危なっかしく、目が離せない恋人に近寄る輩は多い。一つ屋根の下で生活する八葉のほとんどが九郎を狙っているといっても過言ではないのだ。
今日は弁慶の他にヒノエも家に残っていたので所用で外出していたのだが、少し目を離すとすぐこれだ。
「九郎に自覚しろっつっても無理だろうけどな」
ガシガシと頭を掻きながら将臣が自室に戻るとベッドに何やら思い詰めた様子の九郎が腰掛けていた。
その九郎の隣に将臣も腰掛ける。
「あのな、九郎・・・・・」
言ったきり、将臣は口を噤む。
一度懐に受け入れてしまうと九郎は手放しで相手を信用してしまい、疑うことや警戒する事など全くしない。不用意に誰かと二人きりになるな、などと言ってもピンとこないだろう。
どう言ったものかと考え込む将臣の視界がぐるりと回った。
「ん?」
将臣の視界には何故か緊張している様子の九郎と、その九郎の背後には天井が見える。
九郎に押し倒されたのだとわかった瞬間に口元に将臣は衝撃を受けた。
ガチ、と歯が音を立てる。
「ーーーーーッ!!」
九郎と将臣は揃って自分の口元を抑える。九郎が勢い良く将臣の口元に自分の唇を押し付けたのだった。
「馬鹿!何やってんだよ」
少し唇が切れたのか将臣の口内に鉄の味が広がった。涙目の九郎の口元から手を外させると九郎の唇も切れてはいないが少し赤くなってる。
「将臣!血がっ・・・!」
みるみるうちに九郎の目には涙が滲んでくる。
「俺は大丈夫だって。あー、こんなに赤くなっちまって・・・・」
九郎の可愛らしい桜色の唇は今は濃い紅色に染まり痛々しい。自分に馬乗りになったまま涙目でいる九郎の唇を指の腹で将臣はそっと撫でる。
あの色恋に疎い九郎が自分から将臣を押し倒し、キスまで仕掛けてくるとは。
明らかに様子のおかしい九郎に将臣はゆっくりと優しく訊ねる。
「九郎、どうした?何かあったか?」
「将臣、今日は俺が、俺がするからっ・・・・」
言いながら九郎は将臣のTシャツを捲り上げようとする。
「お、おい。九郎」
将臣の上に馬乗りになり、シャツを思い切り捲り上げたはいいがそこで九郎は顔から首筋まで一気に朱に染めてどうしたものかと困り果てている。
何か変なドラマか映画を見たか。もしくは誰かに何か言われたか。
そんな所だろうと将臣は当たりをつけた。
切羽詰まった様子の九郎は今にも泣き出してしまいそうだ。
何かに迫られるように身体を弄られた所で気持ち良くは無い。むしろ将臣は身体全体を弄って九郎が身を捩る様を見るほうが好きだ。
しかし惚れた弱み。九郎の必死な様子に将臣も付きあってやることに決めた。
将臣はそっと九郎の頬を撫でる。
「わかったから。九郎の好きなようにしてみな」
よしよし、と。将臣の大きな掌が九郎の頭を撫でる。優しく触れられて極限に達していた九郎の緊張もふにゃりと和らいだ。毛を逆立てていた子猫がくたりと力を抜いて身を寄せてくる時に似ている。
気持ち良さそうに目を細める九郎が可愛らしく、飽きる事なく将臣は九郎の頭を撫でる。
「ま・・・・将臣、今日は俺に全て任せてくれ」
「OK、ほら。好きにしな」
改めてごろりと、将臣はベッドに仰向けに横たわった。
将臣に跨ったまま、ぎこちなく九郎が将臣に顔を近づける。
ふにゅと、九郎の柔らかい唇が将臣の薄く形の良い唇に触れる。少し強く押し付けれるがそれから先、九郎は動かない。
将臣が薄く唇を開けばやっと九郎はおずおずと将臣の口内に舌を差し入れてきた。
臆病な九郎の舌先を逃す事なく将臣は絡め取り更に自分の口内に引き込む。
「んっ、・・・ふ・・」
将臣が九郎の後頭部を捕らえて引き寄せる。密着した九郎の腰が無意識に揺れて九郎が昂ぶっている事が将臣に知れた。
「んん・・・・」
稚拙な九郎の舌の動きに焦れて将臣はいつものように九郎の口内を嬲り始めた。歯列をなぞり、舌を絡めて吸う。
キスをしながら背骨を伝うように九郎の背中を撫で上げれば素直な九郎の身体はヒクリと震えた。
「は・・・、や、だっ・・。今日は、俺がっ・・・」
不埒な動きをする将臣の腕を掴んだまま、九郎は下にずり下がり将臣の硬い胸板に吸い付く。
硬く目を瞑ったままひたすら胸の飾りに舌を這わせる九郎は羞恥のあまりにこれ以上にないほどに顔を熟れさせている。
「大丈夫か、九郎?」
声をかけられた九郎が下からじっと将臣を瞳を潤ませて見詰める。
「ん?ああ、気持ちいいぜ?」
将臣の言葉を受けて、安心したように目元だけで笑うと九郎は更に下方に身体をずり下げていく。
(本当はくすぐったいだけだけどな・・・・)
犬の子供がじゃれ付いて顔や手をペロペロと舐めてくる感触、それに近い。まあ、必死な九郎も可愛いのだがこんな様子ではどうも性的興奮につながらないのだ。
いつまでこれが続くのかと思考が彷徨い始めていた将臣はギョッとした。
気付けば九郎が将臣のジーンズのファスナーを下げ前を寛げようとしている。
「ちょっと待て、そこはいいって」
「大丈夫だ。ま、かせてくれ・・・・」
ぶるぶると震える手で将臣のものを引き出して九郎は赤らめていた顔を青くする。将臣のものは興奮の兆しを欠片も見せていなかったからだ。
「将臣・・・・」
途端にブワリと九郎の両目から涙が溢れ始める。
「やはり、俺では・・・・・将臣を満足させられないのか・・・」
「はあ?」
将臣の足の間で九郎はガクリと項垂れている。
何処で何を見聞きしたのかは知らないが。
ハアと溜め息一つつくと将臣は項垂れたままの九郎を自分の身体の上に引き上げる。
「あのなあ、色々やってくれるのは嬉しいけどな。俺はされるよりする方が好きなんだよ。それに俺はお前以外を抱きたいだなんて思わない。満足してない訳無いだろ」
藍色の瞳にじっと覗き込まれて一瞬遅れてから九郎は再び顔を赤らめる。
「そ、そうか」
「でもまあ、たまには九郎が上ってのもいいかもな」
「!!」
そう改めて言われると今更ながら恥ずかしさが込み上げてきたのか、九郎は慌てて将臣の上から降りようとする。しかし将臣は九郎の腰をしっかりと掴んで放さない。
「俺の上で乱れる九郎が見てみたい」
「〜〜〜ッ!!!!」
それから。
これ以上は赤くなれないというほどに全身を真っ赤に染めた九郎を将臣は翻弄しまくった。
「あっ・・!や・・!」
いとも簡単に将臣は九郎の薄手のセーターを剥ぎ取ってしまう。冷気に突然晒された九郎の桃色の胸の飾りはまるで将臣の愛撫を強請るようにプクリと尖った。
九郎に抵抗する隙も与えずに将臣は胸の突起に吸い付く。
「あっ・・・」
しなやかな九郎の背中が反射的に反る。それを将臣は許さずにますます九郎の背中に回す腕に力を込めた。
固く尖った肉の粒を舌先で転がし、時折軽く歯を当てる。もう片方も指の腹を擦り合わせるように刺激を与えてやる。
九郎が快感を覚えているのは隠しようもなく、将臣の猛り始めた剥き出しの雄の上に密着している九郎の腰は断続的に震える。
「あ、クッ・・将臣!そんな、胸ばかりっ・・・」
「でもここ、好きだろ?こっちも触ってないのにこんなに濡れてるぜ?」
「あっ、あっ・・!」
乳首への愛撫だけで陥落寸前の九郎は易々と下履き中に将臣の手の侵入を許してしまった。
九郎のジーンズの前を寛げただけで、九郎の下着からずるりと将臣は九郎のペニスを引き出す。明るい日の中で見る九郎の性器は将臣のものと比べると色も薄く、果実のような赤い肉を覗かせてすんなりと真上に伸び上がっている。
「や、嫌だっ・・・!!」
ベッドの中では九郎はいつも暗くして欲しいとせがむ。何度身体を繋げても羞恥心を無くさない九郎を愛らしいと思い、将臣は九郎が望むままにしてやっていたが、弁慶を疑いもせずに密室に篭もる等と全く危機感のない九郎をたまには仕置きの意味を込めて虐めるのもいいかもしれない。
「隠すんなら、ここでやめるぜ」
九郎は将臣に馬乗りになった体勢のまま固まる。
ここまで煽られて、このままでは辛い。股間を隠しかけた掌が中を彷徨う。将臣の顔を見るとどうやら冗談ではないらしい。
「将臣・・・」
「ジーンズとトランクス、どっちも脱げよ」
そうなれば自分の陰部が全て将臣の目の前に晒されることになる。羞恥の余り九郎の目が眩んだ。
「早く」
拒否を許さない将臣の声音におずおずと九郎はジーンズの足を片方ずつ足から外し、トランクスも同様に剥ぎ取っていく。
「良い子だな、九郎」
まるで頭でも撫でるように不意に将臣が九郎の性器の柔らかな先端を撫でた。
「ひぁ・・・!」
ビクリと九郎の身体が跳ねる。
どんどん溢れてきた先走りの蜜を塗り広げるようにゆるゆると、将臣は掌と指の先を使って九郎の張り詰めたペニスを扱き始める。
待ちわびた刺激に九郎の腰は将臣の手を貪欲にほしがり揺れ続ける。
「あっ、あっ・・・!!」
将臣の手はペニスを扱きながらも溢れる蜜をすくいながら双丘の狭間にも及ぶ。濡れた指の腹で九郎の蕾の襞を撫でればそこは答えるようにヒクリと収縮する。将臣は誘われるままに人さし指を根元まで潜り込ませた。
「こっちも、ひくついてどんどん俺の指を飲み込んでく。美味いか、九郎?」
「やだ、言う、なッ・・・・」
指を二本に増やし、肛道を押し広げるように何度も肉襞を擦る。最奥のしこる箇所をぐいと指で押してやれば九郎は背をしならせて高い声をあげた。
「あっ、そ、こ・・・嫌っ・・!!」
「嫌、じゃなくて、イイ、だろ?」
過ぎる快楽に涙を滲ませて身を捩る九郎に将臣もどんどんと煽られていく。九郎の前立腺ばかりを責め立てれば、九郎の嬌声は泣き声の一歩手前にまで高まる。濃い紅色の亀頭からは先程からビュクリビュクリと白い蜜の塊が漏れ出していた。
「もう、いいか。九郎、そのまま腰降ろしな」
「や、出来な・・・・ああっ!!あ、ああああぁっ!!!」
頭を振る九郎の腰を軽く持ち上げると、焦れた将臣は柔らかく解れた蕾に己の先端を宛がい一息に九郎を貫いた。
ひ、ひ、と短く息を漏らしながら将臣の上でブルブルと九郎は内腿を震わせたまま動けずにいる。
「動かなきゃ終わらないぜ?九郎」
「うっ、っく・・・・」
「・・・・ったく」
将臣がもう一度九郎の腰に両手を添える。
「あ、やぁッ・・・!動くなっ・・・・ああーーッ!」
ズクリと将臣が再度、九郎の最奥に楔を打ち込む。突如始まった激しい将臣の抽挿に九郎の尻はまるで将臣の雄を扱きあげるかのようにパウンドを繰り返す。
「んぅ!あっ、ひ・・!ああっ!」
結合部が普段よりも露わになっているためか、室内にはぐちぐちと粘膜が擦れる卑猥な音が鳴り響く。
「・・・・」
しばらくは九郎がたどたどしく腰を揺らす合間を縫い時折腰を突き上げていた将臣だったが、これでは自分はイケない。
「なっ・・?!ひぁ・・!」
突然九郎の足を持ち上げると結合部を軸にして将臣は九郎の身体を反転させた。自分の上体を起こすと座位の上体から素早く九郎に四つん這いの体勢を取らせた。
腰だけを高くあげた獣のような体勢に九郎が抗議をあげようとする前に将臣が九郎のペニスを背後から握りこむ。
九郎はそれだけで身動きを封じられた。
将臣が身体を密着させるように九郎の背中に覆い被さると、将臣の雄は再び九郎の秘肉を割り奥に潜り込んでくる。
「このまま、動くぜ」
宣言するまま将臣は激しく腰を振り始めた。
「ッ・・ああぁっ――――!!!」
九郎は絶叫と紙一重の嬌声を上げる。
後口は熱い肉が激しく出入りし、自分のペニスは将臣が激しく擦りあげてくる。
「ああっ!!うぅ・・、ひあっ!」
いつ達したのかも気付かない内に、九郎は自分の下肢と将臣の手を吐精で汚した。ペニスが将臣の手から開放されても後口は未だ激しく将臣が猛った雄を抜き差ししてくる。襞を擦りつづけられると収まったはずの熱が腰に集まり知らぬ内にゆるりと九郎の性器は再び頭をもたげてくる。精液で滑る九郎のペニスに将臣は再び刺激を与え始める。
「やっ・・!将、臣・・もうっ!!!」
先端の小穴を爪先で引っかかれ再び九郎は白濁の液をシーツの上に勢いよく散らした。
その反動で将臣の性器全体を締め上げるように九郎の肉襞が蠢く。
「くっ・・・!!」
両手で思い切り九郎の腰を引き寄せると根元まで猛った雄を捻じ込み将臣は九郎の最奥に精を放った。
ドクリと将臣の陰茎が痙攣するたびにヒクリと九郎の背中も震える。
二度の射精を終えて九郎は気を失ってしまったようだ。腰だけを高くあげ、上体を支えきれずにぐったりと自分が汚したシーツの上に身を投げ出している。
将臣の眼前には九郎の引き締まった尻の間にしっかりと納まったままの自分の性器が丸見えになっている。少し引き抜くとゴプリと自分の精液が溢れてきて赤く捲れあがった九郎の粘膜を白く汚した。
一度吐精したというのに将臣の雄は収まる兆しがない。普段は見られない九郎の媚態に煽られた所為だ。
「九郎。悪い」
意識のない九郎に形だけの断りを入れると、将臣は今度は味わうようにゆっくりと九郎の中に抽挿を繰り返しはじめた。
それから二度ほど九郎の中で将臣は果てた。存分にその身体を味わった後、力を失った九郎を解放する。
ぐったりと全身を弛緩させて九郎はベッドにうつ伏せのまま身体を横たえている。
汗で濡れる九郎の背中を撫で上げてももうピクリとも動かない。
まだ日も高いというのに随分と盛ってしまったものだと将臣は苦笑する。
「将臣・・・・」
気を失っているとばかり思っていた九郎が口を開いた。
「将臣は・・・・マグロは好きか・・・・?」
「ああ、好きだ」
間髪入れずに将臣は答えた。
「そうか・・・。そうだったのか・・・・・」
安心したようにそのまま九郎は眠りに落ちていった。
突然に何の話なのかとは思ったが、この間回転寿司に九郎を連れて行った事を将臣は思い出した。
そんなに寿司が気に入ったのならまた連れて行ってやろうと将臣は思う。
九郎が喜ぶのなら何度でも。
それからしばらく、九郎はマグロと山葵の克服に苦労するのだった。
でもマグロな自分でも満足だと言ってくれる将臣のために、苦手な生魚と山葵くらい幾らでも食べてやろうと思う九郎なのだった。
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