだと思う。
色恋に疎くカカシの言葉を受けてはいちいちまごついていた自分をカカシは厭う事も無く、ニコニコと双眸を弓なりにしてピタリとイルカの傍にいた。しかし、それももう随分と昔の話だ。
付き合う前からカカシの身辺の華やかな噂はイルカの耳にも届いていた。
カカシにとってイルカはこれからも出会っていく男女の中の一人。単なる通過点に過ぎない。
だから二人の関係はカカシがイルカに飽きるまで。長く続く事も無いとイルカには分かっていた。
実際に付き合い始めてからもカカシの周りには自分以外の情人の影がちらついていた。
その事についてイルカがカカシを問い詰める事はなかった。
本来であれば知り合う機会も無い階級もイルカの遥か上にある忍。
取り立てて容姿が優れているわけでもない自分がカカシと付き合えた事が不思議なくらいだというのに、カカシに対して引け目を常に感じているイルカがカカシを問い詰める事など出来なかった。
始まりはカカシから。終わりもカカシから。
イルカは完全にカカシの前で受け身に終始していた。
「わかりました」
怒りもせず、泣きもせずに淡々と答えを返すイルカに、おや、とカカシは少し意外そうな顔をする。
しかしそれも一瞬。
「ごめんね」
カカシはあっさりしたものだった。
身一つで転がり込んできたイルカのアパートから、また身一つでカカシは出て行った。
イルカは引き止めなかった。
引き止める勇気も、気力も無い。
誰も居なくなった玄関にイルカはしばらく佇んでいたが、体が芯まで冷えたところで居間へと戻った。
カカシが出ていったといってもカカシがイルカの部屋を訪れる日は不規則で、この一ヶ月は全くカカシがイルカに会いに来る事も無かった。別れた直後だというのにイルカの部屋からはカカシの匂いも気配も一切しない。カカシの私物も一つも無い。
こうなると恋人同士だったのかどうかも不確かだ。
イルカの部屋はカカシの止り木にはならなかった。その程度の付き合い。
突然、ぐうっと瞼の奥から涙がせり上がって来た。
好きだった。本当に。
多情で色恋に関して不誠実な人間だと最初からわかっていても、イルカはカカシの事が本当に好きだった。
でも、今は辛くても、今日負った胸の痛みはいつかは時間が癒してくれる。
その日一晩だけ、声を殺してイルカは泣いた。






◆◆◆







任務の合間に送られる秋波はひどく分かりやすいもので、また馴染みがあるものでもあった。
男からこうもあからさまな色目を使われるのは初めてだった。
こういった場合、大抵は勝気そうな顔立ちをした美しいくの一が婀娜っぽい笑みを浮かべてカカシを見ているのだが、カカシが無感動に視線を返せばカカシの目線の先で男は切れ長の目を撓ませて意味ありげに微笑んで見せた。
年の頃は二十歳前後というところだろう。その若さで特別上忍にまでのし上がったのであれば忍として今後の成長も充分見込まれる。
自分の実力に自信があるのかカカシを前にしてもその態度は堂々としていて卑屈さが微塵も無い。
自信があるのは忍の力だけではなく、艶を帯びたその微笑から自分の容姿にも自信を持っているのだと窺える。
「あんた。男もいけるんだね、知らなかった」
任務も成功に終わり後は里に帰るだけという段になり焚き火で暖を取りながら野営をしようという時、男はカカシに切り出した。
「なら俺のことも試してみない?いい思いさせてあげるよ」
焚き火の炎に顔半分を赤く染め男は嫣然と微笑む。
男はカカシに比べれば小柄で、中性的な整った顔立ちをしていた。
イルカと寝るようになってからは任務後の昂ぶりを花街で散らす以外では何となくイルカとばかり閨を共にしていた。イルカと関係を持つ前は玄人も素人も関係無く一晩ごとに相手をとっかえひっかえしていたのだが、それがピタリと止んだ事は少なからず里内外で噂にはなっていたようだ。実際にイルカと寝ている事がこんな外回りの忍にまで伝わっていた。
「俺はこっち専門で特上になったようなもんだから後悔はさせないよ。今度あんたと組むって分かった時からはたけカカシとしてみたくって仕方がなかった」
言いながらも男はカカシの正面までいざり寄り、丸太に腰掛けるカカシの足の間に身体を割り込ませた。
「良く動く舌だな」
「だから、試してみてよ・・・・」
男はカカシのズボンの前だけを寛げると力無く項垂れたままのカカシのペニスを引きずり出した。カカシは抵抗するでもなく足の間に蹲る男を見下ろしていた。
ちらちらと炎に照らされて男の舌が光っていた。
まだ柔らかいカカシの性器を男は喜んで口内に引き入れる。粘膜を使って吸い上げながら男はカカシの性器全体に愛撫を加える。
カカシ自身の反応は薄いものだったが、カカシのペニスは男に素直に反応を返し口内でみるみる硬度を高めていく。
「んっ・・ふ。凄い、こんなに・・・」
男の口内に収まりきらないほどにカカシの雄は大きく伸び上がっていた。
舌での刺激を先端に集中させ、男は尖らせた舌先で括れを押し広げるように蠢かせ陰茎を手で扱く。
「・・・っ・・」
僅かに漏れたカカシの吐息に男は亀頭を口に含んだまま嬉しそうに目を細める。男は刺激を更に強めていく。
時折ヒクリ震えるカカシの内股の筋肉を、布越しにその感触を楽しむように男は撫でる。
「ぐっ・・・!んぅ・・」
突然、荒々しくカカシは男の頭を片手で下方に押す。
柔らかな栗色の髪を掻き混ぜるように何度か男の頭を自分の股間に押し付けるようにするとカカシは男の口内に勢い良く射精した。
「は、あっ・・・」
すぐさま男はカカシのペニスを口内から抜き出すと口に含んだ精を掌に吐き出した。
「カカシ・・・俺に任せてっていったでしょ」
頭を押さえつけられた事に抗議する男はいつの間にかカカシを呼び捨てにしている。昨日までははたけ上忍と呼んでいたくせに。
スルリと懐に潜り込んでくる猫のような男にカカシは観念したように苦笑を漏らす。
「待ってて・・・。そのまま・・・」
男は自分のズボンと下履きを足の付け根くらいまで下げると自ら尻の狭間を探り始めた。カカシが吐き出した精液を使い男は自分の後口を解していく。
カカシは向かい合わせで男を膝の上に乗せながら、ぐちぐちと卑猥な水音を立て自分のアナルを広げていく男を無言で見つめる。
悪くないと思った。
お互いに真っ直ぐに快楽だけを追い求める気軽さも、端正な顔が悦楽に歪む様を眺めるのも。
同じ男なら、この男も悪くない。
「ひ・・、あぁっ・・・?!」
ぬくりと、男の指に沿うように長いもう一本の指が肉襞の奥に飲み込まれていく。
「自分でするより奥に届くでしょ」
カカシの器用な指は肛道の中で男の指を追い抜き、更に最奥のしこりを抉るように撫でる。
「ああぁっ!」
「俺に掴まってな」
思わず背中を反らせる男を見て笑いながらカカシは後口を探る指をもう一本増やし、まだズボンの布の中に押し込められていた男の性器を引き出す。そうなれば男は不安定な身体を支える為カカシの頭を抱き込むようにしてしがみ付くしかできない。
「ああっ・・!あーっ!」
前と後を同時に嬲られ男は泣きながら叫ぶ。
専門と言うだけに男の後口はカカシの指をまとめて4本までも飲み込んでいた。やや小ぶりな男のペニスをカカシは大きな掌で上下に扱きたててやる。
「んーっ!んんっ・・」
男は歯を食いしばりながらも片手で自分のベストのファスナーを下げる。
「カカ、シッ・・・!」
男が自分のアンダーを忙しなく捲り上げれば男の左側の乳首だけがカカシの前に晒された。朧な月明かりの中でもそれはふくりと立ち上がり色づいている。
カカシは焦らすことなく男の胸の突起を吸い上げ、カシリと歯を立てる。
男は眺めの髪を振り乱し、カカシの膝の上で腰を揺らめかせる。
ぐっと奥を突くようにして指を押し込めば鋭く息を吸い込み、そのすぐ後に粘着質な液を男はカカシの手の中に吐き出した。
くたりとカカシの肩口に男は頭を凭れさせる。
「やらしい身体だね」
カカシの言葉に男は密やかに笑いを零す。任務の為に作り上げられた身体に男は誇りを持っている。
「嬉しい・・・・」
男は上体を起こすとゆっくりとカカシに顔を近づけていく。
一瞬イルカの顔が頭を過ったが、それよりも今は再び痛いほど張り詰めている己の肉をこの男の中に埋め込みたい。
舌を差し出せば男は喜んでカカシのそれにむしゃぶりついてくる。
何もかもがイルカとは正反対だった。
男の精液で濡れた手で数回自分の性器を扱くと、カカシは一息に男を貫いた。
男の尻を両手で掴み上下に揺すりあげれば男も自ら自分の尻をカカシの膝の上でバウンドさせる。
カカシのペニスが引き抜かれる時に男は締め上げるように尻に力を入れた。肉襞が一斉にカカシを締め上げる。
男の動きを邪魔するようにカカシも角度を変えて男の内部を抉る。
その夜はお互いの身体を満足いくまで貪りあった。



それからはその男が里に帰って来る度にカカシは男を抱いた。
物分りの良いイルカは自分以外の情人の気配に文句一つ言わなかった。
だんだんとイルカよりも男と合う回数が多くなり、イルカのアパートから足が遠のいて2ヶ月目にカカシはイルカに別れを告げた。
しかし今はカカシも里に常駐していてイルカとカカシの生活圏はかなり重なりあっている。
だから顔を合わせてしまう事は避けられない。
受付所へカカシが歩を進めていたとき丁度向かいからイルカが歩いてくる姿が見えた。
受付所を中心にカカシとイルカとの接点はなくならない。受け持った部下達の事もある。出来れば以前のように少し交流がある知り合い程度には関係を修復したいのだが。
イルカはカカシに気付き一瞬足を止めたが、再びこちらに向かいいつも通りの足取りで近付いてくる。
ぐいと右腕を取られてカカシが自分の腕の先を見下ろすと、イルカと入れ替わりで付き合い始めたアサギが感情も露わにして前方のイルカを睨みつけている。
その強い視線を受けてもイルカの表情は変わらない。
多少の気まずさを感じながらも、カカシはアサギの腕を振り払いもせずにそのままにしておいた。
「こんにちは」
すれ違いざまにイルカは軽くカカシに会釈した。
その顔にはうっすらと笑みさえ浮かんでいる。
「・・・・どーも」
カカシが返事をした頃にはイルカは二人の横を何事も無く通り過ぎ、すたすたと歩き去っていた。
付き合っている間中カカシの言動全てに初心な反応を見せていたイルカは、もっと面倒な人間なのかと思っていた。
別れ際も、別れた後も、イルカは予想外の反応をカカシに示す。
カカシが見ていたのはイルカの表層のほんの一部分でしかなかったのかもしれない。
ぼんやりとカカシは考えていたがアサギに促され、それからは振り向く事も無くカカシはその場を後にした。












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