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そんな焦燥に駆られるカカシの事などつゆとも知らないイルカは最後の外湯に辿り着いていた。
「へー今度は湯が透明だけど、なんかビリビリする・・・・」
いくら湯治が好きだとはいえさすがに温泉も八箇所目ともなるとイルカの全ての指の腹もふやけて、ふうふうと吐き出す息も熱く湿っぽいものになる。それでも有馬温泉に来る機会は今後なかなか無いだろうと思うイルカは湯から上がる踏ん切りもつかずに、顔を真っ赤にさせつつも湯に浸かり続ける。
「はあー・・・・・」
先程の騒がしさと打って変って静かだった。
数人居た先客もさっさとイルカを置いて先に上がってしまい、今はイルカ一人が贅沢に露天風呂を占領している。
「・・・・・。・・・・・・そろそろ・・・・あがる、かな・・・・」
えい、と両足に力を入れてイルカは立ち上がろうとするが身体が驚くほど重い。
露天風呂の岩肌に掴まりつつ何とか立ち上がると今度はくらりと立ち眩みがした。
(やばい・・・・)
完全にイルカは湯あたりしていた。頭がぐらぐらと揺れる。気持ちが悪い。きっと脱水症状も起こしている。
そういえば地元に住んでいると思われる爺さん連中はイルカより後から湯船に浸かりさっさと上がっていた。それはこの温泉は浸かり過ぎると湯あたりが酷いからだったのだ。
好々爺とした爺さん連中は何人も早く上がれとイルカに声をかけてくれていたのに、貧乏性のイルカは温泉をじっくり堪能しようと意地を張ってしまった。
力の入らない身体を何とか湯船から引き上げる。
せっかく温まった身体が冷えるのは残念だが、無理に歩いてひっくり返るよりはこのまま休んでいようとイルカはごろりと洗い場のタイルの上に身体を横たわらせた。
まだ夕食前にも早い時間。外湯巡りの客が来るには遅い時刻。
もう誰もしばらくは来ないだろうと、全裸の上に大の字になってイルカは目を閉じていたのだが、
「うみのイルカじゃないか」
と突然振ってきた声にイルカはぎょえー!と心臓を吐き出しそうになった。
少し体調が落ち着きかけていたというのに、急に跳ねた心臓に血が下がりイルカは再び酩酊感を覚える。
体調の悪化に身を振るわせつつも薄目を開ければイタチとデイダラ、鮫なのか人なのかよくわからない生物、そして赤毛のひどく顔が整った見知らぬ人物が自分を囲んで見下ろしている。
「イルカ、具合が悪いのか?ウン?」
デイダラが心配そうに可愛らしく小首を傾げる。基本的にはデイダラは友達想いのいい奴なのだ。
「完全に湯あたりしているな」
イタチが抑揚無く淡々と告げる。
「小さくて可愛らしい方ですねえ」
鮫がイルカを見下ろしながら目を細め口元に笑みを浮かべる。
「これがうみのイルカか。それほどそそられもしねえがな・・・」
「いや旦那。それはやってみればすぐわかるって、ウン」
赤毛の男とデイダラが何やら不穏な会話を始める。
デイダラはいい奴なのに、いい奴なのに、致命的なまでに性のモラルが低い。そして、此処に居る連中は多分(イタチは確実に)類友という奴だ。
つまりは自由の効かない身体のまま全裸でいるイルカはピンチなのだった!!(本日二回目)
「ほ、ほっといてくれ・・・」
「かわいそー、チンコも真っ赤。大丈夫か、ウン?」
「チンコまで真っ赤だな」
「可愛いですねえ」
「そのチンコ腫れてんのか?」
イルカの弱々しい主張はすっぱり無視されて見下ろす四人はイルカのクタリとしたペニスについて口々に好き勝手言う。
「どら」
赤毛の男がおもむろにイルカのペニスを掴む。
「物凄く柔らかくなってるぞ。こんなの役に立つのか」
男は片手でイルカの陰茎をぐにぐにと揉むが、イルカは何か感じるどころか何故かつるつるとした男の無機質な肌感が気持ち悪くて(傀儡だから)うう、と呻き声をあげる。
「どうしたんだよ、イルカ!おいらが触ったらあんなにびんびんになってたのに!」
依然興奮の兆しを見せないイルカの股間を見てデイダラが慌てたようにイルカの二つの袋を握る。
うぐ、とイルカの口から更に苦しげな声が漏れる。
自分の身体に触れる人肌の生温かさが気持ちが悪い。洗い場のタイルの冷気を楽しんでいたというのに。
いや、それよりも。この流れはかなりまずいのではないか。
「や、やめろぉ・・・・」
イルカが何とか身体を捩るがイルカの股間からデイダラと赤毛の男の手は外れない。
「サソリ、全く勃つ気配は無いのか」
「全くねえな」
何が面白いのかクタリと萎えたままのイルカのペニスをサソリと呼ばれた男はいつまでも弄りつづける。
「玉も全然硬くならないぞ、ウン」
デイダラもしつこくふにゃふにゃのイルカの陰嚢を掌に包み揉み続ける。
その時、突然鮫が顔を青ざめさせて息を呑んだ。
しかし元から顔色が青いため、他の三人は鮫の変化に気付く事なくイルカの性器を凝視し続けていたのだが。
「まさかっ・・・・!!身体の熱が上がりすぎてイルカさんの子種が死んでしまったんじゃ・・・・!!!」
「「「!!!!!」」」
鮫の発言に言葉を無くして三人は鮫を見やった。
「・・・・・。・・・・・別にいいんじゃねえか、ウン?」
「そうだな。こいつ暁ではネコ役になるんだろ?」
「そ・・・、そういえばそうですよね・・・」
なーんだ穴があればいいか、とデイダラ、サソリ、鮫は再びイルカの赤く項垂れたペニスと向き合ったのだが、
「いや、それはまずいな・・・・」
深刻な声音に三人は今度はイタチに視線を集中させる。
「ところてんが出来なくなるぞ」
「「「・・・・・ッッ!!!!!!!」」」
その場は水を打ったように静まり返る。
ところてん(式)とは。
ところてん突き棒がところてんを押し出すように、突っ込まれると押し出される様。
つまり尻に突っ込まれて受け手が射精する事。もしくは攻めが射精すると同時に受も一緒に達する事。
考えてみれば受け手をイカせまくる事も攻めの楽しみの一つ。
不能だという事は暁倶楽部でのイルカの商品価値は著しく下がるということだ。
「うわーーー!!イルカ!!大変だっ!!!」
「どどどどどうしましょうっ!イタチさ・・・あうっ!!!」
デイダラと鮫が同時に騒ぎ出し、鮫だけがイタチにどつかれる。
「取り乱すな、鬼鮫(以後鮫改め鬼鮫)。サソリ、イルカを宿に連れて帰るぞ」
「どうする」
「冷やす」
イタチの答えは簡潔だった。イタチを除く三人がそれぞれ顔を見合わせる。
「よし、そうとなったら早速宿に帰ろうぜ、ウン」
「そうですね」
「そうだな」
鬼鮫が脱衣所からイルカの浴衣を引っ掴んできてイルカの身体をフワリと包んでやる。
股間をもみくちゃにされてますます具合を悪くしているイルカはもう意識も朦朧としていた。
そのイルカを鬼鮫はお姫様抱っこしてやる。
「鬼鮫、ナイト気取りか」
「いたいいたいいたいいたい!!イタチさんいたいっ・・・!!」
鬼鮫の二の腕の内側をイタチは鬼鮫に伴走しつつぎゅうと抓り続ける。鬼鮫もイタチの手を振り払えばいいものをイタチに二の腕を抓らせたままイルカを抱え宿への道をひた走る。
その後ろをデイダラとサソリが続く。
「温泉入りそびれっちゃったなあ、旦那ぁ〜」
「そうだな。まあ、その代わり回復させたうみのイルカのあそこの具合でも確かめればいいだろ」
「それもいいなあ、ウン」
横抱きにされながら運ばれるイルカはその振動が頭に響きますます意識が遠のいていく。
イルカを手中に収めた暁倶楽部の一行は割り振られた部屋に足早に移動する。
まさに今、イルカの身体は暁倶楽部の物にされんとしていたのだが、
「ちょっと待ちなさい」
一丸となってイルカの股間を冷やそうとしていた暁倶楽部の行方を遮る者がいた。
「見たところ、その子は具合が悪そうだね。僕に預けていきなさい」
廊下の真ん中に立ちはだかるその人物を暁倶楽部の面々は誰一人として知るものは無く、ポカーンと口開けて無言で立ち尽くしている。
「ふっ・・・、つい最近転校してきた君たちは知らないかもしれないが僕は薬師カブトといって学園で保険医をしている」
聞かれもしないのに男は説明臭く自己紹介をした。
突如現れた温泉宿でまでも白衣を身につけているカブトに暁倶楽部の一行は毒気を抜かれたようになってしまっている。
「さ、見た所イルカ君は湯あたりだね。後は僕に任せて」
「待ってくれ、先生っ!」
鬼鮫からイルカを受け取ろうとするカブトにデイダラが縋りつく。
「イルカの子種が!子種が大変なんだっ!!!」
「な、何だって!!」
カブトの顔が一瞬で青ざめる。
「早くチンコ冷やさないとイルカが不能になっちゃうんだ、ウン!!!」
「そうかそうか。それは大変だ。それなら尚更、一刻も早く僕にイルカ君を預けるんだ」
カブトは縋り付いて来たデイダラを抱きすくめてさわさわと尻の辺りに手を這わせる。
「先生、任せていいのか、ウン?」
「もちろんだよ。君のような可愛い子の頼みは断われないさ。だから今度一人で保健室においでね?」
「おいおい。一人で保健室なんか行くんじゃねえぞ、デイダラ」
サソリがカブトからデイダラを引き離す。
「ふっ・・・。それじゃあ、渡してもらおうか」
デイダラを奪い返したサソリを軽く鼻で笑うと、カブトは両手をズイと促すように鬼鮫に差し出す。
「鬼鮫、渡せ」
「あ、はい」
サソリに促され、鬼鮫がイタチの顔色を窺いながらもイルカをカブトに引き渡した。
「イルカ君は僕が責任もって預かろう」
そういい捨ててカブトは暁倶楽部の面々に背を向けた。
「・・・・絶対、うみのイルカは犯られるな」
「えっ!!!」
イタチの言葉に鬼鮫は目を剥いた。
「あー、やっぱりぃ?オイラもそう思うな、ウン」
「十中八九そうだろうな」
「ええーっ?!!」
デイダラとサソリの言葉に鬼鮫は廊下の真ん中で大声を上げた。
「は、早く助けに行かないと!!」
「アホか。どのみち俺達もうみのイルカをヤルつもりだったろうが。それにあのカブトという保険医は面倒だぞ」
「なんか蛇っぽい感じがするよなあ、ウン」
「意外とオカマと気が合うんじゃないか」
鬼鮫以外、他の三人はあっさりしたもので何事も無かったかのように部屋に向かって歩を進める。
「あの、いいんですか?イルカさん」
「まー、ほんとに具合悪そうだったし、今日のとこは保健のせんせに任せとけば良いんじゃないか?ウン」
「そっ・・・・それもそうですね」
あっさりと、鬼鮫も三人の後を追いかけ始める。
イルカに降りかかる災難は去る事なく、それは更に一回りも二回りも大きくなっていくのであった!!