いと つみぶかし 6
「こんばんは」
「・・どうされたんですか、こんな所で」
わかっているだろうにイルカはカカシに訊ねる。
ゆらりと目の前に現れたカカシに別段驚いた様子も無い。
「イルカ先生を待ってたんですよ」
イルカのアパートへと続く一本道。
カカシは道の端でずっとイルカが来るのを待っていた。
「飯、食いに行きません・・・・?」
「あの、俺・・」
カカシには断る理由がわかっている。
「あのネコは手が掛かって、さぞやあなたを必要としてるんだろうね。」
「何で、知って・・・」
「始終誰かに必要とされないと、不安?」
いつもの笑みがイルカから消えた。
「何かの手助けをしているうちは自分の存在意義を確立できる?」
「何を、言ってるんですか?」
一度消えた笑みを再び戻そうとイルカは口角を上に持ち上げる。
そんなイルカを無表情に眺めていたカカシはイルカの手を取り思い切り手前に引いた。
小さく声をあげてイルカはカカシの胸の中に飛び込む形になる。
「俺はね・・・身体が回復した後だって、あなたが必要なんですよ」
空いた片手でイルカの腰を抱きこむと、形を変え始めた昂ぶりをカカシはイルカに押し付けた。
「あ・・」
イルカの顔が強張る。
日も暮れたとはいえ、ここは人通りもまばらながらにまだある。
「カカシ先生!」
イルカは懸命にカカシの胸を押し返すがイルカを抱きこんだカカシの腕はびくともしない。
「ねえ、あんたの助けが必要なんだけど?俺の処理してよ。得意でしょ。今すぐここでする?」
「何、言ってっ・・・!!」
「上忍命令でもいいよ。今すぐ、俺の咥えてよ」
耳に吹き込むように囁くとカカシはイルカの耳朶を舐めあげた。カカシはイルカの羞恥心を煽るように耳朶を口に含んだまま更に腰の昂ぶりをイルカの股間に擦り付ける。
イルカはカカシの腕の中で息を詰めて俯いていたが、しばらくして観念したように呟いた。
「・・俺の、部屋で・・お願いです・・・・」
イルカの言葉を聞くなりカカシはイルカの腕を掴んだまま、足早にイルカのアパートへと向かった。
部屋へ上がりカカシは勝手知ったる寝室へイルカを引きずり込む。
「ちょっと、待ってください!ネコに先にエサ・・・!」
「まだ皿にエサ、残ってるじゃない」
カカシは無邪気に後をついて来る子猫を一睨みして寝室から締め出す。
「あんたも服、脱いで」
寝室を締め切ると躊躇せずにカカシは忍服を脱ぎ捨てていく。
以前と同じような手や口を使っての奉仕を考えていたイルカはカカシの態度に戸惑いを隠せない。
「何で・・・処理、なら・・・」
「処理なんかじゃない。そんな理由、あんたにあげないよ」
カカシはイルカをベッドに突き飛ばした。スプリングが派手な音を立てて軋む。
「うぁっ・・・!」
咄嗟に飛び起きようとするイルカの胸をカカシは膝で押さえつける。
「これは、処理じゃない。命令でもない。俺は、俺の意思であんたをこれから抱く」
イルカの両腕を頭上で一纏めに押さえるとカカシはイルカの上にゆっくりと覆い被さる。
片手で押さえ込むカカシの力をイルカは跳ね返す事が出来ない。
「嫌なら、死ぬ気で抵抗して。でも途中で止めたりしない。俺はあんたじゃなきゃダメなんだ・・・」
「カカシ、先生・・・」
苦しげに眉根を寄せ、カカシは静かにイルカに顔を近づける。近付いてくる赤と蒼の双眸とそれを縁取るけぶるような淡い色の睫をイルカは目を見開いて見つめていた。
今までの荒々しい行為に反してカカシの口付けは柔らかかった。
「・・・・んっ・・」
まるで誘うような甘い声が漏れてしまいイルカの顔は一気に火照る。
イルカの口内へ侵入したカカシの舌は逃げるイルカの舌を難無く絡めとり逆にカカシの口内へと引き込んだ。イルカの舌はカカシの口内で散々しゃぶられ、甘噛みされる。
キスをしているだけなのに卑猥な音が鳴り響き、まるで性器を愛撫するかのようなカカシの舌の動きにイルカは抗おうにも身体の力がどんどん抜けてしまう。
「あっ・・はあっ」
ようやくカカシの唇が離れた時にはイルカの口元からは飲み込みきれなかった唾液が首筋にまで伝い流れていた。
「イルカ先生。もう一つ、聞いていい?」
言いながらカカシはイルカの口の端から喉もとへ流れる唾液を舐めあげる。
「どうしてあの晩、俺に抱かれたの?」
頭上に纏められた腕を掴むカカシの手はびくともしない。カカシは耳朶を軽く噛み耳全体へ愛撫を加えながら素早くイルカのベストのジッパーを下ろしアンダーへ手を潜り込ませてくる。
カカシの指先がまだ柔らかな胸の飾りを捕らえる。指の腹を擦り合わせるようにして突起を揉むと、それはすぐさま反応を示し硬く尖り始める。
「あっ・・く・・」
「あんたは弱者と自分との関係の中でしか自分の価値を量れない」
アンダーをたくし上げて胸元の二つの飾りをカカシは露出させる。一つは指の刺激で鮮やかな赤に染まっている。まだ柔らかく薄紅色のもう片方の突起をカカシは口に含むと器用な舌先で強く嬲る。イルカは堪らずに身体をくねらせた。
「んあっ・・ああ・・・」
カカシはピタリと愛撫の手を止めた。
「いつも助けを求められていないと怖くて仕方がないんだよね?」
顔を起こし、カカシは無言で真っ黒なイルカの目をじっと覗き込む。
「じゃないと、自分が要らない人間なんじゃないかって、不安なんでしょ」
「ち・・違・・・」
イルカの濡れたような黒い瞳はカカシの瞳を受け止めきれずに伏せられた。
「俺は身体の自由が利かない間、あんたに依存していたけど、あんたも弱ってる俺に依存してたんだよ・・・」
カカシはイルカの耳元で囁きながら空いた手を下肢へ伸ばす。ズボンの上から膨らみを撫でれば、そこはもう布を押し上げてしっかりと立ち上がっている。
イルカがカカシの手から逃れようと身を捩れば、それが返って擦られるような刺激を生み出してしまう。
「でも、それなら。あの夜抱かれたのはどうして?」
依存しあう事が望めなくなった自分を切り捨てずに、黙って抱かれたのはどうして。
ズボンの前を寛げてカカシはイルカの下着の中に手を差し込む。指先には張り詰めた先端がぬるりと触れた。
「んああっ!!」
指先で先端を揉むように刺激するとイルカの性器はとろりと溶け出した。
更に深く手を下着の中に潜り込ませて溢れ続ける雫を塗り込めるようにイルカの雄を上下に扱き始める。
「ああ!あっ・・!!」
カカシの下で組み敷かれたイルカの身体が波打つ。
「あの夜、俺の事が欲しいって、少しでも思わなかった?」
カカシに低く囁かれたと同時にイルカはカカシの手の中に勢い良く射精した。
「ああ・・・」
ぐったりと弛緩したイルカの身体からカカシは邪魔なベストとアンダー、脚絆を剥ぎ取った。
「ごめん、痕付いちゃった・・・」
イルカの手首にカカシの指の形で赤く鬱血して痕がついた。カカシはイルカの手を取ると鬱血した場所に舌を這わせる。熱く焼けるような舌の感触にイルカは断続的に身体を震わす。
「ねえ、俺に助けて欲しい?」
助けを求めていたのは、弱って倒れていた自分じゃなくてイルカの方だ。
カカシは脱ぎ捨てたベストから軟膏を取り出すと、指に乗せイルカの蕾にぬるりと塗り広げた。
「う・・あっ」
「あんたから、俺を求めてよ」
独りにしないでと、声にならない悲鳴を上げて助けを求めているくせに。
指を一本から二本へ増やし、締め付けてくる粘膜を押し返すようにカカシは出し入れを繰り返す。
イルカの後口からはぐちぐちと粘ついた音が立ち始め、イルカは堪らずに両腕を交差させ顔を隠す。
「怖がらないで。俺を欲しがって。何があってもイルカの傍にいるから・・・・」
入り口への指の抽挿を更に激しくしながら空いた手でカカシはイルカの腕をゆっくりと顔から外す。
息を荒くつき胸を上下させながらカカシを見上げるイルカの顔は赤く上気し、吸い込まれてしまいそうな黒い瞳はゆらゆらと熱に揺れている。
イルカのもう一つの顔。
「いいから、もう。そのまま俺に縋っちゃいなよ」
カカシは更にイルカの中を激しくかき混ぜながらイルカに荒々しく口付ける。ぴったりと唇を合わせてカカシはイルカの口内を思うさま貪る。口内の粘膜を舌先で強く嬲りイルカの柔らかい舌を思い切り吸い上げた。
「んうっ・・!!」
一際深みを指の腹で抉ればイルカは背を反らせて反応を返した。
「ん・・!む・・あ!んああっ!!」
同じ箇所を何度も強く擦りあげる。イルカのペニスは硬く張り詰めてとても辛そうだ。
その先端からは涙がとまることなく流れ出している。
「イルカ・・・俺を欲しがって・・・・」
絶対に拒んだりしない。傍に居て欲しいと、その一言だけでいい。
俺を求めて。欲しがって。
カカシは祈るように何度も同じ言葉を繰り返す。
イルカの後口はカカシの指をすでに三本呑み込んでいる。擦りあげられて赤く濡れた入り口が指の根元をきつく締め上げてくるのを見て、カカシは切なく息を吐く。
カカシの性器も痛い位に張りつめて濡れている。少しでも触られれば弾けてしまうかもしれない。
「イルカ・・・」
「も、う・・!く・・んんっ・・」
カカシが濡れた亀頭をイルカの内腿にゆっくりと擦りつけるとイルカは淫らがましく腰を揺らし始める。
「・・・カカシ、せんせぇっ・・!!」
イルカは頭を振り、黒髪を乱し、涙を滲ませて快感の波に耐える。
襞を探り、指の腹でイルカの雄の裏を押すように刺激すると、イルカの鈴口から白い蜜が更に勢い良く溢れ出してくる。
「カカシせんせ・・・おねが・・いっ・・・!」
息も絶え絶えに懇願されて、カカシの頭は真っ白になった。
指を引き抜くとカカシはイルカの後口に亀頭を宛がい根元まで一気に押し込んだ。
「ああああぁぁ!!」
イルカが弓なりに身体を反らせるとカカシを受け入れたイルカの腔道は酷くカカシの雄を締め付けた。入れただけで達しそうになり、カカシはイルカのしなった背中に両腕を回し快感を逃がそうとじっとイルカを抱きしめる。
「くっ・・・イルカ。きついよ、力、抜いて・・・・」
意識を散らそうとベタベタに濡れたイルカのペニスを片手で何度も上下に扱いた。イルカの雄はカカシの手の中でされるがままに踊り、その先端を何度もカカシの腹に擦りつけた。
「あう!あっ・・ああ!」
イルカの内腿はビクビクと筋肉のスジを浮き上がらせてカカシの腰を締め付けてくる。
「俺の名前、呼んで・・・」
カカシはイルカの両足を肩に担ぐと更にイルカに腰を押し付けて結合を深くする。角度が変わりカカシの性器の先端が残酷なまでにイルカの前立腺を抉る。
「ううっ―――!」
イルカは顔を真っ赤にして眉間に皺を寄せる。身体を二つに折られ、大きく広げられた足の間をカカシに容赦なく突き上げられる。
「イルカッ・・・」
快感の波に完全に呑みこまれようとした刹那、イルカの目には今にも泣き出しそうなカカシの顔が映った。
「カカシ、せんせ・・・」
頬に触れようとしたのか。
でも、身体を無理に折り曲げられた体勢ではそれは叶わなかった。
イルカの手は一房、かろうじてカカシの銀髪を軽く握り、またすぐに離れる。
初めてイルカが自分を見てくれた。
自分の事を見つめ、名前を呼んでくれた。
イルカの奥深くに埋め込まれたカカシの雄がドクンと大きさを増した。
「くっ!っ・・!!」
「ああっ!んあああぁっ・・・!!!」
カカシはイルカの中へ昂ぶりを何度も痙攣させながら吐精した。
直腸内に熱い飛沫を受けイルカも共に弾ける。
イルカが吹き上げた精液はカカシの胸を白く染めていく。
絶頂の余韻の中で、焦点の合わない目でぼんやりと見上げてくるイルカにカカシは囁いた。
「傍に・・いるから・・・」
イルカは安堵したように微かに笑った。