「・・・ただいま」
不本意ながらも帰宅の挨拶をする。
このマンションに帰ってくるなんて、自ら獣の巣に飛び込むようなものだ。
それでも強制退寮させられ、宿無し・金無し・親無し、と三拍子揃っているイルカには選択権はない。
「お帰りなさ〜〜い♪」
パタパタと軽快なスリッパの音をさせて腐れエロ教師が玄関までイルカを出迎えに来た。
「お風呂にする?それともご飯?ていうか真っ先に俺?俺のこと食べちゃう?」
イルカは無表情にカカシに一瞥くれてやると、カカシに学生鞄を手渡しながら一言「風呂」と答える。
イルカが全身土埃にまみれて、薄汚れているのに気付いたカカシは思い切り眉を跳ね上げる。
「ちょっと!またあの激眉と特訓!?俺というものがありながらイルカ、酷い!!」
カカシはエプロンの裾を持ち上げキイ!と口で噛み締める。
なんなんだ。そのフリルが痛々しいエプロンは。今日は新婚さんプレイなのか。
そんなカカシに構うことなくイルカは風呂場へ直行する。
あまりに疲れすぎて風呂で飯を食ってそのまま風呂場で眠ってしまいたい。
湯船で何度も舟をこぎながらも何とか風呂から上がり、睡魔に襲われながらも台所へ向かう。
「今日はいい鯵が手に入ったから南蛮漬けにしたよ〜。それと今夜は蒸し暑いから冷やし汁にしましたっ」
カカシは丼に麦飯をさっくりよそうとキュウリ、ミョウガ、万能ねぎ、白ゴマがたっぷり入った白味噌の冷やし汁をたっぷりかけイルカに手渡す。
「あ、美味い」
もくもくと箸を動かすイルカを前にカカシはなんとも幸せそうな笑顔を見せる。
イルカは薬味の効いた涼しげな喉越しを楽しむ。
合間に小鯵の南蛮漬けをぱくつき、小松菜の辛し和えで箸を休める。
もともとイルカは質より量!腹一杯食えればそれで良しとするタイプだったが、カカシが用意する食事は本当に美味い。
カカシはさり気なくイルカの好みを覚えて好きなものを食卓に並べてくれる。
このマンションに初めて来た日の事を思い出すと未だに腸が煮えくり返る。
だがカカシが居心地の良い空間を作ってくれて、イルカは何となくこの場所に収まってしまった。
その事もまたカカシが望むように全てが動いている気がしてイルカには癪に触る。
むむ、とイルカの眉間に皺が寄ったと思うと、イルカは勢いよく冷汁をかき込んだ。
「ん?おかわりは?」
「・・・俺、もう寝る」
寝ると宣言すると途端になりを潜めていた睡魔にイルカは再び襲われた。
部屋に絶対入ってくんなよ、と毎晩の決まり文句をカカシに浴びせるとイルカはフラフラと自分の部屋に戻った。
全く使われていなかった六畳の和室。
ここが激しい争いの末、イルカがカカシからもぎ取った私室だ。
寝室は一緒で!と譲らないカカシに、出て行く、絶対ダメの押し問答の末、ようやく寝室は別とする事、という取り決めを承諾させた。
もちろん性交渉を無理強いした時点で同居は解消、という誓約書も書かせた。
イルカの部屋へ足を踏み入れることも禁止。
カカシとイルカが顔を合わせるのはリビング、キッチンなどの公共のスペースだけという事になる。
ここまで厳しく取り決めてようやくイルカはカカシとの同居を自分自身にどうにか納得させたのだった。
このマンションに学生寮から拉致られて体力が回復するまではカカシのダブルベッドの上での生活を余儀なくされた。
だが、イルカが私室を手に入れて以降、カカシは何故か驚くべき忍耐力を持ってマンション内での規律を守っている。
(あの時は、やばかった・・つか、怖かったけど)
イルカはまどろみながらカカシから最後に受けた体術特訓の事を思い浮かべる。
カカシが本気になればイルカをどのようにでも好きにできるのだろう。
泣き喚こうがこのマンションに閉じ込めて毎日イルカの身体を貪る事も。
でもカカシはそれをしない。
馴れ初めは最悪だったが、カカシなりにイルカへ誠意を見せようとしているのかもしれない。
(信用・・・できんのかな・・・)
ハッと我に返り、イルカはぶんぶんと布団の中で首をふる。
信用したら最後、自分はまた取って食われるのだ。
この数週間でイルカは他人を信用したばかりに数々の酷い目に遭った。
だから、もうカカシに気を許したりしたら絶対にいけない。
改めて自分に言い聞かせると、イルカはその後プツリと糸が切れたように眠りに落ちた。



「う――、んん・・・・・」
白白と室内が明るくなり始めた頃、背中を覆う人肌の感触にイルカはゆっくりと覚醒させられた。
その温かい人肌は不快ではない。
イルカは無意識に身体を反転させるとすりすりと頬をその熱に擦りつける。
その熱はすっぽりとイルカを包み込んで四肢に絡み付いてくる。
心地よい浅い眠りの中にたゆたっていたイルカだったが、次第にその呼吸は不規則に乱れ始める。
「あ・・あ・・?・・んぅっ!」
腰の中心に甘い痺れが走ってイルカは堪らずに背を反らせる。
身体を反らせて突き出した胸元には覚えのある濡れた感触がある。
反った背と布団の隙間に潜り込んだ腕はしっかりとイルカを抱きすくめる。
「あ・・ぅ・・」
イルカの寝巻きはいつの間にか毟り取られていて、たった今下着も膝下までずり下げられてしまった。
カカシはイルカの胸の突起を舌の先で転がし更に固く尖らせる。
外気に晒されたイルカのペニスはすっかり形を為してカカシの腹に先走りの蜜をなすり付けている。
意識がない間にコトを運ばれて、怒ろうにもイルカの身体はすでに従順にカカシから与えられる快感を拾い始めている。
イルカはカカシが動かす舌先に翻弄されてビクビクと身体を揺らす。
「何で・・部屋・・・入って」
「昨日の言いつけは守ったでしょ。今日はまだ入るなって言われてないもーん」
屁理屈もいい所である。
とてもいい年こいた大人の科白とは思えない。
「む・・・りやり、しない・・って・・っ!」
「イルカが嫌なら、すぐ止めるけど。でも、気持ちいいでしょ?」
夜が明け始めたばかりの薄明るい部屋の中でカカシの蒼と赤の目がイルカを捕らえている。
カカシは小憎たらしくニヤリと笑った。
「うふふふ〜。こんなに硬くしちゃって、気持ちいい?これじゃあ、強姦にならないね〜」
「あ!うっ、んんっ・・・!」
「ねえ、健気に世話を焼く俺にそろそろほだされてもいいんじゃない?」
イルカの首筋に吸い付きながら、カカシは片手でイルカの性器をゆるゆると扱き始める。カカシは手の中の弾力を楽しむように根元から先端に向けて手の筒を窄めるように上下に動かしつづける。
柔らかな先端を、鈴口を押し潰すように掌で包めばイルカは短く声を詰まらせ苦しげに喘ぐ。
「最後までしていい?」
「・・だ・・んんっ」
カカシは素早くイルカの口を自分の口で塞ぐ。
自分は好き勝手に言葉を紡ぐのに、カカシはイルカにはそれを許さない。
イルカの口から吐き出される言葉も、堪えきれない喘ぎ声もカカシは全てを自分の中に呑み込んでしまう。
素早くイルカの口内に侵入したカカシの舌はイルカの上顎を執拗に擦りあげくすぐる。
むず痒い、緩やかな快感が背筋を這い上がってきてイルカは堪らずに身を捩る。
僅かに浮いたイルカの腰の下にすかさずカカシの腕が潜り込む。
いつの間に手に取ったのか、潤滑剤で潤ったカカシの指は双丘の狭間を滑りずるりとイルカの蕾の中に差し込まれた。
「ん!・・うっ・・」
後口に埋め込まれたカカシの指は内壁を広げるように何度も抜き差しされる。その動きにあわせてイルカの口の端からはくぐもった声が漏れる。
カカシは虎視眈々とイルカが油断するのを狙っていたに違いない。
信用してもしなくても、結局いいようにされてしまうのか。
なんてこの世は無常なんだ。
(ん・・のやろぅ・・・)
この世を嘆いてみても、寝込みを襲われ、訳のわからない内に快楽に身を攫われてしまい、イルカの怒りとやり切れなさはカカシの指で粘膜を擦られるごとに薄れていく。
「はあっ!・・・は・・はあ・・」
突然に塞がれていた口を解放されて、イルカは苦しげに呼吸を繰り返す。
カカシは埋め込んでいた指で粘膜を広げると、指と入れ違いに素早く亀頭をイルカの中に潜り込ませてきた。
「ああぁーーーっ!!!」
堪えきれずイルカは嬌声をあげた。
カカシはイルカの腰を掴んで、イルカの内部の粘膜を擦りあげながら奥へ奥へと自分の性器を押し込む。
「・・くっ・・気持ちい―・・」
カカシは自分の性器を根元までイルカの中に収めてしまった。
「ん〜、寝起きだからかな・・・。イルカの身体全体が解れてて、中も柔らかい・・・・」
うっとりとイルカの肉襞が自分の性器を扱く感触を腰を動かして楽しんでいたカカシだったが、イルカの足を肩に抱え直すと本格的に腰を振り始めた。
「あっ!あうっ・・んあ!」
深く突き入れられる度にどうしてもイルカの口からは嬌声があがってしまう。
「イルカ、かわいーね」
変態教師は背を反らせるように上体を起こし、結合部をじっくり観察しながらぐちゅぐちゅと性器の出し入れを繰り返す。
思い切り膝裏を押されるようにして身体を折り曲げられているので、イルカにも自分の脚の間から後口に根元までカカシの赤黒いペニスが押し込まれる様が良く見える。
あまりにも卑猥な光景にイルカの首筋から脳天にかけてカーッと血が上る。
「うあ!・・こ、の・・変態!抜けッ!!」
「ん・・・、ん。もう少し・・・」
もう一度カカシはイルカの両足を肩に抱え直すと、肉のぶつかる音が響くほどにイルカの後口へめがけ腰をぶつけ始めた。
この体位だと、もろにイルカの前立腺を抉る。
「ああっ!あーーーっ!!!」
あっという間にイルカは弾けた。
勢いよく吐き出された精液をイルカは自分の顔面で受け止める。
「うわ・・・どろどろ・・・」
恍惚とした表情で一際深くイルカの内部に自分のペニスを潜り込ませるとカカシは断続的に腰を震わせた。
ヒクンヒクンと痙攣が治まらないイルカの粘膜は最後の一滴まで搾り取るようにカカシのペニスに纏わり付く。
まだ余韻を楽しむように、カカシは半立ちのペニスをイルカの肉襞でゆるゆると擦り続ける。
久しぶりの絶頂にイルカの意識は持ち堪えられなかった。



次に意識が戻るともう日はかなり高く上っており、カカシはとっくに居なかった。
自分が顔面で受け止めたはずの精液や下肢の汚れは綺麗さっぱり拭われていて、それが更にイルカの羞恥と怒りを煽る。
「ンガアーーー!!!」
怒りの余り意味不明の雄叫びをあげイルカはカカシの寝室で暴れまくった。
ベッドのスプリングを壊し、クローゼットの衣類を全部フローリングにぶちまけ、カーテンを引き千切った。
カーテンを引き千切った勢いで「うっきーくん」と名前が書かれた観葉植物が引き倒されてしまった。
「あ・・・」
イルカはふっと、正気に戻った。
植物には罪は無い。
とにかく、こんな獣の住処などでは暮らしていけない!
もうこの家に帰ることは無い。
うっきー君だけは丁寧に元に戻して、新たな決意を胸にイルカはフラフラと学校へ向かった。



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