いと つみぶかし 2
初めて訪れたイルカの部屋は古いながらも間取りも充分広く、掃除も行き届いていた。
寝室のベッドに寝かしつけられ、口布、額当て、ベストやアンダーウエア、下着まで無遠慮に剥ぎ取られると、今度は蒸しタオルで丁寧に全身を拭かれた。
ここにきて本気で世話をしてくれるつもりなのだと、カカシもようやく分かった。
「足首、腫れていますね」
イルカの指先が軽く触れるだけでも無意識に右足は揺れた。結構な痛みだ。
イルカは患部をすっぽり覆うように広範囲に湿布を貼り、ゆっくりとその上に包帯を巻く。
「外傷はここだけですね」
カカシの全身を一通りチェックするとイルカは浴衣を手にしたが、先ほどのカカシの右足を思い出したのか無理に着せようとせずカカシの身体の上にふわりと被せた。
「雨に濡れたし風呂に入って身体を温めるのが一番なんですが、風呂に入るのも体力を削られますから。とりあえず今は暖かくして寝てください」
カカシの上に掛け布団を被せるとイルカは部屋を出て行ってしまった。
一心地つくとぶるりと背中から悪寒が這い上がってきた。たかが雨と思っていたが、あのまま動けずにいたら肺炎にでもなっていたかもしれない。
あの中忍が何を考えているのかさっぱりわからないが、とにかく今は休養を取る事が先決だ。
カカシは襲われる睡魔に身を任せた。
頭は物凄く熱いのに手足は凍えるほどに冷たい。呼吸は浅く短く、熱く湿った息を吐き出すたびに更に体温が上昇していくようだ。
暑いけど、寒い。
「・・・さむい・・」
「大丈夫ですよ・・・」
カカシの凍るように冷たい手足に温かな熱が押し当てられる。
(な・・に・・・?)
明かりを落とされた部屋の中で熱に浮かされながらカカシがうっすらと目を開けると、自分の裸の胸の上に無骨な男の腕が回されているのが見えた。
僅かに身動ぎして目線を自分の身体に下ろすと、布団の中であの中忍が自らも裸になりぴったりと肌を合わせている。熱が逃げていくカカシの手足にイルカは自分の手足をしっかりと絡ませている。
現実とは思えない。今の自分の現状にカカシの思考は停止する。
(・・変な夢だな・・・・)
・・・そうか。これは夢か。
夢の中だからだろう。
日に焼けた浅黒い肌をした裸の男に抱きしめられながらも不快感はない。
(・・・・あったかい・・)
もう一度眠ろう。そうすればこの夢も覚める。
本当に、なんて性質の悪い夢だ・・・・。
翌朝、カカシの夢は覚めなかった。
眩しい朝日がカーテンの隙間から差し込む中、布団にすっぽりと包まれてカカシは相変わらず全裸のまま、同じく全裸のイルカの胸の中に抱きこまれている。
寝汗がひどく、お互いの身体は汗でベタリと密着している。
まるでセックスした後のようだ。
冗談じゃない。男を抱くならもっと見目のいい猫を探す。それよりも抱くなら女が良いに決まってる。
(この人、いったい何なのよ・・・・)
チャクラの回復にはまだ時間がかかり、未だに身体の自由は利かない。
「イルカ先生・・・起きてよ」
「・・ん・・ああ。おはようございます・・」
カカシのかすれた声にイルカは覚醒を促された。
それでもしばらくぼんやりとイルカはカカシを抱きしめたままでいたが、おもむろにイルカはカカシに覆い被さるようにしてカカシを真上から覗き込む。
カカシはビクリと身構えた。男に抱かれる趣味はないと心内で叫ぶカカシを無視してイルカの顔はどんどんカカシに近付いていく。
コツンとイルカの額がカカシの額に合わされた。
「良かった。熱は下がりましたね・・・」
「・・・・」
「ああ、凄い寝汗ですね。シャワーで流しましょう。その前にトイレに行きますか?」
「・・・トイレに行く」
人肌で暖めたという訳なのか。雪山で遭難したわけでもあるまいし。
物凄く拍子抜けしたカカシはもうイルカのペースに飲まれたまま抜け出す事が出来なかった。
トイレの個室まで肩を担がれてカカシはイルカに運ばれる。下の世話は断固拒否してイルカをトイレの外に追い出す。追い出されたイルカは全裸のままパタパタと立ち働いているらしい。独楽鼠のように動き回るイルカの気配を感じながら用を足し、便座に座り込んでいたカカシはしばらくして今度はイルカにより風呂場へ連行される。
いい年した男二人が朝っぱらから全裸で室内をうろうろしているなんて、なんて間抜けなんだろう。
カカシの心情を全く汲むことなく、イルカはカカシを風呂椅子に腰掛けさせる。
へっ、と投げ遣りに荒んだ表情で口の端に笑みを浮かべるカカシにはイルカは目もくれず、黙々と泡立てたスポンジでカカシの身体を擦る。
イルカの手はカカシの股間まで来て動きが止まった。
カカシは、さあ、どうすんだよ、とむしろイルカの眼前にさらけ出すようにして見せた。
しかしイルカの行動はカカシの思いもよらないものだった。
「ここは、スポンジでは痛いですね」
言うなりイルカはカカシの性器にするりと両手を伸ばした。だらりと力なく下を向くカカシのペニスを泡にまみれた掌で包み、皺を伸ばすように手全体を根元から先端へ何度も動かす。もう片方の手は竿の裏の陰嚢にまで伸び柔らかい双球を揉みしだくようにする。
「ちょ!ちょっと・・!イルカせんせっ・・・!」
「我慢してください。気持ち悪いでしょうけど、ここも綺麗にしないと・・・・」
「・・・っ・・く!」
任務明けでしばらく解放していないカカシの性器は、直接の刺激にあっという間に形を成してしまう。
「・・・あ・・」
カカシは自分の顔が火照るのを感じた。
なんだってこんなもっさりした男に勃起させられなきゃならないんだ!!
内心憤るカカシにイルカは更に驚くべき事を云う。
「カカシ先生、溜まってたんですね。ちょうど風呂場だし、このまま出しちゃってください」
「はあ!?」
イルカはにっこりとカカシを見上げる。
すでに真上を向きそそり立っているカカシのペニスに改めてイルカは手を添えると、リズミカルに上下に扱き始める。
「ま、待って・・・うぁ!」
ちょうど風呂場だとか、出したらすぐに洗い流せて便利とか、そういうことじゃないだろう。云いたい事は山ほどあれど、久しぶりの快楽にカカシは抗う事が出来ない。
カカシの腰を抱えるようにしてイルカは片手を後ろに伸ばすと、尻の谷間に指を這わせ、あろう事か後口の入り口をぬるぬると撫ではじめる。
ぞわりとカカシの背中には鳥肌が立つ。
「や、やめ!イルカ先生!!」
「後ろは中までは洗いませんから。洗いすぎると痛くなるので。カカシ先生、こっちに集中して・・・」
強めに扱かれてカカシの上半身は前のめりになる。自然とイルカの頭を抱える格好になる。
グチュグチュと響く音は石鹸の泡の所為だけではない。カカシの先端からはとうとう先走りの蜜が溢れ出て竿を覆う石鹸の泡を洗い流してしまいそうだ。
質量を更に増しイルカの手の中でカカシの昂ぶりはビクビクと脈打つ。
「・・っ・・は、あっ!」
「そろそろ、イキますか?」
「・・・うあっ・・!!」
イルカが爪で軽く亀頭を引っかいた瞬間カカシは弾けた。
カカシが放った精は勢い良くイルカの上半身に飛び散る。痙攣するように跳ねるカカシの性器を最後の一滴まで搾り出すようにイルカは下から上にゆっくりと扱きたてた。
「あ・・・はぁ・・」
「たくさん出ましたね」
性的な匂いを全くさせずにイルカはにこりと微笑む。
僅かに回復した体力もこれでふりだしに戻ってしまったのではないか。
力をなくしたカカシを支えながらイルカは手際よく洗い残した部分を清めていく。髪の毛まできっちりシャンプーされてカカシはイルカにされるがままだ。
自分のあられもない姿を見てイルカ自身には変化はないのかと、こっそりイルカの股間を盗み見るとイルカの黒い茂みの中の物はひっそりと項垂れたままで、カカシは妙な敗北感を味わった。
「さあ、綺麗になりましたね」
カカシの世話をしながらも器用に自分の身体も洗ったイルカにまたも担がれて脱衣所に運ばれる。今度は下着も身に着け浴衣を着せられると、清潔なシーツに取り替えられたベッドにカカシは再び寝かしつけられる。
「腹、減りましたよね。何か用意しますね」
「ちょっと待ってってば!!」
全てにおいてイルカのペースにより事が運ぶこの流れを何とか変えたい。
声を荒げるカカシをイルカは不思議そうに見る。
「あんたさ、何が目的なわけ?普通親しくもない赤の他人にここまでする?」
「同朋が困っているのなら同じ里の者として助けるのは当然でしょう?」
何を云うのかと、きょとんとしてイルカはカカシを見つめ続ける。
「はっ、その人助けには性欲処理も含まれてるわけ?」
「あなたが望むのなら」
イルカはふわりと柔らかく笑う。
刺を含んだカカシの言葉を笑顔とともに自然に受け止めるイルカを前に、もうカカシは何も言えなくなってしまった。
カカシの身支度だけを済ませイルカは腰にタオルを巻いたきりで、いつもきつく結わえている黒髪もさらりと肩の上に流している。
こうした姿を見ると、忍服に身を包んだイルカとはまた雰囲気が変わる。先ほどの風呂場での手馴れた手淫を思い出すと、任務で強要される性欲処理を過去に何度か経験しているのかもしれない。
取り留めなく思考が彷徨い出したカカシにイルカは穏やかに問う。
「何か食べたい物はありますか?」
「・・・・味噌汁飲みたい。茄子入れて」
「わかりました」
口論する気も失せてカカシは無言で寝室を後にするイルカの背中を見ていた。
ニコニコと人のいい笑みを浮かべているがイルカの考えは全く読めない。
(変な人・・・・)
台所からは味噌汁のいい匂いが漂ってきた。
どうせ体が動くようになるまでだ。
カカシはようやく今の現状を受け入れることにした。